一般・学生向け

低温研で活躍する学生

顔写真

伊原 希望

環オホーツク観測研究センター/環境科学院 環境起学専攻 D3

写真:沿岸集落調査のために石狩湾を望んだ様子。石狩市厚田濃昼山道にて (2026年6月)。

低温研を知ったきっかけは?

学部は日本大学海洋生物資源科学科(現・海洋生物学科)で、深海や極域海洋といったフロンティアに興味をもっていました。特に、海を回遊する生物に関心があり、その生態を支える極域はあこがれのフィールドでした。 転機は、学部3年生で受講した北極域研究共同推進拠点主催の「北極科学概論」です。自然科学だけでなく、文化や法律といった社会的な側面も含めて北極を捉える低温研研究者の姿勢に惹かれ、低温研での研究に関心を持つようになりました。

低温研で今どのような研究をしていますか?

環オホーツク観測研究センターに所属し、北海道オホーツク海沿岸における自然環境と地域社会の相互作用を「社会生態システム」の視点から研究しています。沿岸生態学を基礎に、社会的要素も含めて沿岸地域を理解することが目的です。

研究はフィールドワークが中心で、現地調査や聞き取りで得たデータをGISで統合・分析しています。時には漁師さんの操業に同乗し、データを収集することもあります。修士論文では、知床オホーツク海側における漁業建築物「番屋」が環境や社会の変化の中でどのように変遷してきたのかを研究しました。低温研では珍しく定性的なデータを扱っていますが、専門分野の異なる同期と議論しながら研究できる環境に恵まれています。

大学院進学を決めた理由は何ですか?

学部時代は、新型コロナウイルスの影響で思うように大学やフィールドへ行けない時期が続きました。そんな中、学部3年生で先輩のフィールドワーク(北海道標津町)に同行したことや、JAMSTECの2週間の研究航海に参加した経験を通して、現場に身を置き、観察し、データを集めながら研究する面白さを実感しました。もっとさまざまな場所で調査を行い、自分自身の研究を深めたいという思いが強くなり、大学院への進学を決意しました。

なぜ今の研究をやろうと思ったのですか?

学部ではサケ(シロザケ)の行動生態学に関する研究をし、オホーツクの海洋資源と人との関わりに関心を持ちました。その後、低温研で研究を進める中で、オホーツク海をめぐる環境や海氷についての研究に日常的に触れる機会があり、これらが沿岸地域にどのような影響を及ぼしているのかに興味を持つようになりました。

一方で、定量的なデータだけでは、海とともに暮らす人々の営みを十分に捉えきれないとも感じていました。そこで、自然環境と地域社会を一体として捉えたいと考え、現在の研究に取り組んでいます。現場で調査を重ねる中で、既存のフレームワークを適用するだけでなく、現場で得られた知見を反映しながら、解析の枠組み自体を組み立てる必要性を感じています。

研究のおもしろい点はどこですか?

よく感じるのは、自分が興味を持っていた点と点が、調査や文献、地域との出会いを通してつながっていくことです。バラバラだった興味が1つのストーリーとして結びつく感覚があり、「興味の伏線回収」のような面白さがあります。また、学会などで自分の研究が学術界の流れと結びつくことで、個人の興味だったものが多くの研究者と共有できるテーマへ広がります。そこから新しいアイデアや出会いが生まれ、人とのつながりが広がっていくことも、研究の魅力だと感じています。

休日はどのように過ごされていますか?

沿岸地域の漁港を探訪したり、郷土資料館、廃道など、地域の歴史が感じられる場所を巡るのが好きです。北海道は、今のまちや産業ができるまでの過程を景観から読み取れる場所が多く、札幌は海も山も近いので、家を1歩出たらフィールドワークになるような感覚があります。また、地域ごとに環境や文化が全然違うので、地元の人と話すとその土地の暮らしや魅力を感じられ、とても満たされます。あまりお金もかからないし笑、いいリフレッシュになっています。

これから大学院進学を志す後輩へのアドバイスは?

博士課程は前期も後期も本当にあっという間で、研究だけでなく進路や研究費の管理なども自分で考え、動く必要があります。進学後や将来のことを考えると不安になる気持ちはよく分かります。私もうまくいかないことばかりです(笑)。それでも、泥臭く失敗を重ねながら続けていると、不思議と応援してくれる人や声をかけてくれるが増えていきます。低温研や北大には、そういう人が多いと感じています。研究が少しでも楽しいと思えるなら、大学院進学はきっと後悔しないと思います。

観測

写真:定置網漁業者の操業に同乗させていただき、ドローン撮影を行う様子。知床半島先端海域(斜里町)にて (2025年10月)。

(2026.9)

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