一般・学生向け

低温研で活躍する学生

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小松 瑞紀

海洋・海氷動態分野/環境科学院 地球圏科学専攻 D2

写真:2023年6月にドイツで行われた国際雪氷シンポジウム (IGS) にて。南大洋における海氷融解に大きな興味を抱くきっかけとなった論文の著者である Alexander Haumann 博士と。

低温研を知ったきっかけは?

大学院受験を考えた学部4年ごろだったと思います。学部時代は函館の水産学部で北部ベーリング海の海氷の変動について研究していました。大学院では、より極域・海氷について学びたいと考えて環境科学院を受験しましたが、そこで極域の海洋や海氷、氷床などに焦点をあてて研究している場所があると知り、興味を惹かれました。

低温研で今どのような研究をしていますか?

私は、現場観測データを使用して南大洋の海氷融解量を見積る、ことをテーマに研究を進めています。海氷生成量の推定については、衛星データを使用した推定が進んでいますが、融解については不均一に生じるため、まだモデルや衛星データからでは見積りが困難でした。しかし近年、船舶観測に加え Argo プロファイリングフロートやアザラシに測器をつけて観測するバイオロギングデータ等が集まってきたことにより、海氷融解直後の春季の現場観測データから融解量の気候値や空間分布を見積ることができました。
今後は、南大洋全体ではなく範囲を狭めて海氷融解の詳細な変動の研究や、衛星データとも組み合わせて、海氷融解の経年変動とそれが海洋にどのような影響をもたらしているのか、について研究を行う予定です。

大学院進学を決めた理由は何ですか?

学部4年の時に初めて勉強ではなく「研究」というまったく新しい経験をしました。そこで答えや正解がなく自分で考えてどう進めていくのか、どこを見れば面白そうなのか、全てが驚きの連続でした。解析が思うように進まず、プログラミングで苦労して嫌だと思うことも多々ありました。しかし一方で、世界にはまだまだ知らないことが山ほどあって、その不思議をほんの少しでも自分の研究で明らかにすることができるかもしれない、というところに魅力を感じて進学を決意しました。

なぜ今の研究をやろうと思ったのですか?

もともとは北半球での海氷融解を研究していました。大学院でさまざまな講義を受けるうちに、世界で最も重い水を生成しており、海洋循環の肝となる「南大洋(南極海)」に興味を持ちました。決定的だったことは、論文を読むなかで、南大洋の海氷が北方(赤道方向)へ輸送されてそこで融解することで、成層構造を強めて、大気からの二酸化炭素吸収に変動をもたらす可能性がある、さらには気候変動にも影響を及ぼすかもしれないことが示唆されており、そんな大きな影響につながるのか、と驚き南大洋における海氷融解を研究テーマに決めました。現場観測データを使用した融解量推定はほとんどなされていない研究で、本当に推定することができるのか不安はありましたが、やってみないと始まらないし、挑戦のしがいがあると思い、始めました。

研究のおもしろい点はどこですか?

飽きない点です。毎日、これもやらなきゃ、こっちも新たな手法で確かめてみなきゃ、などとやることがたくさんあります。単調で面倒なこともたくさんありますが、それらをひとつずつ積み重ねていくことで、それが集まって結果に結びつくことが達成感を感じます。もちろん全てがいい結果につながるとは限りませんが、それでも別の観点から考えたり、試行錯誤することは無駄ではないし面白いと思います。

休日はどのように過ごされていますか?

基本的に家の中にいることがほとんどで、あまり外出はしません。本や雑誌、マンガを読んだりサブスクリプションで映画を見て過ごしています。そのときには、必ず美味しい飲み物とおやつを用意しておともにします。食べることが一番好きなので、日々美味しそうなお店をリサーチしてノートにメモして、近くに行く用事があればテイクアウトします。また、旅行も好きなので、行きたい国や見たい景色、食べたいご当地グルメについて調べています。

これから大学院進学を志す後輩へのアドバイスは?

多様な研究テーマがあるなかで、講義を受けたり論文を読んだりしながら、自分の興味を惹かれた研究を始めると良いと思います。何か困難に当たった際も、「これを解明したい」という初心に立ち返ることで前進するモチベーションにもなります。また、指導教官の先生や周りの方々とよくコミュニケーションを取ることも重要です。もちろん1人で考えて悩むことは必要ですが、誰かに頼る方が良いこともあるので、どんどん話すと良いと思います。思わぬ着眼点やアドバイスをいただくことができます。

研究室での様子

研究室での様子。あまりフィールドに出たことがないので、南大洋の航海に乗船してみたいです。

(2023.9)

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