一般・学生向け

低温研で活躍する学生

顔写真

石橋 篤季

宇宙物質科学・宇宙雪氷学分野/理学院 宇宙理学専攻 D3

写真:実験装置は3DCADソフトを使用して自分で設計します。実験機器をコンピューターで制御するためのソフトウェアの開発も行います。

低温研を知ったきっかけは?

私は、学部4年生時には私立大学で物理化学系の研究室に所属しており、真空低温表面に関する研究をしていました。大学院に進学するか、また進学するならばどこに行くかと悩んでいた中、当時の指導教員から、『学会で、宇宙をモチベーションに真空低温表面の技術を応用して、面白いことをやっている研究者と出会った』と情報をいただいたのが、低温研を知った最初のきっかけでした。その後、興味を持ち自分でもいろいろ調べていくうちに、現所属研究室に辿り着きました。

低温研で今どのような研究をしていますか?

宇宙空間には、暗黒星雲と呼ばれる、星ができる以前の非常に冷たい領域(−263℃)があり、そこでどのようなプロセスを経て原子や単純な分子から、有機物などの複雑な分子ができるのかを研究しています。具体的には、実験室に擬似的な暗黒星雲環境を再現できる装置を構築し、物理化学的な実験手法を用いてこれを明らかにしていきます。ただし、これまで使われていた装置では検出感度などの問題から、調べられることに限界がありました。それゆえ、私の研究はこれまでにない高感度検出が可能な装置を、1から開発するところから始まりました。約2年の時間を費やし、世界的にも有数の高感度を誇る装置を完成させ、現在はその装置でしか調べることができない未開拓領域の研究を進めています。

どのように今の研究室を選んだのですか?

物理化学的実験手法を用いて宇宙について明らかにするという、異分野融合的な研究内容に興味を持ったことが一番大きな要因です。また、一般的な研究室であれば何人かで一台使うような実験装置を一人で使うことができる環境であったので、自由に好きなだけ実験ができるという点も魅力的でした。特に、様々な分野のスタッフが所属しているので、いろいろ経験ができ、また様々な視点から研究について考えることができそうな環境だと感じた点も大きかったです。

なぜ今の研究をやろうと思ったのですか?

現在行っている研究は装置開発から始まりました。誰かがやっていた研究をそのまま引き継ぐのではなく、誰もやったことがないことを立ち上げることに面白みを感じたため、今の研究を開始しました。また、ものづくりや機械いじりが昔から好きだったので、装置開発から始められるのは非常に魅力的に感じたという理由もあります。加えて、装置を1から立ち上げるというのは、今後、実験の研究者として生きていく上では必要不可欠な能力であると考えていたため、装置のプロフェッショナルが多くいる現環境で開発について学んでおきたかったという側面もありました。

研究のおもしろい点はどこですか?

誰も知らないことを自分の手で調べられることが最もおもしろい点です。ああでもない、こうでもないと様々な実験事実から辻褄を合わせていき、より確からしいと思える結論まで進んでいくプロセスに魅力が詰まっています。また、研究の一つ一つの工程自体は人知れず細々とやっていることであっても、その成果を論文として報告すれば、自分が行った仕事を自分の名前で世界中に発信し、半永久的に残すことができるという面白みもあります。

学部までの研究室と違いはありますか?どんなところが違いますか?

低温研は附置研究所なので、通常の研究室に比べて学生の数が少なく、スタッフの数が多いというところが大きな違いです。それゆえ、圧倒的に研究に集中できる環境であることに加え、スタッフによるサポートが手厚いです。また、スタッフがそれぞれ多様なバックグラウンドを持っているので、研究について様々な見解が得られるほか、新たな方向性や可能性を見出すチャンスが多いように感じます。

これから大学院進学を志す後輩へのアドバイスは?

大学院での研究環境は、その後の研究力の下地を形成するのに重要なポイントであると思うので、様々な経験ができる環境に行くことをおすすめします。ただし、その経験は自分自身がやりたい方向性なのか、楽しんで没頭できる内容であるかという部分は、研究を続けていく上で非常に重要だと思います。なので、自分は何をするのが好きで、何を優先事項とするのか、今後どうなっていきたいのかをよく考えながら大学院を選ぶと良いのではないかと思います。

分析装置

超高感度表面吸着分子分析装置。10K (約−263℃) の固体表面に吸着している微量な分子の組成を高感度で分析することができます。この装置内で化学反応を起こして、生成された微量分子の分析を行います。

(2022.9)

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