一般・学生向け
低温研で活躍する学生
波多 俊太郎
氷河・氷床分野/環境科学院 地球圏科学専攻 D3
写真:2019年に参加したパタゴニア・テンパノ氷河観測でのフィヨルド調査の際に撮影した1枚。現地の研究協力者と撮ったものです。
低温研を知ったきっかけは?
あまり記憶が定かではありませんが、地球環境問題に関心が出始めた高校生の頃、なにかの資料で低温研が紹介されていたことがはじめだと思います。「変わったことをやっているところがあるんだな」と思ったような気がします。はっきりと認識したのは北大の学部生時代に受講した「南極学入門」という講義です。低温研教員の方々によるオムニバス講義で、普段の講義とは違う雰囲気の講義でした。講義の中で入ったマイナス50℃の低温室で、こんな温度の中仕事をしている人がいることに驚き、さらに興味が湧いたものです。
低温研で今どのような研究をしていますか?
湖に流れ込む氷河と氷河湖に注目して、最近数十年規模の氷河変動を研究しています。特に、大規模な氷河湖の多い南米のパタゴニア地方の氷河と氷河湖を対象としています。私の研究対象地はパタゴニアの中でも行くことが難しい場所にあるので、人工衛星のデータを活用しています。21世紀に入って豊富に蓄積された人工衛星データを解析することで、氷河の面積・体積の変化、流動速度、湖の水位などを測定しています。光学/レーダー衛星画像、数値標高モデル、レーザー高度計のデータを用いることが多いです。
どのように今の研究室を選んだのですか?
学部4年で配属された研究室では、人工衛星データを使った氷河観測を行っていました。衛星データ解析からは氷河の流動速度の計測や表面状態の観察ができますが、幅数10km・空間分解能約10mの衛星画像を通して見る氷河はスケールが大きすぎました。実際に氷河を行って観察したい・氷河のある地域で研究したいと思い、今の研究室を選びました。学部時代の研究室の教員・先輩も今の研究室と交流があったので、見学や周りの話を聞きやすかったことは当時とても助かりました。
なぜ今の研究をやろうと思ったのですか?
気候変動を受けて地球上の氷河が減少していますが、現在の氷河縮小は気温の上昇による氷融解に加えて氷河の流動や海・湖の影響を受けるため複雑です。例えば、その中でも増えている氷河があります。学部生の頃に、他の氷河が縮小する中で氷が増えている氷河があるということを知り、そのメカニズムがわかったら面白そうだと思い、手を出し始めました。また、研究を進めるうちに氷河の近くにある氷河湖の変化にも気が付きました。氷河湖は山岳地域においては貴重な淡水資源であるとともに、決壊すると下流の社会に甚大な被害を与えるリスクがあります。自分の面白いと感じる氷河・氷河湖の研究を進めることで、これからの社会に有用な情報を提供できることが大きなモチベーションになっています。
研究のおもしろい点はどこですか?
人工衛星画像を眺めていると、自分で予想もしていないような変化を見つけることがあります。丁寧に調べてみて、自分の感じた違和感がデータで表現されたときはとても興奮します。まだ誰も見ていないであろうことを対象に自分のデータを積み上げて、何が起きていたのか考えられる点をとても面白いと感じています。
休日はどのように過ごされていますか?
休日は家の中にいるよりも、できるだけ出かけるようにしています。体を動かすことが好きなので、山歩き、ボルダリング、ランニングなどをしています。最近はスキーに行くことが増えました。また、写真撮影も好きなので、北大や山の中で動物の写真を撮ることも多いです。
札幌での暮らしはいかがですか?
札幌の気候や周囲の環境をかなり気に入っています。寝苦しいような暑い日は1年のうち1週間くらいなので、暑がりにはお勧めです。また、周りに豊かな自然があるのも良いです。冬はスキーにすぐ行けるので、夕方に研究室からスキー場へ直行ができることも気に入っています。
パタゴニア・テンパノ氷河でのGNSSおよびレーダーの測定中の様子(2019年)。手前が波多、奥に見えるのはチリのカウンターパート、マリウス・シェーファー博士。
(2022.9)