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過去の低温研セミナー

第52回低温研セミナー 「南米パタゴニアにおける氷河変動メカニズム」 箕輪 昌紘(氷河・氷床分野)

会期 2022年09月21日(水) 16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

南米パタゴニアの氷河群では,世界最大の速度で氷河が質量を失っているとされます.その原因を探るため,人工衛星画像解析や野外観測を組み合わせた氷河変動解析を実施しています.本セミナーでは,パタゴニアの氷河の質量損失を決定付ける氷河末端や表面での消耗メカニズムに関して最新の研究成果を紹介します.

第51回低温研セミナー 「微生物ゲノムとタンパク質機能の多様性」 渡邊 友浩(微生物生態学分野)

会期 2022年06月20日(月) 16:30-17:30
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

ほとんどの微生物は実験室で培養されていない。培養されていない微生物を研究する強力な手段がゲノム解析である。ゲノム配列からは、生物に本来備わっている機能を理解できるはずである。本セミナーでは、ゲノム配列が語りうることと語りえないことを生化学と構造生物学の研究成果に基づいて議論する。そして、ゲノム配列から未培養微生物の生態を研究する方策を検討する。

第50回低温研セミナー 「生物はどのように生きているか?同位体生理学からのアプローチでわかりそうなこと」 滝沢 侑子(同位体物質循環分野)

日時 2020年 2月14日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

私たちが暮らしている地球には,植物から動物に至るまで,数え切れないほどたくさんの多様な生物が生活しています。それぞれの環境に生息する生き物同士のつながりや,まとまり全体を称して「生態系システム」と言いますが,この生態系の構成要因である「生物」と「その生育環境」の間には,いつも決まって,とても重要な共通点が見つかります。それは,その生育環境の条件(たとえば,光や温度,水,栄養環境の違い)に「最も適応できている生き物」のみが生息している,という点です。そして生物は,その「最も適応しやすい環境」に身を置きながら,種としての末永い存続を手に入れるべく,しばしば見舞われる悪天候や飢餓などの大小様々な環境変化(ストレス)に対して,抗い,耐えながら,したたかに生きています。では,彼らのこの「したたかさ」を担保している要因とは,一体何なのでしょうか。私はこれを理解するための1つの要因として「エネルギーの貯蓄と効率的な利用」が影響しているのではないかと考えています。もう少し具体的にいうと,ある環境の中で,彼らが「どのようにエネルギーや基質を得て,どのような物質をつくり,蓄え,いつ,どのような時に,どのくらい消費して生きているのか?」を理解することによって,生物は環境中でどのように生きているのか,なぜここに存在できているのか?を知ることができると考えています。それを解き明かすために,私は,生物あるいは環境中に存在する「有機化合物とその安定同位体比」を用いて研究をおこなっています。今回の低温研セミナーでは,私が今までにおこなってきた研究内容の紹介と,現在開発中の新たな分析技術について簡単に紹介したいと思います。

第49回低温研セミナー 「凍る海・オホーツク海が支える北太平洋の生物生産」 西岡 純(環オホーツク観測研究センター)

日時 2020年 1月17日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

これまでに環オホーツク観測研究センターが実施してきた研究では、オホーツク海が凍ることが日本近海から北太平洋スケールの生物生産に大きな影響を与えていることが分かってきました。本発表では、「凍る海・オホーツク海が北太平洋の豊かさを生み出すことにどのように関わっているのか?」を明らかにするために挑んだここ十数年の研究についてご紹介したいと思います。本発表で取り扱う内容には主に3つのキーワードが出てきます。一つは「海の植物プランクトン」、二つ目は「鉄」、三つ目は「オホーツク海の海氷(流氷)」です。一見これらの3つのキーワードの間には何の関係性も見られないように思われるかもしれません。しかし、海洋の研究が進んできた現代では、これら3つのキーワードには密接な関係があることが分かってきました。発表では、これらのキーワードの自然界での繋がりを分かりやすくお伝えしたいと思います。

第48回低温研セミナー 「南極氷床を融かす海」 平野 大輔(海洋・海氷動態分野)

日時 2019年12月20日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

 南極氷床の質量は減少の一途を辿っており、将来的な全球の海水位上昇が懸念されている。この氷床質量変動プロセスにおいて「周囲の海」が中心的な役割を担っていると認識されているが、観測の困難さにより、南極大陸沿岸域での海洋観測データは乏しく、海洋の本質的な役割の理解には至っていない。そこで近年では、日本南極地域観測隊や水産庁の調査航海にて、東南極(南極大陸の東経領域)の白瀬氷河やトッテン氷河の周辺海域における集中的な海洋観測の実施に注力している。
 本セミナーでは、近年の集中観測の成果として、これらの地域における氷床(の末端)を底面から融かしうる「周囲の海」の状況についてお話しするとともに、今まさにトッテン氷河の近傍で行われている観測活動についても紹介したい。

第47回低温研セミナー 「星間塵の表面化学:その速度論と同位体効果」 羽馬 哲也(宇宙物質科学分野)

日時 2019年11月 1日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

星間空間にはH原子やH2分子などのガスに加え,「星間塵」と呼ばれる微粒子が存在する.これらが高密度に存在する領域のことを「星間分子雲」と呼び,恒星や惑星系の誕生の場となる.星間分子雲の温度はおよそ10Kと非常に低い.しかし観測研究から,星間塵の表面は水,アンモニア,メタノールなどで構成されたアモルファス氷で覆われていること明らかになっている.この「氷星間塵」こそが太陽系を含む惑星系の材料物質であり「極低温の星間分子雲で氷星間塵はどのようにして形成されるのか?」を知ることは,宇宙の物質進化と惑星系形成を理解するために重要である.セミナーでは,極低温の氷星間塵ならではの表面物理化学過程について概説する.とくに,水素の量子トンネル効果ですすむ表面反応の速度論的同位体効果について話す予定である.時間があれば,最近趣味的におこなっている「生体表面のその場赤外分光測定」についても話したい.

第46回低温研セミナー : 深町 康(北極域研究センター)

日時 2019年 3月29日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

第45回低温研セミナー 「巡視船そうやによる観測から見えてきたオホーツク海海氷の仕組み」 豊田 威信(大気海洋相互作用分野)

日時 2019年 1月18日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

オホーツク海の流氷は北海道の冬の風物詩として知られ、沿岸での観測の歴史は百二十年を超える。しかしながら、海氷の成長・融解に関わる実態が分かりだしたのは海上保安庁と低温研の共同観測が開始した1996年以降といって差し支えないであろう。爾来23年間、観測を継続しており表面熱収支や海氷サンプル、氷盤分布などの解析を通して少しずつ成長・融解の仕組みが解明されつつある。最近では生物地球化学的な海氷の役割にも着目しながら観測を実施している。本セミナーでは、モデル化へアプローチという観点から、数理的な側面に着目して成果の一端を紹介したい。

第44回低温研セミナー 「Report on nature of Etorofu - Volcanoes, bears, salmons and humans」 Dr. Alexei V. ABRAMOV (Principal Investigator, Laboratory of Mammalogy, Zoological Institute Russian Academy of Sciences) /「択捉の自然のレポート - 火山、クマ、サケ、そしてニンゲン」 アレクセイ アブラモフ 博士

日時 2018年12月20日(木)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

Etorofu Island is largest of Kurile Islands. It is located just in 130 km from Nemuro Peninsula. Etorofu - region which is difficult of access and sparsely populated territory. Modern population of Etorofu is less than 7000 people. Fishery and fish farming - one of main kind of business in Etorofu. Most of Island is covered by heavy-going mountains and shrub terrain. There are near 20 volcanoes on the Island, including 9 active ones. Biodiversity of Etorofu is not rich in contrast to adjacent Kunashir, Hokkaido and Sakhalin islands. Mammal fauna is very poor. It is consist only 12 terrestrial species, including brown bears, red foxes rats and voles. Volcanoes, bears and salmons - it is main Etorofu impression.

第43回低温研セミナー 「冬眠する哺乳類にヒトは何を学べるか?冬眠を可能とするからだの秘密の理解に向けて」 山口 良文(冬眠代謝生理発達分野)

日時 2018年 9月28日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

哺乳類の冬眠は、食料の枯渇に見舞われる季節を、代謝を抑制し低体温状態となることで乗り切る、冬越しのための適応戦略である。恒温動物である哺乳類の中には、ジリスやシマリス、クロクマ、ヒグマなどの冬眠する哺乳類と、ヒトを含めた冬眠しない哺乳類がいる。冬眠する哺乳類は、低体温耐性、寝たきり耐性、自律的な体重制御、など、医学的側面から見ても興味深い性質を多々備えている。しかし、冬眠の制御機構はいまだ多くの点が謎に包まれている。

本セミナーでは,哺乳類の冬眠に関する基礎的な背景から最新の研究まで、異分野の方にも出来るだけわかりやすく、私たちが現在進めている研究内容を交えながら紹介したい。

第42回低温研セミナー 「有機物の安定同位体比を使ったサイエンス:冬の時代からの脱却!」 力石 嘉人(同位体物質循環分野)

日時 2018年 7月27日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

有機物の安定同位体比を使ったサイエンスは,1960-70年代に始まり,反応プロセスを定量的に可視化するツールとして積極的に研究されるようになった。その後90年代に,自動化された分析装置が開発されてハイスループット分析が可能になると,「有機物の安定同位体比さえ測れば全てがわかる」とこぞって使われるようになった。 が,,, 多くのケースにおいて(無力とまでは言わないが)極めて非力であることが徐々に認識されるようになり,有機物の安定同位体比を用いたサイエンスは「冬の時代」を迎えてしまった。

しかし,2010年前後なると,単一の試料に含まれる異なる有機化合物間の同位体比の不均一性や,単一の有機化合物に含まれる異なる原子間の同位体比の不均一性をみることにより,「有機物の安定同位体比は,よくよく考えてうまく使えば,いろいろなことが非常にクリアーになる」と再認識されるようになった。本セミナーでは,この「雪解け後」の同位体比の使い方を中心に,我々の研究室の成果を踏まえながら紹介したい。

第41回低温研セミナー 「Chemical desorption:10ケルビンの氷星間塵表面からの新しい分子脱離メカニズム」 大場 康弘(宇宙物質科学分野)

日時 2018年 6月29日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂

宇宙における星・惑星系誕生の場である星間分子雲は,10ケルビンという極低温環境のため,通常,水素やヘリウムを除けば星間塵と呼ばれる微粒子上に吸着され,固体として存在するはずである。しかしこれまでの電波天文観測では,150種を超える分子がガスとして検出されている。一般的に星間塵表面に存在する分子がガスとして放出されるためには,ある程度の温度や紫外線量が必要であるが,ともに極低温の星間分子雲では期待できない。そこで我々は,Chemical desorptionと呼ばれる塵表面での化学反応にともなう反応熱を利用した分子脱離メカニズムについて実験的に検証したので,本セミナーではその研究成果を紹介させていただきたい。

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