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低温研ニュース

2007年6月 No.23

レーダー

雲科学分野では、「季節内変動」に伴ってやって来る、巨大雲群の発達過程と構造を調べるために、モルディブとインドネシアの赤道域で観測を行っている。写真は、インド洋に沈む太陽を背景にした、スマトラ島に設置した低温研のXバンド・ドップラーレーダーである。

目 次

Preface 巻頭言
「研究所長の仕事:ブラッグの戒律」
香内  晃(低温科学研究所長)
Research 研究紹介
最大雨滴の気候学
藤吉 康志(寒冷海洋圏科学部門)
Antifreeze Mechanisms of Cold Weather Fish
サルバドール・ゼペダ(寒冷陸域科学部門)
People 新しい研究者の紹介
着任のご挨拶
渡辺  力(寒冷陸域科学部門)
北海道はシベリア!?
下山  宏(寒冷陸域科学部門)
Administration Office 平成19年度共同研究採択課題/会議開催報告/人事異動

北海道大学低温科学研究所
http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/

低温研ニュース第23号
(北海道大学低温科学研究所広報誌)
発  行 北海道大学低温科学研究所 所長
〒060-0819 札幌市北区北19条西8丁目
編  集 低温研ニュースレター編集委員会
編集委員 藤吉康志・大島慶一郎・的場澄人・事務部共同利用担当
(ご意見・お問い合わせ、投稿は編集委員まで)
TEL (011)706-5465、FAX (011)706-7142

Preface … 巻頭言

香内晃

「研究所長の仕事:ブラッグの戒律」

低温科学研究所長  香内 晃

 大学生の頃,ダイソンの書いた‘The Future of Physics’1)を読んで,その中に登場する「ブラッグの戒律」は何て示唆に富んでいるのだろうかと感心しました.また,「研究所長たる者かくあるべし」と大変共感したものでした.所長に就任してあらためてこの記事を思い出しました2).この記事の前半部分は,研究所の将来を考える上で非常に重要で示唆に富んでいるので,以下に概略を紹介しましょう3)

 ラザフォードの後任としてキャベンディシュ研究所長にブラッグ(W. L. Bragg)が就任した1938年,高エネルギー物理学の中心はすでにバークレーに移っており,キャベンディシュ研究所は壊滅的状況にあった.ブラッグは再建のための努力をしないだけでなく,所長室に粋におさまって,「私たちは,世界に核物理学のやり方を教えたが,これは大変うまくいった.今度は,何か他のことのやり方を教えてやろうではないか」と宣った.

 ブラッグが関心を示してサポートしたのは奇妙な連中で,やっていることは高エネルギー物理屋がおよそ物理とは認めないような代物であった.マーチン・ライルは山のようなくたびれたエレクトロニクス部品と格闘しながら,天空の電波源を見つけようとしていた.マックス・ペルツはヘモグロビンのX線構造解析に10年以上も費やしていたが,あと15年もすればできるだろうと大変機嫌良く語っていた.フランシス・クリックは物理への興味を全く失っているようだった.残っていた理論屋の大多数はダイソンも含めて,この頼りない連中から学ぶものは何ひとつないと判断し,キャベンディシュを去っていった.

 ブラッグが1953年にキャベンディシュ研究所を引退する時,彼が宣った「何か他のことのやり方を教えてやろうではないか」は,根も葉もないホラでなかったことは,誰の目にも明らかであった.ブラッグは高エネルギー物理学に勝るとも劣らない分野,すなわち電波天文学と分子生物学を残したのである.

 ブラッグが成功したのは次の3つの「ブラッグの戒律」4)を守ったからであるとダイソンは分析している:

 (1) 過去の栄光の復活を試みることなかれ.
 (2) 流行中というだけの理由で研究することなかれ.
 (3) 理論屋(スノッブ)の軽侮を恐るることなかれ.

さらに付け加えて,研究所長であるブラッグには,古きヨーロッパの体制の下,自分の好きなことができ同僚の反論を無視できるだけの権限が与えられていたことが大きな要因であったとしている.

 さて,ここらで我が低温研の実情を見てみよう.キャベンディシュと比較するのもおこがましいのですが,低温研には雪氷学の黎明期に学問を立ち上げたプチ栄光があります.これの復活を試みてはいけないというのがブラッグの第一戒律の教えです.今のところ,大きくは抵触していないと思います(表).現在,第二戒律にはかなり抵触しています.1995年の改組後の設置目的「寒冷圏の何とかかんとか‥‥」と,おもいっきり流行の地球環境科学に乗っかってしまいました.これは,ダイソン自身がこの戒律に抵触したのと一緒です5)

ブラッグの戒律 プリンストン(ダイソンの自己評価) 低温研
(1) 過去の栄光の復活を試みることなかれ 合格
一般相対論の研究は行っていない
今のところ合格
(2) 流行中というだけの理由で研究することなかれ 中くらい
素粒子論の流行を追っている
不合格
地球環境科学
(3) 理論屋(スノッブ)の軽侮を恐るることなかれ 不合格
フォン・ノイマンの電子計算機プロジェクトを理論屋の批判で中止した
判断せず

 しかし,流行の研究をすること自体は悪いことではありません.なんといっても流行が流行たる所以は,利害関係が一致する同業者集団の圧力があってのことですが,その研究の重要性を多くの研究者が認めたからに他なりません.流行の研究は,とても活気があって刺激的です.さらに,短期間に美味しい果実にありつけるので,若い人たちが参入するのも納得できます.現状の大学附置研で,流行の研究をプロジェクト研究として推進することは,ある程度はやむを得ないと思います.研究所として流行の仕事を支援することは比較的簡単です.看板を掛けることを認めるだけでよいのです.そうすれば,研究費は外部からいくらでも入ってきます.ただ,流行の研究に従事する人は,「自己再生産機構における転写複製の忠実度を意図的に下げる」6)ことが必須であることを肝に銘じておきましょう.

 大学の附置研究所はプロジェクト研究だけではいけません.流行の型にはまらない個人を見出して積極的に支援し,今後の新たな潮流となりうる研究を生み出す必要があります.これこそが大学附置研の最も重要な役割です.このような研究にリスクがあるのは当然で,短期的な研究業績を問われずにリスキーな研究に打ち込める制度設計を考える必要性に迫られていると思います.皆様方の周辺に,「訳が分からない研究をしている」とか「何か変わった研究をしているらしい」というような例があれば,是非,ご教示お願い申し上げます.本来は,これが所長の最も重要な仕事だということは承知しておりますが,残念ながら,私はブラッグのような慧眼を持っておりませんので.

 第3の戒律にどの程度抵触しているかは,判断が難しいと思います.キャベンディシュやプリンストンでは,直接的には内部の理論屋の批判のことをさしていますが,一般の研究所では,理論屋の部分をスノッブに置き換えて考える必要があります.低温研の場合,スノッブをどの程度まで広く考えるかによって,評価が変わってきます.ただ,周囲の建設的助言までも無視するようになってしまうと,独善的だと批判されることになってしまいます.

 何か新しいことのやり方を世界に教えたいものです.

文献・コメント

(1) F. J. Dyson (1970)‘The future of physics’Physics Today, 9月号, 23-28. 邦訳:「物理学の将来」自然,1971年2月号,35-41 (亀井理 訳).

(2) 低温研内で将来構想を議論している際に,「ブラッグの戒律」を知らない方々が相当いらっしゃったので,この機会に紹介することにしました.

(3) 本記事前半の論理構成や議論の進め方は次の文献とほとんど同じですが,「ブラッグの戒律」の本質的重要性を鑑み,あえて同じような議論を展開しました.また,引用にあたっては,亀井による訳の一部を小沼および香内が変更を加えたものを用いています.小沼直樹(1987)ブラッグの戒律,「宇宙化学・地球化学に魅せられて」,サイエンスハウス,p178-181.

(4) Dysonの原著では,単に‘three rules’ としか書かれていませんが,亀井による訳では「ブラッグの戒律」という名訳が登場します.最近,別な方による訳も出版されていますが,亀井による訳を読まれることをおすすめします.

(5) ふたつの意味で抵触しています.ひとつは,プリンストンの研究が流行の素粒子物理学に乗ってしまったこと.もうひとつは,‘The future of physics’の中で,物理学は将来生物学や天文学との境界領域を研究すべきだと述べたこと.

(6) 熊沢峰夫 (1983) 鉱物学雑感,鉱物学雑誌,16, 73-82.研究テーマの選び方についての指導原理を与えてくれる名著です.これを読むと,本質的に重要で手が付けられていない研究テーマは山ほどあり,そんなことよりむしろ「何を研究するかが重要なのではなく,何を研究しないかが重要である」という禅問答のような教えにたどり着きます.研究に行き詰まったら(行き詰まらなくても),是非,読んでください.

(7) 私は,「誰がどんな意図でブラッグを所長にしたのか」,「ブラッグを推薦した人は,ブラッグの研究所の運営方針を予め知っていたのか」などの疑問を昔から持っていました.このあたりの状況をご存じの方は,是非,ご教示頂けると幸いです.


Research … 研究紹介

最大雨滴の気候学

藤吉 康志 (寒冷海洋圏科学部門)

1.はじめに

 気象学者、特に雲物理研究者の努力にもかかわらず、雨滴の形が涙(ラッキョウ)形では無く、扁平な鏡餅型であることは、未だに世間一般の常識にはなっていない。しかし、雨滴の形は知らなくとも、雨滴には様々な大きさのものが混じっていること、また、積乱雲からは大粒の雨が、霧からは小粒の雨が降ることなどは経験的に知られている。

 雨滴の数は、雨滴の直径が大きくなるほど指数関数的に減少するが、自然界ではどの位の大きさの雨滴まで存在し得るのであろうか。風洞中に静かに浮かした実験でも、球等価直径9mm以上の水滴は、表面張力では安定形を保つことができず、不安定になって自発的に分裂してしまう。まして乱れが大きい自然界では、等価直径7mmが雨滴の上限と言われてきた。これまでカメラをつけた気球で、熱帯の積乱雲内で直径9mm(等価直径ではなく最大直径)の雨滴が測定された事例はあるが、意外にも過去に雨滴の最大粒径を統計的に調べたものは無い。その主な理由として、以下の3点が挙げられる。(1)1年中、雨が降るたびに雨滴の大きさを測定する労力が大変である。(2)直径7mm以上の雨滴は直ぐに分裂してしまうため、所詮上限のある最大直径を報告してもインパクトが少ない。(3)雨滴の個数は、直径が大きくなるほど数が指数関数的に減少するため、観測した最大直径がその降水イベント中の本当の最大直径と言い切るのが困難である。

 最近のコンピューターの大容量・高速化によって、雲物理過程を詳細に含んだモデルが数多く開発されているが、雲解像モデルの多くが、未だに雨滴の粒径分布形を固定したバルク法を用いている。今後、局地予報の精度を向上させるためには、降水強度・降水域・降水雲の持続時間などの予報改善が必要であり、そのためには雨滴の粒径分布の時間変化をも計算するビン法を導入する必要がある。従って、雨滴成長(衝突−併合−分裂)モデルの検証や、地上および衛星からのレーダーを用いた降水量の推定精度の向上、地表に存在する植物、土砂、構造物への雨圧の推定、更に何よりも、自然科学的興味から、雨滴の最大直径が地域、季節あるいは降水システムにどのように依存しているのかを観測的に確かめる必要がある。

2.札幌および沖縄で観測された大きな雨滴トップ12

 従来の測定法(濾紙法、マイクロフォン型、光遮蔽型、ドップラースペクトル測定型)では、同じ体積の雨滴でも、形、大きさ、落下速度などに違いがあることを考慮すると、本研究目的には使えない。そこで我々は、2D-Video Distrometer(JOANNEUM RESEARCH)を用いて観測を行っている。本装置は、雨滴を2方向からビデオ画像として捉えることで形と大きさを測定し、かつ落下速度も同時に測定できる。解析に用いたデータは、札幌(低温研の中庭に設置)では2003年−2006年までの降雪時期を除く4月−11月、沖縄(独立行政法人情報通信研究機構沖縄亜熱帯計測技術センターに設置)では2004年5月−2006年10月までである(一部欠損あり)。作成したデータセットは、降雨のあった1日に観測された全雨滴のなかで最大の粒径をもつ雨滴の形、幅、高さ、落下速度、そしてその雨滴が観測された時の1分間平均雨量である。

 図は、札幌と沖縄でそれぞれ観測された全雨滴(数千万個)のなかで、上位12番までの雨滴の画像を示したものである。当然であるが、室内実験に比べて実際の雨滴の形は複雑であり、傾いて降ってくる場合も多い。札幌では、これまで測定した中で最大の雨滴の等価直径は7.42mmであり、沖縄では7.73mmであった。また、札幌及び沖縄での2番目の雨滴は、形が偏平であるため最大直径はそれぞれ9.38mmと10.0mmにも達した。興味深いのは、札幌に比べて沖縄のほうがTOP4までは大きいが、それ以下では、札幌の方がむしろ大きく、全体としては、ほぼ同じような大きさの雨滴が降っていることである。ここで気になるのが、(3)で危惧した最大雨滴の検出確率である。2DVDが計測した1日に降った雨滴(直径0.1mm以上)の総数と、その日の最大直径との関係を調べると、札幌でも沖縄でも、雨滴の総個数が5万個以上でないと、その中での最大雨滴の直径は雨滴の粒径に依存した個数の検出確率の影響を受けてしまうことが分かった。計測個数が5万個を越えた事例について、1日に降った全雨滴の中での最大直径の出現頻度を調べると、最大直径は札幌でも沖縄でも4mmを中心としたガウス分布でほぼ近似できる。ただし、沖縄の方が札幌に比べて大きな雨滴が降りやすい傾向にあった。

 また、紙数の都合で詳細は省略するが、沖縄では6−8月の夏に大きな雨滴が際立って高い頻度で降っており、一方札幌では、10月に頻度が高いという季節変化が見られた。また、沖縄では、最も強い対流が発生しやすい日中(12時−15時)に最大雨滴の出現頻度が高く、一方札幌では、真夜中から朝方にかけて最大雨滴が観測されやすいという日変化も見られた。

図

3.今後の展望

 2DVD を用いることで、世界で初めて、雨滴の最大直径に関する諸特性を明らかにすることができた。数千万個に達する雨滴の中で、これまでに見出された雨滴の最大球等価直径は、7.73mmであった。また、札幌と沖縄という全く異なった気候区での測定事例を比較することで、これらの諸特性の地域特性あるいは、地域によらない一般性を議論することができた。今後は、数10mという細い雨足を測定できる特殊なレーダーとの同時観測や、2DVDを用いた国内外(インドネシアやインド)の観測データとの比較も行う予定である。 更に、ここで明らかとなった最大雨滴の諸特徴を、雲物理学的に解釈することと、それらの結果を雨滴成長モデルに反映させる予定である。

 雨という誰もが体験する身近な現象にも、まだまだ知られていないことは多い。

本研究には、山村育代(現:北大・院・環境科学院)、南雲信宏(現:仙台管区気象台)、中川勝広(情報通信研究機構)各氏の多大な協力を得ました。記して感謝します。


Research … 研究紹介

ゼペダ

Antifreeze Mechanisms of Cold Weather Fish

Salvador Zepeda (寒冷陸域科学部門,外国人特別研究員)

Surviving sub-freezing environments: insulation, freeze tolerance, and freeze avoidance

Survival under sub-freezing temperatures is accomplished in several different ways. Warm-blooded creatures simply bundle up with insulation to avoid exposing their vital parts to such temperatures. Amazingly on the other hand, some turtle hatchlings and frogs are known to freeze and then recover complete animation after thawing. Before freezing they experience an extensive dehydration helping to minimize the detrimental effects caused by freezing.1 Fish that live in the polar and near polar regions, where the ambient temperatures can reach -1.9°C, have enough salt in their bodies to lower the freezing temperature about 1°C, higher salt concentrations would lead to lethal osmotic pressures. Instead, the fish produce a unique set of proteins termed antifreeze proteins (AFPs) and glycoproteins (AFGPs) that help them lower their freezing temperature just enough to avoid freezing altogether. Fish can easily ingest many small ice nuclei from the ocean waters that are essentially in equilibrium with their environment. The AFPs or AFGPs adsorb onto these nuclei completely inhibiting their growth.

Fig.1

Figure 1. Ice crystal growth in AFGP solution takes on a barre shape. Steps are visible on the highly vicinal and high index surface.

AFP Mechanism

Since the discovery of the “antifreeze effect” in fish over 50 years ago by Scholander et al2,3, other similar proteins have been found not only in fish, but in plants and insects, totaling at least 5 distinct proteins classes, AFPs I-IV and AFGPs. Additionally, these proteins modify the growth habits quite radically and inhibit ice recrystallization and have been shown to improve the preservation of frozen foods and even the preservation of blood sparking interest in fields from medicine to ice cream manufacturers as well as the petrol industry for their potential uses. Knowing the exact mechanism or essential components for function would aid in the design of more effective antifreezes for such uses.

AFPs occur in a wide range of composition and structure, while the main functions remain quite similar or even identical.4 Thus in general, scientist have long believed that all of the proteins function in a similar fashion, by implanting themselves on the ice surface physically blocking ice-binding sites causing local changes in the curvature. This effect is known as the Gibbs-Thomson effect and the freezing temperature is fully determined by the protein spacing on the surface. It has been postulated that these proteins bind irreversibly due to the large number of possible hydrogen bonds and become incorporated into the ice crystal upon further growth.

Fig.2

Figure 2. Schematic of antifreeze protein stopping the ice interface and protein incorporated into the ice crystal.

Our work

Our laboratory focuses on finding how these proteins carry out the antifreeze function, by providing direct evidence for the ice crystal growth kinetics and morphologies in AFP solutions as well as directly studying the protein kinetics at the ice interface. We have carried out several types of experiments that include 1-directional growth and free-solution growth experiments using phase contrast, fluorescence microscopy, 3-d confocal microscopy, and interferometric measurements. Figure 3 shows images of 1-directional ice crystal growth experiments in type I and type III AFP solutions taken nearly simultaneously by a combination phase contrast and fluorescence microscope.5 Type I AFPs are small, rod-like proteins while the type III AFPs are much larger and globular in shape. The phase contrast image shows the detailed gross morphology of the ice while the fluorescence image shows the exact location of the proteins. The type I AFPs clearly incorporate into veins in the ice but to within the detectable limits, are not seen in the ice crystal matrix. Type III proteins similarly incorporate into the veins, but are also seen in the ice crystal. By comparing figures 3c) and 3d) we can see that the protein arrangement within the ice region is not related to the ice morphology, since this appears completely smooth in the phase contrast image. These two proteins while carrying out the same function interact differently with the ice surface suggesting that the protein ice binding differs considerably. Additionally, we have calculated the diffusion coefficients, partitioning coefficients, and surface concentrations by similar experiments for these and other AFPs.

Using 3-d confocal fluorescent microscopy we have visualized the adsorption process for the AFGPs at the halted interface as well as the complete desorption upon further growth indicating reversible ice binding or perhaps even a surfactant-like action. This is in complete contrast to the previous proposed models. Our results suggest different mechanisms for the different proteins.

Fig.3

Figure 3. a,b) Phase contrast and c,d) fluorescence image of AFP type I and type III. All images are approximately 1mm in width. a-axis is a,b) 13° and c,d) 0° from the horizontal.

1. Lee, R. E., Costanzo, J. P., Davidson, E. C. & Layne, J. R. Dynamics of Body Water During Freezing and Thawing in a Freeze-tolerant Frog (Rana Sylvatica). J. Therm. Biol. 17, 263-266 (1992).

2. Scholander, P. F., Flagg, W., Walters, V. & Irving, L. Climactic adaptation in arctic and tropic pokilotherms. Physiol. Zool. 26, 67-92 (1953).

3. Scholander, P. F., Van Dam, L., Kanwisher, J. W., Hammel, H. T. & Gordon, M. S. Supercooling and osmoregulation in arctic fish. J. Cell. Comp. Physiol. 49, 5-24 (1957).

4. Yeh, Y. & Feeney, R. E. ANTIFREEZE PROTEINS - STRUCTURES AND MECHANISM OF FUNCTION. Chem. Rev. 96, 601-617 (1996).

5. Zepeda, S., Uda, Y., Yokoyama, E. & Furukawa, Y. in Physics and Chemistry of Ice, ed. Kuhs, W., Royal Society of Chemistry, Cambridge (2007).


People … 新しい研究者の紹介

渡辺力

着任のご挨拶

渡辺 力(寒冷陸域科学部門)

2007年3月1日付で教授として着任致しました。これからどうぞよろしくお願い致します。これまでは、東北大学大学院理学研究科で学位を取得した後、茨城県つくば市にある森林総合研究所に研究員として14年ほど勤務してきました。

私は、主に植生と大気との相互作用に興味を持って研究を行ってきました。地球上の全陸地の約半分は、熱帯雨林からツンドラに至るさまざまな植生に覆われています。かつては、こうした植生分布などは気候によって一方的に支配されるとする見方が普通でしたが、現在では、植生の変動が気候にも影響を及ぼし、それによって気候が変化し、また植生に影響が還るという相互作用系として考えられるようになってきました。もちろん、気候に影響を及ぼす要因には他にもっと重要なものがたくさんありますが、気候(または地球)システムの理解が進むにつれて、植生等の影響要素にも目が注がれるようになってきました。

さて、植生と大気とが相互作用を及ぼしあう経路には大きく分けて3通りの経路があります。そのまず第1は、CO2の吸収・放出を通して影響しあう経路です。つまり、植生が大気中のCO2を吸収することによって温室効果が軽減されます。すると、吸収したCO2を使って植生が成長し変化します。植生が変化するとCO2の吸収量も変化し、それが大気に再び影響を及ぼすことになります。第2は、大気運動量の吸収を通して相互作用する経路です。森林の樹木などは、風を遮ることによって大気の流れに抵抗を及ぼします。すると、上空と植生付近との間に大きな風速勾配が作られ、その歪みエネルギーが元になって、樹高の数倍程度の大きさをもつ渦がたくさん作られます。こうして作られる渦が、植生と大気との間でのCO2や熱及び水蒸気の交換を促進し、第1第3の経路に寄与します。一方、樹木にとってみれば、風に強く押されることによって風害を受けたり、ひどい場合には倒木によって森林が衰退してしまうこともあります。そして第3の経路は、熱や水蒸気の交換を通しての相互作用です。非常に荒っぽく言ってしまえば、地球上の気候は、大気が太陽エネルギーをどこでどれだけ吸収するか、によって決まっています。しかし、大気は透明ですので、太陽エネルギーを直接吸収することはあまりありません。一旦、地表面がエネルギーを吸収し、下から大気を暖めることによって、太陽エネルギーが大気に伝わることになります。このとき、地表面上に植生があるかないか、仮に植生があったとしても葉の茂り具合はどうか、また気孔が開いているか閉じているかによって、大気に伝えられるエネルギーの形態(顕熱か潜熱か)が変わってきます。すると、大気の循環が変化し、エネルギーが運ばれていく先が変わります。

これまでは主に、雪や氷などの影響があまりない温暖な地域を対象に上のような相互作用に関わる研究をしてきました。これからは、対象を寒冷圏に拡大し、大気圏・生物圏・雪氷圏の3圏における相互作用の研究を進めて行きたいと考えております。そのためには、気象、水文、生物、雪氷の各分野にまたがる広い知識が必要です。低温科学研究所には各分野に精通した皆さんがそろっておられます。その上、研究をサポートして下さる大勢のスタッフの皆さんがいらっしゃいます。私は、このような研究所の魅力を十分に感じて生かしながら、皆さんと一緒に交流と研究をさせて頂きたいと思っています。さらに、私達の研究グループが、その魅力を増す方向に貢献できたらこの上ない喜びです。


People … 新しい研究者の紹介

下山宏

北海道はシベリア!?

下山 宏(寒冷陸域科学部門)

2007年3月に寒冷陸域科学部門、雪氷環境研究室の助手として赴任いたしました下山宏と申します。赴任してわずかひと月後の4月からは助教という名に変わりました。ここに来る前は、茨城県つくば市にある国立環境研究所に5年間居りましたので、大学に在籍するのは久しぶりです。

これまで私は西シベリアをフィールドとして、熱・水・炭素循環の研究を、野外観測を中心として行ってきました。研究を行ったきっかけは、都立大学時代に低温研出身であった助手の方に、シベリアで研究してみませんか?と誘われたことにあります。今、自分が低温研に居るのも何かの縁かと感じています。

名古屋大学での大学院時代は、西シベリア地域で広大な面積を占める湿原で観測を行いました。湿原での熱・水エネルギーやCO2収支量の季節変化を知ることが目的でした。ところが研究を行った当時は、シベリアのような遠隔地で、このような観測を長期間連続して実施する為に性能の良い計測器が存在しませんでした。まだ怖いもの知らずであったこともあり、それならば精度を確保する為に現地で測器のメンテナンスをつきっきりで行おう、と考えて、単身シベリアに滞在することを決意しました。ろくに観測経験も持たずに乗り込んだので、案の定、はじめはトラブルの連続でした。通信手段もロクに無かった現地では、装置のトラブルは自分で対処するしかありません。でなければデータは欠側してしまいます。ひたすらテスターと在庫のパーツ類を駆使して格闘し、なんとか装置が回復してデータは取れるようになった時の感動は忘れられません。野外観測でデータを得ることの難しさと、自分で取得したデータを使用して研究が出来るという喜びを覚えました。

国立環境研究所に移ってからは、より広域的な炭素循環の研究に携わるようになりました。国立環境研究所のプロジェクトとして立ち上がっていた、西シベリア2000kmスケールの範囲を対象としたCO2濃度観測ネットワークの構築や、航空機によるCO2濃度観測などを行いました。プロジェクトの大きな目的は、西シベリア地域のCO2収支量分布を推定することでしたが、解析していくうちに色々と面白い事実も観測データから見つかってきました。大気中のCO2濃度の変動に対する陸上植物の光合成活動や地表面での熱・水エネルギー交換過程との関連性はもとより、大気そのものの空間構造や雲の存在なども大きな影響を及ぼしているということ、さらに、これらが様々な時空間スケールの現象を複雑に反映し、相互に影響を及ぼしているということ、などがわかってきました。

このような現象は、地表面の影響を強く反映する大気境界層と呼ばれる高さ2000mくらいまでの層を中心として生じています。実は大気境界層内のCO2濃度の詳細な観測例は世界的にも非常に少なく、観測に基づく事実を示した例はほとんどありません。従って、西シベリア地域に存在する湿原や森林での炭素循環過程が、どのように広域的な大気に反映されていくのかを観測事実から示すことが、現在の研究課題となっています。

北海道に来てまず感じたのは、シベリアに風景が似ているということです(特に道北エリア)。北海道に住むのは初めてですし、北海道の景観は明らかに本州とは異なります。しかしながら、北海道の風景を見ていると、妙に懐かしさというか親近感を感じます。まるでシベリアにいるかのような錯覚に陥ります。風景が似ているということは、存在する植物が同じである(厳密には異なるかもしれませんが)というところが大きいかと思います。陸上での熱・水エネルギー・炭素循環に対して、植物の影響は非常に大きなものがあります。地球全体への影響を考えたときに、シベリア地域というのは、地理的にも、また面積的にもその重要性は疑いようがありません。ただ、身近なところでシベリアと同じような環境があることは、自分にとって非常に魅力的です。わざわざ遠くへ行かなくても、シベリア研究に直結させることが可能な研究が行えるからです。

今までシベリアの研究では、主に夏季を中心として行ってきました。ところが、1年の半分が積雪に覆われる地域では、積雪条件で存在する独自のプロセスが、熱・水循環はもとより、炭素循環においても少なからず影響を与えている、ということも近年の研究から指摘されています。ここ低温科学研究所は、寒冷圏、雪氷圏研究の第一人者が数多く居られます。このような環境に所属するのを大いに活用し、皆様と議論をさせていただきながら、観測の難しい低温環境でのプロセスにも目をむけて、研究を進めて行きたいと思っています。


Administration Office

平成19年度  共同研究採択課題

 平成19年度北海道大学低温科学研究所共同研究・研究集会は、平成18年12月1日から平成19年1月15日まで公募を行い、審査の結果、以下の課題を採択しました。
 なお、研究代表者の職名は、原則として申請時のものとしましたので、よろしく御容赦のほどお願いします。

 共同研究採択課題は,「平成19年度共同研究採択課題」を御覧ください。

会議開催報告

人事異動(平成18年11月1日以降)

日付 異動内容 氏名 職名(旧職)
18.12.31辞職千貝 健技術補佐員
19. 1. 1採用千貝 健技術職員(非正規職員から)
19. 1. 1採用小野 純学術研究員
19. 2.16昇任古川 義純寒冷陸域科学部門教授(低温基礎科学部門助教授)
19. 3. 1採用渡辺 力寒冷陸域科学部門教授(森林総合研究所主任研究員)
19. 3. 1採用下山 宏寒冷陸域科学部門助手(国立環境研究所ポスドクフェロー)
19. 3.31任期満了宮本 宏美事務補佐員
19. 3.31任期満了中右 浩二博士研究員
19. 3.31任期満了堀川信一郎博士研究員
19. 3.31任期満了奥山 純一博士研究員
19. 3.31任期満了イセーンコ イエフゲーニ博士研究員
19. 3.31任期満了ロペス ラリー博士研究員
19. 3.31任期満了城田 徹央博士研究員
19. 3.31任期満了山田 雅仁博士研究員
19. 3.31任期満了新井健一郎研究支援推進員
19. 3.31任期満了紺屋 恵子 学術研究員
19. 3.31任期満了胡 耀光学術研究員
19. 3.31定年退職石川 正雄技術専門員
19. 4. 1転出渡辺 修財務部経理課係長(会計係長)
19. 4. 1転入笹川 文子係長—外部資金等担当—(情報基盤センター会計係主任から)
19. 4. 1採用石川 正雄嘱託職員(正規職員から)
19. 4. 1採用岡嶋 琴乃事務補佐員(派遣職員から)
19. 4. 1採用北川 暁子事務補佐員 
19. 4. 1採用宮内 直弥非常勤研究員
19. 4. 1採用宇梶 徳史博士研究員
19. 4. 1採用小林 浩博士研究員
19. 4. 1採用加茂野晃子学術研究員
19. 4. 1採用田村 岳史学術研究員
19. 4. 1採用草原 和弥学術研究員
19. 4. 1採用斎藤 健研究支援推進員
19. 4.16採用澤田 結基学術研究員
19. 5. 1採用岩崎 正純学術研究員
19. 5. 1採用田中今日子学術研究員
19. 5.16採用モハレカル シュバンギ博士研究員
19. 6. 1採用アーガワル シャンカル博士研究員
19. 6. 1採用村山 愛子技術補佐員
19. 6. 1採用草間 麻依技術補助員

北海道大学 低温科学研究所