MENU

研究概要

世界一楽しい研究をしよう!

私は、原子や分子が集まって結晶になる核生成プロセスや、宇宙に多量に存在するナノ粒子(ダストと呼ばれる)の成因を解明するカギがナノ領域特有の物性(50%もの融点降下や、9桁以上の拡散速度の増大など)にあると考え、独自の実験装置群を立ち上げて、かつ最新の電子顕微鏡法を駆使した学際的研究を展開しています。特に、透過型電子顕微鏡中で溶液からの核生成実験ができる世界でも数少ない研究グループを形成し、さらに、レーザー干渉計を用いた気相からの核生成実験と合わせる研究は独創的であると自負しています(基盤研究Sで推進中)。“核生成プロセスの可視化”と“バルクとは異なるナノ粒子の物性の決定”を同時に推進することで、結晶化の初期過程に多角的にアプローチしています。

さらに、得られた結晶化の初期過程の知見を天文学や惑星科学の研究に取り入れて、“液体のような”非常に速い拡散現象を積極的に利用した実験を行うことで、鉱物微粒子の生成過程、結晶化メカニズム、赤外線スペクトルの変化、同位体分別に関して当該分野に新たな視点を与え、宇宙ダストの成長過程もナノ領域の物性に支配されていることを示しています。

ナノ領域の物質科学を基に展開した、革新的な研究成果は、国内外で注目され、現在はJAXA(宇宙航空研究開発機構)、NASA(アメリカ航空宇宙局)、DLR(ドイツ航空宇宙センター)、SSC(スウェーデン宇宙公社)との国際協力で観測ロケットを用いた微小重力実験のプロジェクトがスタートするなど、当該分野の新しい研究の流れを作っています。

  • けむりの不思議;気相からの均質核生成
  • ナノ粒子特有の現象:液体のように振舞う固体
  • TEMその場観察
  • 宇宙ダストの再現実験
  • 天体の示す赤外線スペクトルの再現実験
  • 地球外物質の分析
  • カルビン結晶の生成
  • 機能性粒子の生成

けむりの不思議;気相からの均質核生成

煙ってなに?

煙突からもくもくと立ち昇る煙、火口からでる煙、タバコの煙。 煙の中では何が起こっているのだろう? 実は宇宙にも星が作る煙がいっぱいあります。 煙の中で起こっている出来事を知ると、私たちの太陽系がどのように作られたかまで分かりそうなんです! 
煙って気体のようだけど、なぜ目で見ることができるのでしょう。 それは、煙の正体が小さな小さな粉だからです。空気の材料である窒素や酸素原子は目が感じる光の波長よりもうんと小さいので、光は邪魔されずに進むことができます。でも、原子や分子がたくさん集まって粒子ができると、光は散乱されてまっすぐ進めなくなります。この散乱は、光の波長と同じくらいの大きさを持った粒子でたくさん起こります。私たちの目が感じる光の波長は400(青色)から700(赤色) ナノメートルくらい。そう、煙は数百ナノメートルの大きさを持った小さな粒子、「微粒子」の集まりなのです。 50マイクロメートルが髪の毛の太さ。500ナノメートルは0.5マイクロメートルなので、1本の髪の毛を100本に増やすと、その直径が煙の微粒子の大きさになります。

ナノ粒子の表面自由エネルギーと付着確率の決定

気相中での金属Mnの核生成の温度・濃度環境を干渉計を駆使して決定し、核生成理論と合わせて、原子7個から30 nmまでのサイズ領域での表面自由エネルギーや付着確率の決定に成功した。また、超高過冷却のために臨界核は原子数個となり、非晶質相が核生成した後に結晶相に転移することや、準安定相の確率的な生成など、核生成の描像の一端を解明した。

(a) 二波長のレーザーを持つマッハツェンダー干渉計を備えたナノ粒子生成装置と(b)気相からの核生成を捉えた例。核生成により、屈折率が10-5増加した結果、干渉縞が変位している。

参考文献

  • Y. Kimura, K. K. Tanaka, H. Miura, K. Tsukamoto, Direct observation of the homogeneous nucleation of manganese in the vapor phase and determination of surface free energy and sticking coefficient, Crystal Growth & Design, 12 (2012) 3278–3284.

超高過飽和条件における均質核生成

均質核生成には700-1000Kもの超高過冷却が必要であり、ダイマーの結合エネルギーが核生成頻度を決めていることを示唆した。

参考文献

  • Y. Kimura, H. Miura, K. Tsukamoto, C. Li, T. Maki, Interferometric in-situ observation during nucleation and growth of WO3 nanocrystals in vapor phase, Journal of Crystal Growth, 316 (2011) 196-200.

Oriented attachment: 方位をそろえて接合する形成過程

気相からナノ粒子が生成する場合であっても、初めに生成したクラスター(この場合は針状結晶)が成長ユニットとなり、方位をそろえて接合しながら成長することで、最終生成物のサイコロ状ナノ粒子が形成する。

参考文献

  • S. Ishizuka, Y. Kimura,* S. Yokoi, T. Yamazaki, R. Sato, T. Hama, Self-Assembly of MoO3 Needles in Gas Current for Cubic Formation Pathway, Nanoscale, 9 (2017) 10109-10116.

気相中でのtwo step核生成

気相からナノ粒子が均質核生成を経て生成する場合においても、液滴を経由するtwo step核生成が起こることをアルミナを用いて示した。

参考文献

  • S. Ishizuka, Y. Kimura, T. Yamazaki, T. Hama, N. Watanabe, A. Kouchi, Two-step Process in Homogeneous Nucleation of Alumina in Supersaturated Vapor, Chemistry of Materials, 28 (23) (2016) 8732–8741.

ナノ粒子特有の現象:液体のように振舞う固体

ナノ粒子の成長プロセス

どのように原子や分子が集まってナノ粒子は成長するのでしょうか? 実はこれがポイントなんです! ナノメートルサイズの微粒子は、私たちが普段目にする物とはちょっと違った性質を持つようになります。 有名なのが、融点降下と拡散速度の増大です。 この性質が目に見えて分かるのが左の動画です。 固体のナノ粒子が、まるで液体のように混ざり合って一つの粒子になります。 二つの微粒子が出会うと、まるで水滴が触れ合ってくっつくようにして一つになってしまいます。 そう、粒子の成長のしかたも変わってくるのです。 これを、ナノ粒子の融合成長と呼びます。

参考文献

  • Y. Kimura, K. Tsukamoto, Homogeneous Nucleation of Smoke Particles and Its Relationship with Cosmic Dust Particles (2017) 339-351.  In New perspectives on mineral nucleation and growth: From solution precursors to solid materials, Eds. A. E. S. van Driessche, M. Kellermeier, L. G. Benning, D. Gebauer, Springer.

イオンの自発拡散現象の発見

金属でしか知られていなかったナノ粒子の自発合金化現象(室温でエネルギーを加える事なく合金化する現象)を、イオン結晶であるアルカリハライドにおいて起こる事を初めて見出し、その条件を明らかにしました。 アルカリハライド系はポテンシャルが比較的はっきりしている為に、理論的な取り扱いがし易い事から、自発拡散現象の統一的な理解に向けて理論計算のグループから注目され、現在も私の結果に対して理論的アプローチが行なわれています。

参考文献

  • Y. Kimura, Y. Saito, T. Nakada, C. Kaito, Spontaneous Mixing of Binary Alkali Halide Crystal by Successive Evaporation, Physica E: Low-dimensional Systems and Nanostructures, 13 (2002) 11-23.
  • Y. Kimura, Y. Saito, T. Nakada, C. Kaito, Spontaneous Alkali Halide Formation by the Use of KBr-KCl System, Phys. Low-Dim. Struct., 1/2 (2000) L1-L7.

TEMその場観察

タンパク質結晶の欠陥形成メカニズムの一端を解明

欠陥の少ない良質なタンパク質の結晶育成は,創薬の効率化に直結します。我々は,タンパク質の結晶化初期に導入される欠陥を透過型電子顕微鏡でその場観察することに成功しました。成長に伴う欠陥の密度変化などの解析から、欠陥の起源は核生成前後の初期段階にあることを示す結果を得ました。これは、結晶の品質向上には成長過程よりも種結晶の育成過程がより重要であることを示唆する重要な成果です。これは、一般的な結晶の品質を向上するうえでも重要な手掛かりになります。

本研究は,Soft Matterの表紙を飾りました。

参考文献

  • T. Yamazaki, A. E. S. Van Driessche, Y. Kimura, High mobility of lattice molecules and defects during the early stage of protein crystallization, Soft Matter, 16 (2020) 1955-1960.

タンパク質結晶ができる瞬間をナノスケールで観察~集まり方の異なる非結晶粒子が結晶化を促進~

タンパク質の結晶化の解明は,創薬に向けた最大の課題です。我々は,その過程を明らかにするため,ナノの空間分解能をもつ透過型電子顕微鏡で,リゾチームタンパク質の結晶化の直接観察を試みました。その結果,このタンパク質の結晶化は不規則に密集して結晶化の土台となる粒子(ガラス状粒子)と,その上にゆったりと不規則に集まった後に結晶に変化する粒子(液滴状粒子)の2種類が介在するという想定外の過程で起こることを明らかにしました。この成果は,タンパク質の結晶化手法の確立につながると期待され,一般的な結晶の生成過程を知るうえでも重要な手掛かりになります。

本研究は,米国科学アカデミー紀要のハイライト論文に選ばれました。

参考文献

  • T. Yamazaki, Y. Kimura, P. G. Vekilov, E. Furukawa, M. Shirai, H. Matsumoto, A. E. S. Van Driessche, K. Tsukamoto, Two types of amorphous protein particles facilitate crystal nucleation, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 114 (2017) 2154-2159.

ナノ粒子の溶解プロセスの直接観察

水の代わりにイオン液体を溶媒として用いることで、TEMを用いて、溶液中の核生成と溶解過程を0.75 nmの分解能でその場観察することに世界で初めて成功し、生成粒子は様々な多形の微結晶が生成した後の生き残りの結果であることを示した。

参考文献

  • Y. Kimura, H. Niinomi, K. Tsukamoto, J., M. García-Ruiz, In Situ Live Observation of Nucleation and Dissolution of Sodium Chlorate Nanoparticles by Transmission Electron Microscopy, Journal of the American Chemical Society, 136 (2014) 1762-1765.

結晶表面の昇華プロセス: Pb(111)面

透過型電子顕微鏡中で1500℃まで加熱しながら観察の行える装置を活用し、ナノ微粒子の高温での振る舞いを原子オーダーで捉えました。 例えば、結晶表面の昇華プロセスが、従来のモデルで取り扱われるような最表面から1層ずつではなく、写真に示すように4層や2層で起こる事を直接観察しました。

参考文献

  • T. Tanigaki, H. Suzuki, Y. Kimura, Y. Saito, C. Kaito, Atomic observation of the sublimation process of the Pb (111) surface, Surface Review and Letters, 10/2-3 (2003) 455-459.

結晶表面の昇華プロセス: PbTe(100)面

透過型電子顕微鏡中で1500℃まで加熱しながら観察の行える装置を活用し、結晶表面から分子が昇華することによるステップの後退の現象を原子オーダーで捉えました。

結晶中への溶解: SiC表面上の炭素

炭素膜を持つSiCナノ粒子をTEM中で加熱したところ、炭素質層は800℃程度という低温で消失した。実は、昇華ではなく、SiC内部への拡散によることを報告した。

参考文献

  • Y. Kimura, Y. Saito, C. Kaito, High-temperature behavior of an amorphous carbon layer on SiC particles, Surface Science Letters, 527/1-3 (2003) L219-L221.

宇宙ダストの再現実験

微小重力環境を利用した星の“かけら”の再現実験
鉄の存在形態の通説を否定,鉄はどこに!?

観測ロケットを用いた微小重力実験を実施し,超新星爆発で鉄の微粒子が作られる過程の再現に成功しました。

宇宙における鉄の存在形態は,天文学上の大きな謎の一つです。この謎に決着をつけるため,宇宙に存在する鉄の主要な供給源である超新星爆発後の鉄粒子の生成過程を再現し,鉄がガスから固体になる際の付着確率(くっつきやすさ)を調べました。その結果,これまで100%と考えられていた付着確率が,実は0.002%程度であることを明らかにしました。これは,宇宙における鉄の主要な存在形態は金属ではないことを示す成果で,天文学に新たな問題を提起することになりました。従来の物質進化モデルの書き換えにつながる成果です。

参考文献

  • Y. Kimura,* K. K. Tanaka, T. Nozawa, S. Takeuchi, Y. Inatomi, Pure iron grains are rare in the universe, Science Advances, 3 (2017) e1601992.

太陽系シリケイトの新しい生成プロセス

水素が豊富な環境ではMg2SiO4よりもMg2Siが生成することを実験的に示しました。 その結果、今まで未解決であった以下の問題を一度に解決するプロセスを提案することができました。

  1. なぜ隕石中のオリビンは太陽系の酸素同位体組成を持つものばかりなのか。
  2. なぜ晩期星のオリビンは非晶質ばかりなのか。
  3. なぜ隕石中のオリビンの起源物質が化学量論的にMg:Si=2:1であったのか。
  4. なぜ隕石中のオリビンは鉄が少ないのか。
  5. なぜ同位体異常を示す隕石中のガラスはMgに乏しいのか。

参考文献

  • Y. Kimura, J. A. Nuth III, A Seed of Solar Forsterite and Possible new Evolutional Scenario of Cosmic Silicates, The Astrophysical Journal Letters, 697 (2009) L10-13.

ケイ酸塩粒子の生成実験

珪酸塩は宇宙で最も豊富な無機固体物質であり、地球を始めとする太陽系天体の主要材料である。 天体の各進化段階において、その環境を反映して非晶質と結晶質の割合が変わる事から、天体の環境を推定するのにも有用である。 にもかかわらず、未だその生成過程や結晶化条件などが分かっていない。 これに対し、最近ガスからの凝縮実験において、非晶質と結晶質の入り混じった微粒子の生成に初めて成功した。 酸化反応熱と反応のインターバルが鍵となる天体周辺における珪酸塩微粒子の形成過程を新たに提案した。

参考文献

  • Y. Kimura, S. Sasaki, H. Suzuki, A. Kumamoto, M. Saito, C. Kaito, Experimental Demonstration of Condensation of Mg-Bearing Silicate Grains around Evolved Stars, The Astrophysical Journal, 684 (2008) 1496-1501.

ダスト生成のトリガー

ガスが単純に冷える過程で熱平衡時に形成すると考えられていた宇宙ダストに、プラズマや紫外線が駆動力を与える異なる生成過程があり、熱的な合成とは異なる構造の粒子が作られることを示した。

参考文献

  • Y. Kimura, J. A. Nuth III, What is the Driving Force to Form Refractory Oxide Grains? Silicate Spectra Depend on their Formation Environment, The Astrophysical Journal, 664 (2007) 1253-1263.

コア-マントル粒子の生成過程

隕石中に見られるTiCをコア持ったカーボン粒子の成因を再現実験により解明しました。 Boudouard 反応(2CO → CO2 + C)によってCO ガスからフラーレンが生成し、カーボンマントル層の材料となる事で、宇宙で作られた複合粒子の生成過程を矛盾なく説明出来る事を示した。 この結果は、今まで安定と考えられてきたCO ガスが炭素質物質の材料となりうる事を示した点でも意義深い。また、この粒子が炭素に富んだ星に見られる21 μmの赤外バンドの起源となり得ることも示しました。 さらに、隕石中に見つかっているフラーレンの生成過程を初めて提案するものでもある。 これにより、①複合粒子の形成プロセス②宇宙起源のフラーレンの成因、③生成領域に対応する星に見られる赤外バンドの起源、の三つを矛盾無く説明する新しいストーリーを提案した。

参考文献

  • Y. Kimura, J. A. Nuth III, F. T. Ferguson, Formation of TiC-core, graphitic-mantle grains from CO gas, Meteoritics & Planetary Science, 41 Nr 5 (2006) 673-680.

非質量依存同位体分別組成を持つナノ粒子の生成

微粒子の成長過程にプラズマ場を導入する事で、熱を用いた凝縮とは異なる成長様式で微粒子が生成する事を見出しました。 特に、プラズマ場中で珪酸塩微粒子を生成する事で、質量に依存しない酸素の同位体分別を示す固体微粒子の生成に世界で初めて成功しました。 これにより、原始太陽系星雲中での物質進化過程の議論に、同位体分別の実験的研究を加える事が可能になりました。

参考文献

  • Y. Kimura, J. A. Nuth III, S. Chakraborty, M. H. Thiemens, Non-Mass-Dependent Oxygen Isotopic Fractionation in Smokes Produced in an Electrical Discharge, Meteoritics & Planetary Science, 42 (2007) 1429-1439.

天体の示す赤外線スペクトルの再現実験

ロケットを使った微小重力実験で13μm未同定バンドを再現

観測ロケットを用いた微小重力実験を実施して,地上実験とデータ解析を進めた結果,晩期型巨星で酸化アルミニウムの微粒子が作られる過程を再現することに成功し,未同定赤外バンドと同様の赤外バンドを得ました。
すばる望遠鏡などによる天体観測で得られる赤外線スペクトルには,宇宙に存在する鉱物微粒子の情報が含まれています。そのため,赤外線スペクトルは138億年の宇宙の歴史の中で物質がどのように進化してきたのかということを理解するための強力なツールです。情報を読み解くために,現在は地球上の鉱物や実験の赤外線スペクトルが参考にされていますが,これらのスペクトルは天体観測によるスペクトルと完全には一致せず,その起源物質を明確には決められていません。 この問題に決着をつけるため,晩期型巨星の周りで生成すると考えられている代表的な微粒子である酸化アルミニウムを再現合成し,その赤外線スペクトルを取得しました。その結果,理論的には予言されていたものの,実験的には再現できていなかった鋭い赤外バンドの取得に成功しました。これは,天文学に新たな手法を提起し,多くの未同定赤外バンドの解明に道を拓く成果です。

参考文献

  • S. Ishizuka, Y. Kimura, I. Sakon, H. Kimura, T. Yamazaki, S. Takeuchi, Y. Inatomi, Sounding-rocket microgravity experiments on alumina dust, Nature Communications, 9 (2018) 3820.

赤外線スペクトルのその場測定実験

宇宙には、ダストと呼ばれるナノメートルサイズの固体微粒子が多量に存在している。ダストは、星間および星周環境においてエネルギー収支を担い、表面を分子形成の場として供し、また、星形成率を大きくし、惑星系の材料になるなど、宇宙において非常に大きな役割を担っている。そのため、ダストの組成やサイズ・質量を明らかにする事は非常に重要である。ダストの特徴は、赤外線天文観測で決められるが、非常に多くの未同定な赤外線バンドが残されており、ダストの特徴を正しく解釈できていない。これは、実際のダストとは異なる条件で得られた赤外スペクトルを元にバンドの同定が行われているためである。我々は、ナノ粒子の赤外スペクトル測定を初めてその場で行うことに成功、バルクはもちろん、凝集した粒子とも異なる赤外線スペクトルを初めて示した。

参考文献

  • S. Ishizuka, Y. Kimura, T. Yamazaki, In Situ FT-IR Study on the Homogeneous Nucleation of Nanoparticles of Titanium Oxides from Highly Supersaturated Vapor, Journal of Crystal Growth, 450 (15) (2016) 168-173.
  • S. Ishizuka, Y. Kimura, I. Sakon, In- situ infrared measurements of free-flying silicate during condensation in the laboratory, The Astrophysical Journal, 803 (2015) 88 (6pp).

アストロノミカルシリケイトの再現に初めて成功!

ガスからの凝縮実験で生成した、自由浮遊しているMgケイ酸塩粒子の赤外線スペクトル(黒)と天体観測(赤)との比較。媒質の効果を受けないために、従来よりも短波長側にピークを示した。その結果、9.7 mmのアストロノミカルシリケイトバンドを初めて直接再現できた。

参考文献

  • S. Ishizuka, Y. Kimura, I. Sakon, In- situ infrared measurements of free-flying silicate during condensation in the laboratory, The Astrophysical Journal, 803 (2015) 88 (6pp).

若い天体に見られる6.8μm赤外バンドの起源

若い星で観測される6.8 μm の赤外線バンドは有機物でしか議論されてこなかったが、無機物である酸化カルシウム微粒子(CaO)でも説明できることを図2に示すように明らかにした。 CaO は周囲のガス環境を反映して、Ca(OH)2、CaCO3 と可逆的に変化するため、スペクトルから固体微粒子の経験した環境を推測できることも明らかにした。

参考文献

  • Y. Kimura, J. A. Nuth III, Laboratory synthesized calcium oxide and calcium hydroxide grains: A candidate to explain the 6.8 μm band, The Astrophysical Journal, 630 (2005) 637-641.

宇宙におけるフラーレンの生成過程の解明

隕石中に見つかり論争が続いていた宇宙でのフラーレンの存在に対して、天体スペクトルから始めてフラーレンを同定し、実験からナノ粒子の触媒効果によるCOガスからの生成ルートを見出した。

参考文献

  • Y. Kimura, Joseph A. Nuth III, Frank T. Ferguson, Is the 21-μm feature observed in some post-AGB stars caused by the interaction between Ti atoms and fullerenes?, The Astrophysical Journal Letters, 632 (2005) L159-L162.

地球外物質の分析

電子線ホログラフィによる46億年昔の磁鉄鉱粒子の磁区構造

An isolated magnetite nanoparticle from a colloidal crystal in the Tagish Lake meteorite shows a concentric circular magnetic structure as displays here in a reconstructed phase distribution observed by an electron holography transmission electron microscope. We demonstrated existence of droplets as last moments of water in an ancient asteroid and the formation process of the framboids composed of three-dimensionally aligned nano-magnetite.

参考文献

  • Y. Kimura, T. Sato, N. Nakamura, J. Nozawa, T. Nakamura, K. Tsukamoto, K. Yamamoto, Vortex magnetic structure in framboidal magnetite reveals existence of water droplets in an ancient asteroid, Nature Communications, 4 (2013) 2649. doi: 10.1038/ncomms3649.

隕石中に存在しているオリビン粒子の表面ナノトポグラフィー

隕石のマトリックス中に存在しているオリビン結晶の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)と原子間力顕微鏡(AFM)で観察することで、成長環境を反映したステップを捉えることに成功しました。46億年昔に生成した結晶であっても、分子レベルの高さのステップが保存されていることを示しました。ステップパターンは、このオリビン結晶が0.1-1 K/s で冷却する気相からの凝縮によって生成したことを示していました。

参考文献

  • J. Nozawa, K. Tsukamoto, H. Kobatake, J. Yamada, H. Satoh, K. Nagashima, H. Miura, Y. Kimura, AFM study on surface nanotopography of matrix olivines in Allende carbonaceous chondrite, Icarus, 204 (2009) 681-686.

カルビン結晶の生成

放射光照射でカルビン結晶が成長

非晶質カーボン薄膜に放射光を照射することで、一次元直鎖の構造を持つ炭素の同素体であるカルビンが生成することを見出した。 カルビンはsp混成軌道とそこに2個のπ電子が共鳴した化学結合からなっており、金属と同等かそれ以上の電気伝導性が期待されている物質である。 その為、カーボンナノチューブに続くブレークスルーが期待されるが、その生成は難しく決まった合成法は確立していない為に物性など未知の部分が多い物質です。

参考文献

  • Y. Kimura, C. Kaito, Possible Driving Force behind Formation of Cosmic Carbyne Crystals, The Astrophysical Journal Letters, 658 (2008) L83-86.
  • Y. Kimura, C. Kaito, K. Hanamoto, M. Sasaki, S. Kimura, T. Nakada, Y. Saito, Y. Nakayama, Growth Process of Carbyne Crystal by Synchrotron Irradiation, Carbon, 40 (2002) 1043-1050.

機能性粒子の生成

酸化亜鉛ナノ粒子の生成

プラズマ発生用の極板を工夫する事で、成長中のナノ粒子に金属元素をドープすることができます。 日焼け止めや紫外線カット材料に使われる酸化亜鉛微粒子にタングステンをドープする事で、幅広い波長領域を吸収する機能性微粒子を生成しました。

参考文献

  • C. Kaito, Y. Kinuta, H. Suzuki, S. Adachi, A. Kumamoto, Y. Saito, Y. Kimura, Morphological Alteration and Structure on ZnO Particles Produced in Electric Field, Journal of the Physical Society of Japan, 77 (2008) 094708-1 – 094708-4.
  • 北海道大学
  • 北海道大学 低温科学研究所