冬季の北海道には、ほぼ毎日のように気温が -10℃ 以下まで下がる地域や、頻度は低いものの局所的に -30℃ 以下にまで気温が低下する地点が数多く存在しています。 本研究では、北海道各地の気象庁AMeDAS観測地点における1978〜2025年1-2月の地上気象データと、国土地理院の数値標高モデル(10mメッシュ)を用い、一晩あたりの気温低下量の地域特性や観測地点周辺の地形との関係性を調べました。
気温統計量の分布
最初に、統計期間における日最低気温の平均値(図1)と日最低気温の極値(図2)の分布図を示します。
道東地域で最低気温の平均値が低い一方で、極低温な最低気温が記録される地点は道北地域に集中していることが分かります。
また、道南地域や沿岸の地点では温度の低下が比較的少ないことも分かります。
最低気温の平均値が低い上位3地点は、陸別(-19.2℃)、占冠(-17.8℃)、糠内(-17.7℃)。
一方、最も低い日最低気温が記録された上位3地点は、江丹別(-38.1℃)、歌登(-37.9℃)、幌加内(-37.6℃)でした。
図 1. 日最低気温の平均値の分布
図 2. 日最低気温の極値の分布
次に、夜間(一晩あたり)の気温低下量(16:00と翌 7:00の気温差)の平均値(図3)と極値(図4)の分布図を下に示します。 夜間の気温低下量についてもその平均値は道東地域で大きい傾向が見られますが、極値の大きな地点の分布はあまり地域差がなく、内陸(盆地など)に散在することが分かります。 夜間気温低下量の平均値の絶対値が大きな上位3地点は、陸別(-12℃)、糠内(-11.1℃)、足寄(-11.1℃)。 一方、一晩で最も大きな気温低下量が観測された上位3地点は、占冠(-28.4℃)、歌登(-25.9℃)、江丹別(-25.8℃)でした。
図 3. 夜間気温低下量の平均値の分布
図 4. 夜間気温低下量の極値の分布
気温低下量を決める要因
このような気温低下量の分布が生じる原因を調べたところ、平均値については、各観測地点における平均日照時間と晴天夜間の平均風速でおおよそ説明されることが分かりました(図5)。
つまり、「十勝晴れ」と言われるように、冬季であっても晴れることが多い道東地域において、かつ地形などの影響で晴天夜間の風速が弱まることが多い地点では、放射冷却が強まる条件がしばしば発生するため、経常的に大きな気温低下が起こります。
一方、季節風の影響で(日照時間が短く風が強い)荒天になることの多い日本海側の地域では、そうした条件が整う日が少ないため、気温低下量は平均的に小さくなります。
図 5. 夜間気温低下量の平均値と平均日照時間(sd)および晴天夜間の平均風速(usd10)との関係
一方、夜間気温低下量の極値は、観測地点の周囲のローカルな地形の形態や、地形内における観測地点の相対的な位置などに支配されることが分かりました。 一例として、道東地域と日高地方の代表的な20地点について、放射冷却が卓越する夜間の気温低下量と地形因子の関係を図6に示します。 図の横軸の Rav は、観測地点の周囲地形の投影面積と地形内大気の容積との比であり、この値が大きいほど、放射冷却によって内部の大気全体を冷やしやすい地形であることを表す指標です。 図より、地形の深さによって3つのグループに分かれますが、いずれも Rav が大きい(投影面積が大きく容積が小さい)地形にある地点ほど、夜間気温低下量が大きくなる傾向があります。
図 6. 日高・道東地域における、放射冷却の卓越する夜間における気温低下量と地形因子(Rav)との関係 (ただし、din は地形の深さ)
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