研究内容 当研究グループでは、湖沼や森林土壌などの自然環境中の微生物を主要な研究対象とし、複数の手法を組み合わせての解析を進めています。
研究全体イメージ
  1. 寒冷圏生態系の微生物群集と物質循環

    脆弱な寒冷圏生態系は気候変動に対する鋭敏なセンサーです。その鍵となる微生物を情報学や分子生態学的アプローチによって研究し、基礎研究および地球環境保全に資する新たな研究の芽を探し育みます。
    特に酸素が無い嫌気環境に独自な微生物生態系に着目しており、様々な環境で野外調査を展開しています。


  2. 硫黄循環システムと微生物群集の共進化

    私たちは水界の硫黄循環システムと微生物群集の共進化の解明を目指しています。
    硫黄代謝にかかわるタンパク質の機能や起源を探るのみならず、硫黄循環を担う微生物の相互作用が地球の酸化−還元、温度、光条件等の変化でいかに変遷して来たかを、フィールド調査、情報学、培養、生化学、構造生物学などによって研究しています。


  3. 環境微生物の分離培養と大量培養

    自然界に生息する微生物の未知なる生理生態を解明するためには、実験室における培養が重要です。私たちは様々な環境から新しい微生物を分離・培養してその生理生化学的な特徴を解明することで、微生物に名前を与えています(新しい学名の提案)。
    私たちは分離・培養に独自な培養方法をさらに改変して、大量培養に重点的に取り組んでいます。培養細胞を使って様々な実験研究を行うことで、情報に基づく理論だけでは到達できない新しい研究を展開します。


  4. 環境微生物の代謝メカニズム

    自然環境中における微生物の生き様を理解するために、環境サンプルのDNAとRNA(メタゲノムとメタトランスクリプトーム)の情報を解析しています。しかし、その情報を正しく解釈するためには情報基盤の充実が必要です。
    私たちは実験室で培養した微生物の遺伝子発現から代謝メカニズムを研究し、メタゲノムやメタトランスクリプトームから微生物の生き様を理解することに挑戦しています。


  5. 環境微生物のタンパク質の未知機能解明

    環境微生物のゲノムがコードする半数以上のタンパク質の機能は未知です。私たちはこのブラックボックスに、情報学、生化学、構造生物学を駆使して挑戦しています。
    特にエネルギー代謝や炭酸固定に関わるタンパク質に着目して、その立体構造、機能そして進化の歴史を解明することで微生物の生理・生態・進化を読み解きます。


  6. 始原的なエネルギー代謝と進化

    エネルギー代謝(呼吸、発酵、光合成)は、生命の進化を理解する鍵です。
    私たちは始原的なエネルギー代謝(硫酸還元、硫黄酸化、硫黄不均化、メタン生成、発酵など)を推進するタンパク質の研究を通じて、初期の微生物のエネルギー代謝メカニズムやその進化を研究しています。