北大低温研 大気海洋相互作用分野

セミナー案内


2010年度・極域セミナー

日時:2011年 1月26日(水) 15:00-17:00
場所:低温研 研究棟2F 会議室
発表者:C.C. Bajish(D1)
題目:Variability in the Sea Ice patterns in the Southern Ocean as revealed by a Coupled Model
要旨:
The sea ice variability in the southern ocean has been studied using an coupled ocean-ice-atmosphere model. The study attempts to 1) understand the inter-annual and decadal variability in the sea ice extend and thickness 2) to what extend does the regional climate will affect the production on Antarctic Intermediate water mass. The mean sea ice edge of the model during the winter is almost comparable with the satellite data. Inter-annual variability in the sea ice concentration could also be observed from the model data.
日時:2010年 11月24日(水) 15:00-17:00
場所:低温研 研究棟2F 会議室
発表者:谷口 央(M1)
題目:(論文紹介)
Screen, James A, Gillett, Nathan P, Stevens, David P, Marshall, Gareth J, Roscoe, and Howard K (American Meteorological Society,Vol.22, doi:10.1175/2008JCLI2416.1,2009) The Role of Eddies in Southern Ocean Temperature Response to the Southern Annular Mode
要旨:
 南半球の温帯域において大気変動を引き起こしているsouthern annular mode(SAM)は、近年の南半球での偏西風の風力強化と遷移によって、強い正のアノマリーを示しており、それに伴う南極海の温暖化が指摘されている(Gille 2008; Aoki etal.,2003; Alory et al.,2007)。しかし、SAMの変動から南極海の水温変化に至るプロセスは、主要な説があるものの未だに明らかにされていない。そこで、本研究では南極海の温暖化がSAMに対する渦運動の応答に起因するという仮説(Meredith and Hogg 2006; Hogg et al.2007)のもと、全球の渦分析モデルを用いて南極海の温暖化を検証した。そして最終的に、SAMの変動から水温変化が生じる一連のプロセスにおいて渦運動と水温の関係を、海洋モデルを用いて明らかにすることを目的としている。
 海洋モデルはOcean Circulation Climate Advance Model(OCCAM)を用い、期間は1988-2004年の20年間とした 。中規模渦の影響をより正確に把握できるように水平解像度が1o、1/4o、1/12oと解像度の異なる3種類のモデルを使用した。全ての解像度のモデルで流速の初期値は0とし、その他の初期値はWorld Ocean Circulation Experiment climatological values (Gouretski and Jancke 1996)に設定した。また、大気場の値としてNational Centers for Environmental Prediction-National Center for Atmospheric Research(NCEP-NCAR)の6時間間隔の再解析データを用いた。渦分析が可能な解像度である1/4o、1/12oのモデルでは(1)式よりEKEを算出した。流速は5日平均を用い、より正確にエクマン輸送による流速を得るために深度8 mの値を用いた。参考データとして衛星のTOPEX/PoseidonとJasonから1994-2006年の海面高度データを取得し、EKEを算出した。海表面水温(SST)はHadley Centre Global Sea Ice and Sea Surface Temperature (HadISST)からも取得した。SAMとのラグ関係を定量化するためのSAM index をNCEP-NCARから取得した。期間は1982-2006年である。
 衛星データと高解像度モデルからSAMが正のアノマリーを示した2-3年後に渦運動の活発化が顕著となった。南大洋の高緯度域における渦運動に伴うSSTの初期応答は全モデルにおいて、寒冷化であった。SSTの寒冷化が渦のパラメータがない低解像度モデルにおいても顕著となったことから、SSTの初期応答に渦運動は関係ないことが示された。長期スケールでの渦運動に伴うSSTの応答は温暖化であり、初期応答の寒冷化よりも規模が大きく長期にわたって続いていた。この温暖化が高解像度のモデルでしか確認できなかったことから、これは中規模渦の渦運動の活発化に伴う極方向への熱輸送によってもたらされたと考えられる。渦運動の活発化による水温の鉛直的な影響は、混合層において最も顕著となっていた。しかし、渦運動の活発化に伴う鉛直方向の水温の温暖化は、低解像度のモデルではみられなかったことから、一般的に気候シミュレーションに用いられている低解像度のモデルは、SAMに対する南大洋の水温変化を正確に捉えることはできないと考えられる。
日時:2010年 10月13日(水) 15:00-17:00
場所:低温研 研究棟2F 会議室
発表者:青木 茂(准教授)
題目:ウェッデル循環東部における海洋深層の水塊構造とその時間変化
要旨:
 ウェッデル海は、全球子午面循環のなかで重要な役割をはたす南極底層水の主要な生産域として重要である。近年、ウェッデル海の深・底層水についてはその性質が変化していることがわかりつつあり、子午面循環を通じた全球的な影響からもその変動の実態を明らかにすることが急務となっているが、ウェッデル海東部の影響はほとんど知られていない。
 2000年代以降、JAREと連携した海鷹丸による海洋観測や日本とオーストラリアの共同観測によってウェッデル海東部の海洋深層の構造が明らかになってきた。ケープダンレイ沖で非常に強い斜面下降流が観測され、新たな底層水の形成が見出された。新しい底層水は西に流れ、昭和基地沖辺りでウェッデル海西方起源の古い底層水と混合している。
 低温研はJAREと連携して、昭和基地北方4500m深の海底に設置した海底圧力計と同時に水温の観測を実施してきている。2005年から2010年までの水温記録をみると、増減はあるものの、ほぼ継続して水温が上昇していることが見出された。変動の時間スケールは現時点では明らかではないが、こうした変動の存在はこの海域における海水特性変動のモニタリングが、全球規模の底層水変動・ 子午面循環変動といった観点からも重要な意味を持つことを示している。
日時:2010年10月06日(水) 15:00-17:00
場所:低温研 研究棟2F 会議室
発表者:豊田 威信(助教)
題目:ALOS/PALSARを用いたオホーツク海および北極海の海氷の氷厚分布推定
要旨:
海氷域の広域の氷厚分布は気候変動にとって重要なパラメータであり、長期のモニタリングが必要とされている。このためには衛星による氷厚分布推定が有効であり、厚い氷に対しては海氷のFreeboardを衛星高度計から見積もって氷厚分布を求める手法、薄い氷に対しては受動型マイクロ波から推定する手法が確立されてきた。しかしながら、その中間の厚さの氷が卓越する季節海氷域では今なお解決すべき課題となっている。
そこでここ数年、L-band SAR(ALOS/PALSAR)データを用いて氷厚を推定する可能性を探っている。これは季節海氷域における氷厚発達は力学的なrafting/ridging過程が本質であるため、変形過程に伴う表面の凹凸の度合いが氷厚分布の良い指標となるという想定に基づく。セミナーでは、まずこの想定の妥当性を南極海やオホーツク海における現場観測の結果から示し、次に検証観測から得られたSARから氷厚への回帰式を用いて氷厚分布の年々変動や季節内変動を提示して、その適用可能性について熱力学的な成長量や海氷の漂流分布変動と比較することにより吟味する。また、グリーンランド北方のリンカーン海における厚い海氷域(氷厚~5m)で実施された現場観測データを基に、この手法の北極多年氷域への適用可能性についても吟味した。結果として、オホーツク海、北極海の両海域においてL-band SARは氷厚分布推定の有用な手段となりうることが示唆された。
日時:2010年 6月16日(水) 15:00-17:00
場所:低温研 研究棟2F 会議室
発表者:嶋田 啓資(PD)
要旨:
オーストラリア-南極海盆の底層には主にロス海及びアデリーランド沖で形成された 底層水が混合して形成された底層水が分布している。近年の研究によりこの底層水が ここ40年ほど変化しつつあることが指摘されており(Aoki et al., 2005; Rintoul, 2007)、WOCE観測線SR03(95年1~2月)、I09(95年1月)、I08(94年12月)及びこれらの 観測から6から12年後に行われたリピート観測のデータより海盆全体の変化を調べた ところ平均で0.0314 (deg./10year)/ 0.249928 (W/m^2)の高温化、-0.0028 (/10year)/36.3 (gt/year)の低塩分化が確認された。塩分に関しては海盆全域で低塩 分化傾向にあり、これは底層水形成域やその近傍で指摘されている氷河・棚氷の底面 融解促進傾向(e.g. Zwally et al., 2005; Jacobs et al., 2002 )から示唆される様 に、供給される底層水の低塩分化によって説明される。一方、水温に関しては海盆全 域を通して高温化傾向が支配的であるのに対し、アデリーランド沖のみで局所的に低 温化傾向にある。この傾向を引き起こす要因としてロス海から供給される相対的に高 温・高塩分な底層水の減少によって底層水の組成が変化した可能性が挙げられる。そ こでアデリーランドからロス海にかけてのCTDデータ(World Ocean Database 2009)を 用いて期待される熱・塩分の水平移流と鉛直拡散のバランスと水温と塩分の変化傾向 からロス海から供給される底層水の減少傾向との妥当性を検証した。鉛直拡散係数な どの不確定要素はあるが、ロス海から供給される底層水の減少傾向を支持する結果を 示し、この傾向がアデリーランド沖のみで局所的にみられる低温化傾向を説明する要 因であると期待される。
日時:2010年 6月02日(水) 13:00-15:00
場所:低温研 研究棟2F 会議室
発表者:江淵 直人(教授)
題目:宗谷海峡域の潮流の季節変化について
要旨:
宗谷海峡域に設置した海洋レーダおよびADCPの観測データを用いて,この海域の潮流の季節変化について調べた.オホーツク海のほとんどの海域で日周潮が卓越するが,宗谷海峡付近の K1,O1 分潮の振幅は,大きな季節変化を示すことが明らかとなった.海洋レーダの表面流速データから,季節変動の様子は,場所によって大きく異なり,オホーツク海の宗谷暖流域(陸棚斜面上)では,夏にK1,O1 分潮の振幅が大きく,冬に小さい.それに対して,海峡内部から日本海側は,夏に小さく,冬に小さい,という季節変化を示した.宗谷海峡内に設置した ADCP のデータにも,表層(約 20 m 以浅)では同様の季節変動を示したが,それ以深では,振幅の季節変化はほとんど見られなかった.また,稚内,紋別,網走の沿岸潮位には,日周潮成分の振幅の季節変化は見られなかった.これらの解析結果から,宗谷暖流域の潮流成分の季節変化のメカニズムについて考えたい.


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