北大低温研 大気海洋相互作用分野
セミナー案内
2009年度・極域セミナー |
日時:2010年1月22日(金) 15:00-17:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者:石井 大樹(M2) 題目:融解初期における海氷の構造特性の変化 要旨: 季節海氷域の融解過程は、氷厚や密接度の減少など、目に見える形で進行する外側からの融解と内側から構造を弱化させていく内部の融解が共に進行する。過去の研究の多くは、アイスアルベドフィードバックに代表される前者の過程に注目されてきたが、後者の過程については観測方法などの技術的な制約があり研究例が少ない。Johnston(2006)は、海氷の構造が融解初期に最も弱化が進み、その際、液体ブラインの空隙が占める割合(ブライン体積比)が急激に増加することを示唆している。この空隙の増加に関係する内部融解に関して、従来、透過する日射による内部昇温によって表面以下で融解が起きるとされてきたが、阿部 (修士論文2007)は、温度プロファイルに伴う伝導熱フラックスが蓄積する箇所で融解が起きることを示唆しており、日射の吸収がほとんどない積雪に覆われた海氷では、熱伝導フラックスの効果がより重要だと予想される。よって、融解初期の内部構造の時間変化を理解するには、温度プロファイルの変化に伴う伝導熱フラックスの蓄積の効果を定量的に調べることが重要である。特に季節海氷域の融解初期においては、日中の短波放射や気温の増加が開始するので、日変化も考慮する必要がある。本研究は、融解初期における温度プロファイルの変化に伴う海氷の構造特性の応答について観測および室内実験から調べることを目的とする。 北海道サロマ湖で2009年2月20日(6時~18時半)に海氷コアの採取と熱フラックスの観測を実施した。その結果、裸氷においては、主に透過する短波放射フラックスが内部での熱収支において支配的であり、従来の研究を支持する結果であった。一方、積雪に覆われた海氷では、 積雪下の海氷上層(0-5cm)で、積雪からの伝導熱フラックスの寄与もあり、主に伝導熱フラックスの蓄積で熱収支が余剰となり、 それに伴いδ18Oや結晶粒の変化が融解の兆候を示した。これらの結果から、海氷内部の熱収支において、積雪に覆われた実際の海氷では確かに温度プロファイルの変化が重要な役割をしていることが示された。 実験では温度プロファイルの効果を詳細に調べるために、直径38㎝×深さ80㎝の実験タンクに海水を入れ、温度プロファイルを熱電対で記録しながら-18℃の室温で海氷を12㎝まで静的に成長させた。その後、室温を+5℃に上げ4時間毎に海氷コアを切り出し、その塩分/密度を測定し、鉛直方向と水平方向の薄片/厚片解析をした。その結果、温度プロファイルの変化に伴う伝導熱フラックスの蓄積量が大きい個所で、空隙が発達し、海氷の強度が顕著に減少する傾向を示した。すなわち、表面温度の上昇に伴って温度プロファイルが変化する中、伝導熱フラックスが蓄積する箇所が生じて、内部融解が進み構造の弱化が進行することが示された。 |
日時:2010年1月15日(金) 15:00-17:00 場所:低温研 研究棟2F 講義室 発表者:金田 麻理子(M2) 題目:ロス海沿岸域における海洋長期変動と淡水収支の関係 要旨: 南極大陸沿岸域では海氷生成の際塩分が吐き出され塩分の高い重い水が作られている。この冷たく塩分の高い水によって世界で最も重い南極底層水が形成される。南極底層水の沈み込みによって海洋深層循環が駆動される。ロス海は南極沿岸で海氷生産量が最も多い海域であり(Tamura et al., 2008)、南極底層水の主たる起源の一つとなっている。 南極底層水は、南極沿岸の大陸棚の上の低温・高塩分の重たい陸棚水(Shelf Water)と、北大西洋起源の高塩分の深層水が混合し、海底斜面に沿って沈み込むことによって形成される。本研究の対象は陸棚水であり、中でもHigh Salinity Shelf Water (HSSW)は海氷生成の際排出されるブラインによって高塩になった陸棚水である。 ロス海の陸棚水に関する先行研究において、40年間にわたるロス海での海洋観測から陸棚水の塩分が低下していることが分かった(Jacobs et al., 2002)。低塩化の原因として降水量の増加、海氷生産量の減少、棚氷・氷床の融解が考えられ、低塩化の割合と比較したところ、棚氷・氷床の融解量の増加が低塩化の原因である可能性が高いと示唆された。 しかし、塩分変化傾向の空間的な構造は明らかではなく、そうした空間的な相違に起因する変化量の見積もりにおける空間的誤差は明確ではない。また、降水量の増加、海氷生産量の減少、棚氷・氷床の融解の増加の各推定値の精度には限界があり、誤差が大きいことが問題である。そこで、ロス海の陸棚水の塩分はどのように低下しているのかロス海の海洋変動の実態を定量的に明らかにすることを目的とした。そして、淡水収支に関する最新の研究成果の見積もりを取り入れ陸棚水の低塩化の原因を明らかにした。 2005年に行った開洋丸による最新の海洋観測のデータを中心に解析を行った。また淡水収支変化と塩分低下の原因の関連を調べるため、2005年の海洋観測で採取した海水を分析し酸素安定同位体比(δ18O)の解析も行った。また、経年変動を調べるために、Southern Ocean Atlas、World Ocean Databaseのデータも用いた。淡水収支について、海氷生産量はTamura et al. (2008)、降雪量はMonaghan et al. (2006)、氷床変化はChen et al. (2009)による見積もりをそれぞれ使用した。 2005年の開洋丸による最新の海洋観測によると、ロス棚氷に沿った東西方向の塩分の分布は、ポリニアのある西の方が塩分が高かった。大陸棚上の10地点において塩分の経年変化を調べたところ、すべての場所において低塩化が見られ、空間的・鉛直方向に変化傾向の違いが見られた。ロス棚氷に沿った地点での塩分変化傾向は、上層では東の方が割合が大きく、下層では西の方が大きかった。淡水増加量に換算したところ24.59 Gt yr-1であった。 淡水収支変化と低塩化の割合を比較したところ、降水量の増加量も大陸棚上では小さかった。海氷生産量の経年変化については棚氷分離の突発的な影響が見られたが、大陸棚全体で長期的に見ると影響が小さかった。一方、西南極の棚氷の融解の増加量は-110.1 Gt yr-1であった。これらから、棚氷の融解水がロス海に流入し低塩化が起こった可能性が考えられる。 δ18Oの経年変化から、すべての水塊において塩分は低下しδ18Oは軽くなっていた。また、塩分とδ18Oの変化傾向を塩分0まで外挿したところ、LSSWは塩分の経年変化は小さかったが、δ18Oの変化は大きかった。これは遠方の棚氷の融解水とCDWとの混合比によって決まっていると考えられる。また、 HSSWは低い値の淡水成分の影響を受けていると考えられた。その理由として、ローカルな陸氷の融解水が混合したこと、または生成過程でLSSWに海氷生産量の減少が加わったことが挙げられる。 |
日時:2009年12月 9日(水) 14:00-17:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者:青木 茂(准教授) 題目:南極海の酸素安定同位体比分析で何が分かるのか? 要旨: 南極海においては、水温は結氷点に近いため、密度が決まる上で塩分が非常に重要になる。海水の塩分を変化させる要因としては、水塊間の混合に加えて、主として、南極氷床の融解、降雪、海氷生成によるブライン排出の3つの要素が考えられる。しかしながら、塩分だけからでは、その変化の原因を特定することはできない。酸素安定同位体比δ18Oは、こうした淡水分の起源推定に有力である。δ18Oデータを蓄積して海水の塩分決定過程を調べ、詳細な水塊分析に資するとともに、将来にわたる気候変動指標のベースラインを定めることを目的として、2005年から南極沿岸域における資料の収集分析を開始した。 本研究では、起源淡水のδ18Oや、外洋・陸棚上の水塊のδ18Oを調べることで、塩分の 決定過程とその地域的な変化の要因について考察する。沖側の冬季水は、周極 深層水に降水(雪)が混合したとするとほぼ説明できる。沿岸表層におけるδ 18O-塩分の関係は、海域によらず、ほぼ同一の融解―凍結線上に分布してい る。海域によって、陸氷起源の影響を受けたと考えられる水塊がみられ、顕著 な棚氷や氷河の存在と定性的には整合していた。 |
日時:2009年11月25日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者:豊田 威信(助教) 題目:南極域海氷上の積雪の特性 要旨: 海氷上の積雪は様々な点で地上の積雪には見られない特性を持つ。まず、積雪―海氷相互作用により一部が海氷に変質すること。また、これに伴い雪粒子の変質が大きいこと。その他、海氷の移動に伴い積雪中に含まれる物質を保持し運搬することなどである。海氷の立場から見れば積雪の熱伝導係数は海氷に比べて約10分の1であるため、同じ気象条件で成長速度が抑制される働きがある。また、複雑な形態をもつ積雪は衛星から海氷の特性を知る一つの障壁となっているとも言える。このように、海氷の研究において積雪の特性を把握することは重要であるものの、南極域での観測の歴史は20年に満たずまだ情報が不足している段階にある。 発表者はウェッデル海(2006年)と東南極海(2007年)の晩冬期に観測航海に参加する機会を得たので、観測結果をもとに上に述べた積雪の特性を定量的に見積もることを試みた。積雪そのものの特性の他に、海氷との相互作用という観点から 1)積雪から海氷への変質過程、2)積雪の熱伝導係数の見積もりと熱伝導フラックスに及ぼす影響、3)海氷の表面凹凸が積雪表面の凹凸や抵抗係数に及ぼす影響、4)衛星から積雪深や海氷厚を推定する可能性、に焦点をあてて解析を行った。その結果、ウェッデル海では一年氷と二年氷の積雪特性の違い、東南極海では伝導熱フラックスや表面形態の特徴などが明らかになった。 |
日時:2009年10月21日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者: Guy Williams (Post Doctoral Fellow) 題目:Late winter oceanography beneath East Antarctic sea ice during SIPEX 要旨: 1. Introduction: The Sea Ice Physics and Ecosystem eXperiment (SIPEX) was one of Australia's major contributions to the International Polar Year (IPY). The multi-disciplinary expedition explored the seasonal sea ice zone over the East Antarctic continental shelf and slope between 110?130?E, September - October 2007. The goal of SIPEX was to investigate relationships between the physical sea ice environment and the structure of Southern Ocean ecosystems, and included an oceanographic program whose objectives were: a) to observe the water mass properties in the upper ocean (<1000m) using a ‘through-ice’ winch and Conductivity-Temperature-Depth system. In particular to examine the structure of the winter mixed layer. b) to measure the ocean currents in the surface layer (<150m) beneath the sea ice using a ‘through-ice’ Acoustic Doppler Current Profiler, and investigate the role of ocean currents on ice drift. 2. Data: The ‘through-ice’ CTD system consisted of an FSI CTD lowered by a winch system using a tripod and 1000m of spectra rope driven by a portable generator. The FSI was protected by a fiberglass casing and kept as warm as possible before deployments using an insulating shield. The ocean current/ice drift system consisted of an RDI 150 kHz ADCP and a Furano GPS Compass mounted on a custom-built frame. The ADCP was attached to a retractable arm that extended 1.5 m through a 35 cm hole in the ice. A rechargeable 12 Volt battery powered the system and both sets of data were sent back to the ship via radio modem. 3. Results: Due problems related to the protective chassis, the FSI CTD lacked sufficient accuracy in conductivity to make precise water mass comparisons. Nonetheless it did collect useful data on the depth of the winter mixed layer between the Antarctic Surface Water and Modified Circumpolar Deep Water (MCDW) over the Antarctic Slope Front region in winter. Of great significance was the detection of MCDW on the continental shelf through the fast-ice in thevicinity of the Totten Glacier, which has been recently reported to be in negative mass balance. Simultaneous current and ice drift data were measured at 9 stations, including three 24 hour deployments in the pack ice. Ocean currents were determined by removing the ice drift determined by the GPS compass. There was very little backscatter in the water column at this time of year and using 8m bins, the maximum range varied between 50 and 100m, depending on the daily migration of zooplankton. Strong currents (up to 50 cm s-1) were found to be vertically homogenous and varied on timescales greater than a day. The currents beneath the fast ice on the continental shelf were generally weaker. 4. Discussion: Traditionally the wind is believed to be the dominant force in sea ice drift dynamics. However our results show that on daily timescales, the ocean currents often correlate more strongly with ice drift than the wind. This may be due to the additional drag force under heavily deformed ice. The correlation between wind and ice drift improved if the wind was rotated by 30-40 degrees clockwise. Overall this pilot study successfully demonstrated two ‘through-ice’ hydrographic systems in polar conditions. Future work will include improving the water mass measurements and developing along-term deployment that is solar-powered and relays data back via satellite. |
日時:2009年10月14日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者: 江淵 直人(低温研・大気海洋) 題目:宗谷暖流の短周期変動について (III) 要旨: Ebuchi et al (JO, 2009) は,短波海洋レーダや海底設置型 ADCP などを用いた観測によって,宗谷暖流には非常に大きな季節変動(1年周期)に加えて,10-15日の周期を持つ短周期の変動が存在することを明らかにし,その発生機構として,宗谷海峡域周辺の海上風によって励起された陸棚波によるメカニズムを提案した.今回は,この宗谷暖流の短周期変動がどのようにして伝搬するのかを,宗谷海峡域及び雄武-紋別沖域の2ヶ所の海洋レーダおよび時期は異なるが宗谷岬沖と浜頓別沖の2ヶ所に設置された ADCP のデータなどを用いて調べた結果について報告する. |
日時:2009年10月 7日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者: 嶋田 啓資(Post Doctoral Fellow) 題目:オーストラリア-南極海盆におけるアデリーランド底層水の変化 要旨: 近年の研究により、オーストラリア-南極海盆の底層に分布するアデリーランド底層水がここ40年ほど低塩化・低密度化しつつあることが指摘されている(Aoki et al.,2005; Rintoul, 2007)。これらの研究ではアデリーランド底層水の源流域あるいは、海底の近傍における変化が示された一方、アデリーランド底層水変化の全体像は明らかにされていない。北太平洋で観測されている北太平洋底層水の暖水化にアデリーランド底層水の変化が関係している可能性が指摘されている(Kawano et al.,2006)ことから、全球規模の深層循環への影響を明らかにするためにもアデリーランド底層水の変化の全体像と、その原因を明らかにすることは重要な課題である。本研究ではアデリーランド底層水全体の変化及びその原因を明らかにすることを目的とし、オーストラリア-南極海盆を縦断する様に測線が設けられたWOCE(World OceanCirculation Experiment)観測線SR03、I09及びI08のデータ及びWOCEの観測から6から12年後に行われたリピート観測のデータを用いて解析を行った。 等密度面における水温、塩分の変化を調べた結果、SR03、I09及びI08の全測線においてアデリーランド底層水の指標とされる中立密度が28.27以上の層で低温化、低塩分化が顕著に見られた(塩分変化にして-0.002~0.016 psu)。これは、Aoki et al.(2005)及び Rintoul(2007)らが指摘したアデリーランド底層水の変化が全体に及んでいることを示唆するものであり、興味深い。等密度面における低温、低塩分化はアデリーランド底層水の様に上層が高温、高塩分でかつ重力的に安定な成層をしている場合(Rρ>1)、高温化あるいは低塩分化によってもたらされることが知られている(Bindoff and Mcdougall, 1994)。実際に各測線における中立密度28.27以深の層の平均値の差からは、アデリーランド底層水の源流域に近いSR03を除き高温化、低塩分化していることが示された(I09: +0.02℃、-0.003psu; I08: +0.07℃、-0.001psu)。SR03では低温化(-0.02℃)、低塩分化(-0.006psu)が示されたが、ここでは低塩分化の寄与が低温化の寄与に勝ったため等密度面上で低温、低塩分化というシグナルが現れたと考えられる。 塩分に関しては源流域の近傍で低塩分化が最も顕著であることから、アデリーランド底層水の源流の低塩分化がアデリーランド底層水全体の低塩分化の原因であると考えられる一方、水温に関しては源流域の近傍では低温化しているのに対し、現流域から遠ざかるほど高温化にシフトしている。底層水の流量の減少しあるいはオーストラリア-南極海盆におけるアデリーランド底層水の循環が鈍化していることが原因と考えればこの結果に矛盾しない。現在、このことを確認するために溶存酸素を含めて解析を進めている。 |
日時:2009年 9月 2日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者: Guy Williams (Post Doctoral Fellow) 題目:Physical-biological oceanography during BROKE-West (Jan.-Mar. 2006), along the Antarctic margin of the south-west Indian Ocean (30--80oE) 要旨: Hydrographic CTD and ADCP data were collected during the BROKE-West research voyage (January - March 2006) in the south-west Indian Ocean sector of the Antarctic margin. These data describe the large-scale circulation, water masses, fronts and summertime stratification in the surface layer over the continental shelf and slope region between 30 and 80oE that forms CCAMLR Statistical Area 58.4.2. The surface circulation matched the full-depth circulation and consisted of the eastward flowing southern Antarctic Circumpolar Current front to the north, and the westward flowing antarcticslope Current associated with the Antarctic Slope Front along thecontinental slope to the south. Two sub-polar gyres were detected south of the Southern Boundary of the Antarctic Circumpolar Current: the eastern Weddell Gyre in the Cosmonaut Sea (30--50oE) and the greater Prydz Bay Gyre in the Cooperation Sea (60--80oS). In the eastern Weddell Gyre, the seasonal mixed layer depths were shallower, warmer and fresher relative to the regions to the east which were deeper, cooler and more saline. This spatial variability is found to be strongly correlated to the large-scale pattern of sea ice melt/retreat in the months preceding the voyage and the accumulated wind stress thereafter. Areas of upwelling warm deep waters into the surface layer are presented from positive anomalies of potential temperature and nutrient concentrations (nitrate and silicate). These anomalies were strongest in the eastern Weddell Gyre in the vicinity of the Cosmonaut Polynya/Embayment, north of Cape Anne and near the Southern Boundary of the Antarctic Circumpolar Current in the eastern sector of the survey. The summertime stratification (seasonal mixed layer, seasonal pycnocline and Tmin layer) are discussed relative to the distributions of *chl a* and acoustically determined Antarctic Krill (*Euphausia* superba) densities. Elevated *chl a* concentrations were found in the surface layer of the marginal ice zone and it is proposed that these are retained south of the fast, narrow jet of enhanced Antarctic Slope Current on the upper continental slope. There is qualitative evidence of these maxima being subducted and transported north in the seasonal pycnocline in response to Ekman convergence from the easterly winds in this region. The seasonal mixed layer within the sub-polar gyres had relatively low *chl a*concentrations with sub-surface maxima in the seasonal pycnocline and the top of the Tmin layer. Surface concentrations increased once again north of the Southern Boundary in the north-east of the survey. Krill and *chl a*concentrations were both co-located and decoupled at different locations across the survey. There was no clear oceanographic boundary influencing the distribution of the krill surveyed, though further work is necessary to properly synthesize this and other biological patterns with the oceanographic processes, given the varying time and length scales and intrinsic sampling limitations. |
日時:2009年 7月 1日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者:飯島 裕司 (DC3) 題目:南大洋における海面水温の時空間変動に伴う大気場応答の研究 要旨: 過去の研究から、南大洋における海洋の中規模渦スケールにおいて、海上風速の空間分布と海面水温の空間分布が一致する様子が報告され、海洋の変動が大気場へ影響を与えていることが示唆されている。また、この海洋から大気への影響の大きさは、数値モデル研究から背景場の風速や海面水温の大きさに依存することが報告されている。しかし、観測データからこの背景場の影響の評価を行った研究は無い。そこで、2003-2006年の4年間の衛星観測に基づくデータセットを使用し、海洋の中規模渦スケールの海面水温と海上風速の関係の定量的評価と背景場の影響について調査した。 風速ベクトルの視線方向の海面水温勾配に対する風速の発散の割合(αd)と風速ベクトルに直行する方向の海面水温勾配に対する風速の渦度の割合(αc)から、この海面水温と海上風速の関係を評価した。その結果、αdとαcともに、海洋から大気へ影響を与えていることを示し、背景の風速が大きくなるにつれて、それぞれの値も大きな値を示した。これは、数値モデルと同じ結果であった。また、南極周極流フロント域別に見ると、低海面水温に特徴づけられる南極周極流フロント域の方が、暖かい海面水温に特徴づけられる南極周極流フロント域に比較して、αdとαcの値は、それぞれ大きな値を示した。この低水温上でαdとαcが大きくなる結果は、数値モデルの結果と反対の傾向であった。これについては、海流の強さやコリオリ力などの他の影響を含め議論する必要があると考えられる。以上の結果から、海面水温の空間分布が海上風速に与える影響の大きさは、背景場の風速の大きさや海面水温の大きさによって、依存するということが衛星観測データから明らかになった。 |
日時:2009年 6月17日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者:石井 大樹 (MC2) 題目:融解期における海氷の内部構造の変化について 要旨: 海氷は、融解期に短波放射および大気・海水からの熱吸収によって表面・底面・ 側面で融解が起こり、氷厚・密接度が次第に減少する。一方、こうした外面的な融解と同時に、内部からも融解が進み、海氷の弱化に寄与することが知られている。例えば、一般に南極海の海氷域では、融解期に海氷表面下約15cmの海氷内部にGap Layer と呼ばれる融解層が発達することが報告されている(Haas et al., 2001)。この形成要因については様々な過程が考えられるが、Ackley et al.(2008)は、融解期に生じる海氷上層の正の温度勾配に注目して、伝導熱が下向きに輸送されることでGap Layerが発達すると説明した。また、阿部(2007年修士論文)は、融解期のサロマ湖海氷内部の温度プロファイルから各層に蓄熱する熱量を見積もり、熱量が正の個所で空隙が発達していることを示した。 そこで本研究では、特に海氷の内部融解に注目して、その成因を明らかにすることを目的とする。春先は、温度の日変化が顕著になることを考慮し、第一段階として2009年2月(結氷期)と3月(融解期)にサロマ湖の海氷で日変化に注目した観測を行う計画を立てた。氷の状況により、3月の観測を中止したので、2月の観測データをもとに海氷表面および内部での熱収支を見積もり、日変化のふるまいを考察した。今後は、室内実験により研究を進めていく予定である。 |
日時:2009年 6月 3日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者:金田 麻理子 (MC2) 題目:ロス海沿岸域における海洋長期変動と淡水収支の関係 要旨: (研究背景) ロス海は海氷生産量が最も多く、海氷生成の際塩分が吐き出され塩分の高い重い水が作られている。この塩分の高い水によって世界で最も重い南極底層水が形成される。南極底層水の沈み込みによって海洋深層循環が駆動される。南極底層水は、南極沿岸の大陸棚の上の低温・高塩分の重たい陸棚水(Shelf Water)と、北大西洋起源の高塩分の深層水が混合し、海底斜面に沿って沈み込む ことによって形成される。本研究の対象は陸棚水であり、中でもHigh Salinity Shelf Waterは海氷生成の際排出されるブラインによって高塩になった陸棚水である。 ロス海の陸棚水に関する先行研究において、40年間にわたるロス海での海洋観測から陸棚水の塩分が低下していることが分かった(Jacobs et al., 2002)。低塩化の原因として降水量の増加、海氷生産量の減少、棚氷・氷床の融解が考えられ、低塩化の割合とオーダーエスティメーションを行った。比較したところ、棚氷・氷床の融解量の増加の不確定性が最も高く、低塩化の原因である可能性も高いと考えられた。また、CDW(周極深層水)が温暖化していることも分かった。このことから、温暖化したCDWが太平洋南東部の氷床を融解させ、その融解水がロス海に流入し低塩化が起こったことを示唆した。 (本研究の目的) 降水量の増加、海氷生産量の減少、棚氷・氷床の融解の各推定値の精度には限界があり、誤差が大きいことが問題である。現在では、各推定値に対して幾つかの新しいモデルが提出されている。2005年に行った最新の海洋観測を用いて、ロス海の陸棚水の塩分はさらに低下しているのか、CDWは温暖化しているのかロス海の海洋変動の実態を解明する。また各推定値の誤差を小さくし、精度のいい見積もりを取り入れ陸棚水の低塩化の原因を明らかにしていきたい。このとき酸素同位体比を用いることで、低塩化の原因の切り分けを行う。 (今後の予定) 研究するにあたって、氷河の底面融解速度を計算したRignot et al. (2002)、南極沿岸ポリニアでの海氷生産量のマッピングを行ったTamura et al. (2008)といった論文の結果に基づき、淡水収支の見積もりを改善する。また、海洋データを用いて海洋変動の解析を行う。中でも最新の南極海観測である開洋丸第9次南極海調査 (2005)で得られた最新の海洋データを中心に解析を行う。また淡水収支変化と塩分低下の原因の関連を調べるため、同航海で取得した酸素安定同位体比(δ18O)の分析と解析も行う。 |
日時:2009年 4月22日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 会議室 発表者:○江淵直人(北大低温研)・佐野 稔(稚内水試)・板東忠男(宗谷漁協) 題目:海洋レーダ観測データのミズダコ漁業への応用 要旨: 宗谷海峡域の海洋レーダによって観測された表層流速データのミズダコ漁業への応用について紹介する.この海域では,プラスチック製の樽を浮きとして,海底に向けてロープを垂らし,その先端に疑似餌等をくくりつけた仕掛けを用いる「たこいさり樽流し」と呼ばれる漁法が用いられている.この漁法では,海面に並べた樽の動きが非常に重要であり,表層流の予測が可能になれば操業計画に貢献できると思われる.そこで,対象海域の海洋レーダデータを解析し,季節変化する気候値の平均場と調和解析による潮流成分の和で簡便に表層流速を予測する手法を用いた.得られた結果と実際のミズダコ漁の操業・水揚げ等を比較した結果,非常によい一致が見られ,流速の予測が操業の適否を判断する材料として有効であることが示された。 |
to Home |