北大低温研 大気海洋相互作用分野
セミナー案内
2007年度・極域セミナー |
日時:2008年 1月16日(水) 15:00-18:00 場所:低温研 研究棟2F 講義室 発表者:飯島 裕司 題目:しらせ海上気象観測データを用いた110E線上における大気の海洋に対する応答 要旨: 近年の衛星観測は、その高解像度化によって、海洋のmeso-scaleやそれ以上の空間スケールでも海面水温と海上風速の分布が一致する構造が見られた。このメカニズムは、海面熱フラックスを通して大気境界層の安定性が変化し、大気境界層下部の運動量が変化すると考えられている。しかし、衛星観測では、海面における気象要素を観測することは、不可能である。さらに南大洋では、現場観測が限られている。 そこで、本研究では、110E線を定線観測している「しらせ」のデータに注目し、海面水温と海上風速、乱流熱フラックスおよび南極周極流フロントの関係を定量的に把握することを目的とする。110E線における海面水温の分布は、約48Sに位置する亜南極フロントの影響を大きく受け、維持・形成されている。大気の総観規模擾乱の影響の大小で場合分けをし、その影響が少ないと考えられる事例では、海面水温・東西風速・安定度(海面水温-気温)、乱流熱フラックス(潜熱+顕熱)の間に良い相関関係がみられた。これらの関係は、先の仮説を支持する有力な結果である。 |
日時:2007年12月 5日(水) 15:00-16:30 場所:低温研新棟2F N213 (水文気象セミナ-室) 発表者:関家 麻矢 (論文紹介) 出典:John C. Fyfe. 2006:"Southern Ocean Warming due to human influence.", Geophys. Res. Lett. Vol.33, L19701 要旨: 1950年代からの地球温暖化のほとんどは海洋においてのものであり,またこの温暖化により地球の海面は上昇してきたといえる。特に南大洋における温暖化は、地球の気候にとって危機的である。しかし、南大洋における詳細な分析は、観測の数が限られているためにあまり行われなかった。また、最近の気候モデル調査は海洋の温暖化は人間活動によるものだという考えを強めてきた。温暖化の原因を特定することは、重要な課題である。本研究では、気候モデル実験を用い南大洋の特に中深度での温暖化の原因を特定していくことを目指す。また、20世紀後半に起きた火山爆発からのクーリングによる補正効果などについても記述する。 |
日時:2007年10月31日(水) 15:00-18:00 場所:低温研新棟2F N213 (水文気象セミナ-室) 発表者:豊田 威信 題目:季節海氷域の氷厚分布推定 ~ALOS/PALSARは有効な手段となりうるか~ 要旨: 氷厚分布は海氷密接度分布と同様に海氷の基礎物理量であり、その空間分布や時間変動を監視することは、気候変動に伴う海氷量の変化を見積もる上で重要である。近年、氷厚の厚い北極の多年氷では衛星高度計を用いた手法などが確立されつつあるが、比較的氷厚の薄い季節海氷域ではこれらの手法が有効かどうかも定かではなく、現在でも南極の海氷量の増減に関しては知見が定まっていない。季節海氷域では表面の凹凸状況が一つの有効な手段と考えられる。2年前にオホーツク海で航空機搭載型Pi-SARと巡視船「そうや」を用いて検証観測を行った結果、L-band SARが氷厚推定の良い手段となりうる事が分かった。 そこで、今年2月に「そうや」とALOS/PALSARの検証観測を行う計画を立てた。残念ながら、天候不順のため同日観測は実現できなかったが、PALSAR画像をもとに若干の解析を試みたのでその結果を議論する。また、先日行われた南極観測でも氷厚分布は重要課題の一つであった。観測内容や結果、その他のトピックについてもいくつか紹介する予定。 |
日時:2007年6月27日(水) 15:00-18:00 場所:低温研320会議室 発表者:飯島 裕司 題目:南大洋における海面水温の時空間変動に伴う大気場応答の研究 ~しらせ海上気象データを用いて~ 要旨: 近年の衛星による時空間に高分解能での海面における観測は、特に西岸境界流域や南極周極流域における海洋の中規模擾乱の変動が大気へ影響をもたらすことを示した。(Nonaka and Xie 2003, Xie et al. 2004, Chelton et al. 2004,O'Neill et al. 2003 and 2005 etc.)。また、南半球における船舶観測を用いた海洋から大気への評価は、Tokinaga and Tanimoto 2005によってブラジル・マルビーナス海流域に注目して行われた。その結果は、静的安定度(海面水温 - 気温)が不安定になるとき(正)に乱流熱フラックスが多く大気へ供給され、大気境界層を不安定化させ、最終的に海上風が加速するというWallace et al. 1989の鉛直混合メカニズムを支持するものであった。しかし、南極周極流域においては、船舶観測がまったく無いために、衛星では観測することのできない気象要素を含めた研究は無い。そこで、本研究は、南大洋で定常観測を行っている「しらせ」の海上気象データを用いて、南極周極流フロント域における大気海洋間の応答を評価することが目的とし解析を行った。 その結果、Sub-Antarctic Front (SAF)域では、海面水温の南北勾配が大きく、海洋の亜表層の水温が鉛直一様なことから亜表層の影響を受けていると考えられる。この海面水温勾配上における短波長の変動に注目をして、海上気象要素のそれぞれに対する短波長の南北勾配の成分の関係には、海面水温・東西風速・静的安定度(海面水温-気温)、乱流熱フラックス(潜熱+顕熱)の間に良い相関関係がみられた。これらの関係は、Wallaceの仮説を支持する有力な結果である。 |
日時:2007年5月9日(水) 15:00-18:00 場所:低温研320会議室 発表者:青木 茂 題目:オーストラリア-南極海盆における低気圧性循環 - 西岸境界流と循環の流量について - 要旨: 日豪共同観測による船舶観測とJARE中層フロート観測から、オーストラリア-南極海盆における西岸境界流と循環全体の描像を得た。S-ADCPとL-ADCPから見積もったケルゲレン海台沖西岸境界流の流量(海台から100-150kmまで)は、両者とも良く一致し、全層で北向き60-70Svとなった。ただし、沖側150-200km付近には顕著な反流が捉えられている。また中層フロートをリファレンスとして求めた循環の南端の流量は西向き30-40Svと見積もられた。58S付近の境界流流量はSverdrup流量に近いが、より高緯度では大きすぎる。Topographic Sverdrup流量を考えることで、上記の現実的な見積もりに近づく。 |
日時:2007年4月25日(水) 15:00-18:00 場所:低温研320会議室 発表者:江淵 直人 題目:宗谷暖流の短周期変動について (II) 要旨: 短波海洋レーダや海底設置型 ADCP などを用いた観測によって,宗谷暖流の長期間にわたる連続的な流速変動の時系列が得られるようになった.その結果,宗谷暖流には非常に大きな季節変動(1年周期)に加えて,10-15日の周期を持つ短周期の変動が存在することが明らかとなった.昨年に引き続き,その短周期変動について,海洋レーダ,ADCPデータ,沿岸潮位データなどを用いて調べた結果について報告する.昨年は,日本海で卓越する長周期潮 Mf 潮(周期13.66日)との関連を中心に調べたが,その後の時系列の延長や解析の進展の結果,観測された宗谷暖流の短周期変動を Mf 潮だけで説明するのは難しいとの結論に達した.今回は,竹山(2002) や石川 (2007) で議論された,海上風によって励起された陸棚波による説明を試みる. |
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