日本海洋学会において、北海道大学低温科学研究所の大島慶一郎教授が「日本海洋学会賞」を受賞し、2015年3月23日(月)、東京海洋大学品川キャンパスにおいて、表彰式が行われました。
今回の受賞は、大島教授がこれまで取り組んできた、「海氷域の変動とその海洋循環に与える影響に関する研究」に対しておくられたものです。
----------------------------------------------------------------------------------------------------- 2015年度 日本海洋学会賞受賞候補者 推薦書 候補者: 大島 慶一郎(おおしま けいいちろう) (北海道大学・低温科学研究所) 受賞対象課題: 海氷域の変動とその海洋循環に与える影響に関する研究 推薦理由: 大島慶一郎会員は、オホーツク海、南極海、北極海など の極域、亜極域における海洋循環と海氷域の変動に関する研究を、 現場観測、衛星観測、資料解析、数値モデリングを巧みに組み合わ せることで行い、多くの新たな事実を明らかにしてきた。 大島会員は大学院から助手時代にかけて、宗谷暖流の順圧不安定 の研究を基に、傾斜する斜面上での海流の安定性について研究を 行った。その成果は高く評価され、本学会から「極域・亜極域の沿 岸流の変動の研究」で1996 年度岡田賞を受賞している。 助教授時代には、オホーツク海の海洋循環の研究に取り組み、ロ シアとの共同研究航海を主導した。その結果、ほぼ未知の状況にあっ た中深層水の流路・流量を含めオホーツク海の海洋循環を明らかに したほか、海氷生成、太平洋との海水交換、オホーツク海の温暖化 などの幅広い分野において、共同研究者とともに研究を進め、オホー ツク海の海洋学を著しく進展させた。 さらに近年、大島会員は、極域の海氷生成とその変動が海洋循環 に与える影響についての研究を大きく進展させた。まず、衛星観測 データと気象解析データによる熱収支計算をもとに、沿岸ポリニヤ 域における海氷生成量を全球の海氷域で見積もる手法を確立した。 そして、この方法を用いて、ロス海とケープダンレー沖のポリニヤ が南極域でそれぞれ1、2 番目の海氷生産量を持つ海域であること を明らかにし、特に後者が、これまで知られていたロス海、ウェッ デル海、アデリーランド沖に続く第4 の南極底層水の生成海域であ る可能性を示した。これら南極海における海氷生成量に関する研究 成果は、著名な教科書である「Descriptive Physical Oceanography: An Introduction」第6 版に1 ページにわたり記載されている。さ らに、上記の仮説を確かめるために集中観測を行い、実際にケープ ダンレー沖で第4 の底層水形成域を発見した。大島会員は、これ らの卓越した研究成果を挙げるとともに、多くの学生、若手研究者 の指導を行い、我が国の極域研究コミュニティの躍進に貢献した。 上記のように、大島会員は極域、亜極域における海洋循環、海氷 域の変動に関する研究を通して、海洋学の発展に大きな貢献をした と高く評価される。その功績は日本海洋学会賞にふさわしいものと 認められ、大島慶一郎会員を受賞候補者に推薦する。 (日本海洋学会長 日比谷紀之) -----------------------------------------------------------------------------------------------------