東南極しらせ氷河流域における3次元氷床数値モデリング

 しらせ氷河流域は、東南極(東経37-50°、南緯70-78°)に位置する集氷域で、 過去50年間にわたって日本の南極観測の舞台となってきました(図1)。流域に蓄積した氷は、 年間2000 mに達する速度で流れるしらせ氷河によって海に流し出されています。したがってこの 地域における氷床変動には、しらせ氷河の流動状態が大きな役割を果たしていると考えられます。 また内陸部には深層氷コア掘削が行われたドームふじ基地があり、過去の氷床変動およびしらせ 氷河の振る舞いがコアの解析に重要な情報となります。

 この研究プロジェクトでは、有限要素法を用いた3次元氷床数値モデルを開発し、しらせ氷河 流域における氷床変動を理解するための数値実験を行っています。氷の熱力学と動力学を結合 させた数値モデルは、観測することが難しい氷床内部や底面の温度および流動状態を、フィンランド で開発された有限要素法ソフトウェアElmerによって計算します(図2)。この地域で観測された 流動速度や涵養量のデータを利用して、過去と未来の氷床変動を再現、予測することがこの研究 の目的です。また現在進行中の南極観測プロジェクトと連携して、南極氷床と気候変動との関係 をより深く理解することを目指しています。このプロジェクトは、フィンランドCSC(IT Center for Science Ltd)、Thomas Zwinger氏との共同研究です。


図1 (a)しらせ氷河流域(赤線で囲った地域)
(b)しらせ氷河末端部の人工衛星写真。



図2 数値計算結果の一例。
氷床の表面、内部、底面における(a)流動速度および(b)温度分布を示す。



Member: 杉山慎Ralf GreveHakime Seddik
Thomas Zwinger(CSC, Finland)
Keyword: 南極、氷床、氷河、有限要素法、気候変動、数値実験
Contact: 杉山慎