山岳氷河における分氷嶺地形の形成メカニズム

 氷河の厚さや表面の起伏は、基盤の形状に加え、質量収支の分布と氷の流動特性によって決まります。複雑な基盤地形の上にどのような氷河が形成されるかという課題は、氷河変動を研究する上で、また掘削によって得られた氷コアを解釈する上で非常に重要です。このプロジェクトでは氷コアを掘削したアラスカの氷河を研究対象として、基盤地形と氷河表面形状、氷河内部の年層構造との関係解明に取り組んでいます。

 2008年5-6月、低温科学研究所を中心とする研究グループで、アラスカ・オーロラピークにおける氷コア掘削を行いました(図1)。掘削地の氷河表面形状は典型的なコル地形(鞍状の分水嶺)であるにも関わらず、その基盤地形は複雑な起伏を持っています(図2)。そのような基盤の上に現在観察されるような氷河が形成されたメカニズムを、数値実験によって明らかにすることを目指しています。数値実験には有限要素法を用いた2次元の氷河モデルを使用します(図3)。氷コアの解析から得られるデータと連携して、古気候の復元に貢献することも重要な目的のひとつです。オーロラピークでの氷コア掘削や観測の様子はこちらでご覧になれます。このプロジェクトは、総合地球環境学研究所、アラスカ大学および名古屋大学との共同研究です。


図1 アラスカ・オーロラピークの氷コア掘削地。



図2 掘削地における氷河表面と底面高度分布。



図3 数値計算結果の一例。凸状基盤の上に形成された氷河とその断面内の流動速度分布を示す。



Member: 杉山慎福田武博白岩孝行、的場澄人(環オホーツク)
佐々木央岳(環オホーツク)、岡本祥子(名古屋大学)
Daniel Solie (UAF, USA)
Keyword: 氷河、アラスカ、アイスレーダ、GPS、氷コア、数値実験、有限要素法
Contact: 杉山慎
Publications: Fukuda, T., S. Sugiyama, S., S. Matoba and T. Shiraiwa, Glacier flow measurement and radio-echo sounding at Aurora Peak, Alaska in 2008, Annals of Glaciology, 52(58), 138-142 (2011)