共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

低温域における偶数員長鎖n-アルカンの多形現象に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 阪大院理
研究代表者/職名 助教授
研究代表者/氏名 金子文俊

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

川口辰也 阪大院理 助手

2

坂下真実 産総研 主任研究員

3

古川義純 北大低温研

研究目的  偶数員n-アルカンは、炭素数が26以下と炭化水素鎖が短いものでは炭化水素骨格平面が平行にパッキングされるT//型副格子を形成するが、これより長いものでは通常O⊥副格子を形成する。そして通常、分子鎖がラメラ平面に傾斜した単斜晶の結晶構造を形成している。この単斜晶の構造に加えて、分子鎖がラメラ平面に対して垂直に配置された斜方晶の構造をもつ結晶が得られることがこれまでに明らかになっているが、この斜方晶の結晶構造が発生する条件はいまだに定まっていない。そこで、本研究において温度と圧力の観点から、この垂直型の構造が発生する条件を探った。
図1 n-hexatriacontane の粉末X解回折図形  
研究内容・成果   今回の圧力による結晶多形の相対的な安定性の変化、ならびに低温域の結晶成長への影響の二つの観点から実験を行い以下の結果を得た。
1. 圧力に関してKBrを圧力媒体として用いた実験では、1GPa程度の圧力を印加したとき、単斜晶より斜方晶への構造転移がみられることを確認した。赤外スペクトルでは、メチル変角振動バンドが斜方晶結晶の特徴である1377cm-1に比較的強めのシングレットの吸収を示し、粉末X線では同様に(00l)反射が炭化水素鎖の垂直型配置に相当する約48Åの長周期に対応する位置に出現した。
n-アルカンの自由エネルギーは、結晶格子の凝集エネルギーによる項と分子振動に由来する項に分かれている。斜方晶結晶の方が密度の高い結晶構造を持つが、以上の実験結果は、高圧になり凝集エネルギーが結晶の安定性に対して支配的になると、結晶の自由エネルギーは斜方晶で下がることが示唆している。
2. 圧力依存性の実験より、振動の自由エネルギーよりも格子エネルギーが支配的になる低温度域では、斜方晶系の結晶がより熱力学的に安定になり、優先的に発生する可能性がある。そこで低温室を利用して低温域での結晶化を行い、以下の結果を得た。
(1)-20℃において数日以上の時間を要して、攪拌による安定型の結晶への転移を促す条件で結晶化を行った場合には、得られた結晶は単斜晶であった。
(2)-20℃おける急速冷却による結晶化では、斜方晶の結晶の優先的な発生が見られた。時によっては、図1に示すように斜方晶結晶のみが得られた。
 以上の結果は、-20℃付近ではまだ単斜晶の方が、熱力学的には安定であるが、室温域と比べて単斜晶と斜方晶の間の自由エネルギー差は減少し、そのために急冷による結晶化では斜方晶が優先的に発生すると考えられる。ほぼ斜方晶のみ試料が得られたことは(図1)、これまでに前例のないことである。
図1 n-hexatriacontane の粉末X解回折図形  
成果となる論文・学会発表等