ようこそ、冬眠代謝生理発達分野(山口研究室)のホームページへ!
当分野は、北海道大学低温科学研究所に2018年1月より設置された新しい研究室です。哺乳類の冬眠の仕組みを明らかにしようと研究を行っている、「冬眠」が研究室名につく世界でも数少ない研究室です。
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そもそも冬眠とはなんでしょう?
なぜ冬眠を研究するのでしょうか?
(冬眠中のシリアンハムスター)
冬眠は、長い冬を眠っているかのような、場合によってはまるで死んでいるかのような、低体温の状態で乗り切る現象です。外気温にその体温が左右される変温動物であるサカナ、カエル、カメ、ヘビなどは、寒い季節には低体温となり動きが鈍くなってた結果として冬眠を行うとも言われています。一方、私たちヒトをはじめとする哺乳類は体温が37ºC付近に固定された恒温動物であるため、低体温での冬眠はできません。低体温状態が長く続くと、組織が痛んだり心臓が止まったりしてしまうからです。しかし、一部の哺乳類は、変温動物同様、低体温に陥って冬眠することができます。
とはいえ、冬眠できる哺乳類もいつでも冬眠できるわけではなく、からだが冬仕様になることが、冬眠の成功にはどうも重要そうなのです。しかし、そもそも夏のからだと冬のからだが実際にどう違うのか、そうした違いは季節や環境の変化とともにどうやって生じるのか、また、低体温状態になるきっかけは何か、長時間にわたる冬眠時の低体温状態でも臓器や細胞が傷まず死なないのはどうしてか、などまど、まだ冬眠に関する多くの謎と疑問が残されています。
たとえば、わたしたち人間にも通じる謎として、以下のようなものがあります。冬眠する動物は脂肪をたくさん秋に蓄えますが、冬の間に脂を効率的に燃やすことで冬を乗り切ります。こうした脂のうまい燃やし方の仕組みはまだよくわかっていません。また、冬眠の間はほとんど寝たきりなのに、筋肉はあまり衰えないと言われています。人間では考えられないことです。さらに、秋の終わりから冬にかけて気分が沈みがちになるのを経験する人も多いと思いますが、こうした症状は重くなると日常生活に支障がでてしまいます。こうした、季節性の気分障害は、人類進化的には冬眠の名残りであるともいわれています。
このように、冬眠そして生き物の神秘の謎は、わたしたち人間を理解するうえでも重要なヒントを与えてくれます。生き物と自然が秘める力の仕組みを科学の営みで解き明かすことは、私たち人間自身のものの見方や捉え方を間違いなく拡げてくれるでしょう。さらにそこから、暮らしや医療を支える新しい発明や創造の種も生まれてくるはずです。冬眠研究は未開の地が多く残された生物学のフロンティアといえるのです。
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Last update: 2024.9.20