オホーツク海の海氷を予報する
－今冬の海氷の広がりは平年並み?－

2冬前(2005/2006年)、オホーツク海の流氷（海氷）面積が観測史上最小に近い値を記録し、温暖化でオ ホーツクの海氷はどんどん減少していくのでは、とも言われている。実際はどうなのか？もっと直接 的に、今年の海氷の広がりがどうなるかは予報できるのであろうか？

人工衛星の観測により海氷面積がモニターできるようになってから約30年経つ。それによると、オホー ツク海の海氷面積は確かにこの30年で約10%減少という結果になり、これはオホーツクの風上域の温暖化 によると考えられる(1)。しかし、オホーツク海の海氷面積はこのようなトレンド（長期の傾向）のほかに 、年々の変動が大きく、例えば、2000/2001年は最近の減少傾向とは逆にこの20年で最大の海氷面積を記 録している。

最近の研究から、オホーツク海の海氷面積は何で決まるかがわかってきた。まず、初期（12－1月）の海 氷面積は、オホーツク海の北西部（海氷が最初に出現する海域）で秋（10－11月）にどれだけ海面が冷 やされたかで概ね決まる(2)(3)(4)。海氷最大拡大期（2－3月）の海氷面積は、この影響も少し残るが、流入 する太平洋水の初冬(11-12月)の水温が、最も重要な決定要因であることがわかってきた。つまり、11月 時点での、北西部の熱条件とオホーツクの上流域の太平洋の海水温度がわかれば、ある程度その年の海 氷面積が予報できることになる。

具体的には、11月の北西部の熱条件（NCEPデータより取得）とオホーツクの上流域の太平洋の海水温度 （OISSTデータより取得）の二つを変数として、重回帰式を用いて海氷予測モデルを作る。図1の赤線は 、この海氷予測モデルから今冬(2007/2008年)の12月から4月までの海氷面積を予測したものである。黒 線は過去23年間の平均海氷面積であり、今冬の海氷の広がりは、どの月もほぼ平均並みとなる。因みに 、2冬前(2005/2006年）を予報すると図2のようになり（赤点線は観測値）、海氷面積が小さくなること がある程度予報されている。図3は2月を例にとって、過去26年間の予測値（四角）と観測値（太線）を 比較して示したものである。予測値に付いている縦線は予測の誤差を1標準偏 差で示したものである。

＊注意：なお、以上の予報は個人的なものであり、また研究途中のものであり、予報に関しての責任は一切負いません。


図1: 重回帰モデルよって予報された2007年12月から2008年4月までのオホーツク 海の海氷面積の予測値(赤線)と過去23年間(1982-2006年)のデータで見積もられ る海氷面積の平均的な値（黒線)。予測値にプロットされているエラーバーは 各月の予測精度の誤差(観測された海氷面積と予測された海氷面積の差の標準偏差)を示す。

図2: 2005年12月から2006年4月までのオホーツク海の海氷面積の重回帰モデル よって予報された予測値(赤線)と実測値(青線)。参考までに、過去23年間(1983-2006年)のデータで見積もられ る海氷面積の平均的な値を黒線で示す。予測値にプロットされているエラーバー は各月の予測精度の誤差(観測された海氷面積と予測された海氷面積の差の標準偏差)を示す。


図3: 1983年から2007年までの2月におけるオホーツク海の海氷面積の実測値(太線)と重 回帰モデルによる予測値(四角)。予測値にプロットされているエラーバーは2 月の予測精度の誤差(観測された海氷面積と予測された海氷面積の差の標準偏差)を示す。


以上は、中野渡拓也研究員との共同研究であり、より詳しくは中野渡氏のホームページを参考に。

(参考文献)
  1. Nakanowatari T., K. I. Ohshima, M. Wakatsuchi, 2007: Warming and oxygen decrease of intermediate water in the northwestern North Pacific, originating from the Sea of Okhotsk, 1955-2004. Geophysical Research Letters, 34, L04602, doi:10.1029/2006GL028243.
  1. Ohshima, K. I., S. C. Riser, and M. Wakatsuchi, 2005: Mixed layer evolution in the Sea of Okhotsk observed with profiling floats and its relation to sea ice formation. Geophysical Research Letters, 32, L06607, doi:10.1029/2004GL021823.
  1. Ohshima, K. I., S. Nihashi, E. Hashiya, and T. Watanabe, 2006: Interannual variability of sea ice area in the Sea of Okhotsk: Importance of surface heat flux in fall. Journal of Meteorological Society of Japan, 84, 907-919.
  1. Sasaki Y. N., Y. Katagiri, S. Minobe and I. G. Rigor, 2007: Autumn atmospheric preconditioning for interannual variability of wintertime sea-ice in the Okhotsk Sea,

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