共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

グリーンランド沿岸における氷河と海洋生態系の変化
新規・継続の別 継続(R05年度から)
研究代表者/所属 北大水産
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 富安信

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

EvgeniyPodolskiy 北大北極域研究センター 准教授

2

長谷川浩平 北大水産 助教

3

Jean-BaptisteThiebot 北大水産 助教

4

山口篤 北大水産 准教授

5

三谷曜子 京大野生研 教授

6

櫻木雄太 京大野生研 博士研究員

7

小川萌日香 極地研 特任助教

8

杉山慎 北大低温研

研究目的 北極域の温暖化に伴って、グリーンランド沿岸部では氷河や凍土が融解し、海洋環境および生態系に大きなインパクトが生じている。魚類、海鳥、海棲哺乳類は重要な水産資源であると共に伝統的な狩猟対象であり、これらの生物が環境や餌生物の時空間変動に応答することで北極域社会へ影響を及ぼしている。これは北極域で進行する「気候変動⇒環境変化⇒生態系変化⇒社会へのインパクト」の典型例であり、生態系変化が沿岸社会に与える影響を理解する上での好例である。本研究では、グリーンランド北西部のInglefield Bredning周辺海域において、海洋生物の生態および生物間相互作用と氷河変動との関係性を明らかにしその社会影響を議論する。
  
研究内容・成果 北海道大学低温科学研究所において2026年2月6日に共同研究に関する会合を行った。参加人数は19名(現地15名、オンライン4名)であった。会合では今年度の調査結果を共有し、次期フィールド調査に向けて調査内容を検討した。
ドローンを使った鯨類の調査として、イルリサットにおいてザトウクジラが海氷の融解箇所付近に集中して摂餌行動を行う様子を詳細に観察した。またカナックにおいては体サイズの異なるイッカクの社会行動が初めて観察された。カナック地域における低次生物として複数フィヨルド間で動物プランクトンと植物プランクトンの採集データが蓄積された。沿岸の食料資源であるホッキョクイワナについて、地域住民の漁獲方法が潮位変化に応答して最小限の人員で操業を可能とする方法であることが明らかとなった。また数種の稚魚に依存してホッキョクイワナの索餌回遊が行われている可能性が示唆された。同じく沿岸域の食料資源であるムール貝においては住民の採集頻度や採集場所の情報を得るとともに、金属汚染の可能性を基にダンプサイトや周辺環境の観察データが蓄積された。海鳥について、フィヨルド周辺のヒメウミスズメとハジロウミバトの分布には海水の濁度や水深および表層の動物プランクトンのバイオマスが影響することが明らかとなった。またグリーンランド沿岸域で行われるカラスガレイを対象とした延縄漁業は、グリーンランド北部と中部で操業や漁具の形に多様性があり、水中での漁具の動きが各地域での操業に適応した様式となっていることを明らかにした。
  
成果となる論文・学会発表等 S.Sugiyama et al. Changes in the coastal environments and their impact on society in the Qaanaaq region,northwestern Greenland, Polar Sci,45,101206,2025.
M.Ogawa et al. The situation of Inuit communities in northwest Greenland (Kalaallit Nunaat) amid continuously changing environmental and social conditions. Polar Sci. 46,101257,2025.
M.Ogawa et al. Tidewater glacier fronts are an important foraging ground for an Arctic marine predator. Commun earth environ.7,167,2026.
M.Ogawa et al. Inuit Hunt as a Platform for Observing Narwhals (Monodon monoceros) in Inglefield Bredning (Kangerlussuaq), Greenland. Polar Biol,49,30,2026.
E.A.Podolskiy et al. Repeated narwhal interactions with moorings challenge safety assumptions of passive acoustic monitoring in the Arctic. Commun Biol. 8,1557,2025.
M.Tomiyasu et al. Regional variation in the morphology and hydrodynamic performance of metal kites used in Greenland halibut longline fisheries. Fish Res.296,107692,2026.