共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

積雪融雪および凍結融解過程が湿原土壌水からの鉄溶出過程に与える影響の解明
新規・継続の別 継続(R05年度から)
研究代表者/所属 岐阜大学応用生物科学部
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 大西健夫

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

田代悠人 秋田県立大学 助教

2

白岩孝行 北大低温研 准教授

研究目的 陸域における溶存鉄の供給源では、寒冷圏において湿原が重要と考えられている。申請代表者らの研究によると、寒冷圏の湿原からの溶出には、積雪・永久凍土・季節凍土といった湿原土壌の冬季における環境変化が深く関わっている。湿原は一般的に還元的な環境であるため、湿原内の土壌水に含まれる溶存鉄濃度は高い傾向にあるが、どのような機構により、積雪ならびに土壌の凍結・融解が流出する土壌水・河川水の溶存鉄濃度を変化させるかは、未解明である。本研究は、2024年度に開始した観測を継続して通年での基礎データを取得し、湿原における溶存鉄の季節的変動特性を決める要因の解明をすることを目的とする。
  
研究内容・成果 本年度は、融雪期から秋季にかけて計4回(4月4〜7日、6月14〜17日、8月13〜17日、10月17〜22日)の定期観測を実施した。観測体制は、猿払川流域上流丸山湿原内にて深度1, 2, 4, 5.77mの4深度からの地下水の定期採水と地下水位の連続観測、テンションライシメータによる深度10, 20, 30, 50,120, 140cmからの土壌水の定期採水、0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 6.91mの各深度における地温の連続計測、湿原に隣接する丸山橋からの採水、猿払川上流から下流にかけて広域での採水である。これまでに得たデータをまとめ得られた結果は以下の通りである。
 猿払川の河川中の溶存鉄濃度は、4月〜5月初旬の融雪出水期には0.2 mg/L程度と相対的に低く、7月〜10月の夏季へ向けて0.4〜0.6 mg/Lと高くなる傾向を示す。これまでの観測結果を統合することで、猿払川流域における溶存鉄濃度に及ぼす湿地の影響が明らかになった。融雪イベントによる出水と、夏季の降雨イベントによる出水とでは、水の流動経路が異なることにより溶存鉄濃度も変化する。すなわち、融雪出水期には、融雪水の浸透にともなう地表付近の浅い地下水ならびに融雪水の地表流出に起因して、大きな水位上昇を伴う流量増加がみられる。他方、夏季には降水量の減少に伴い基底流出が卓越することにより深い地下水由来の高濃度の溶存鉄が供給されることが推察された。また夏季の降雨イベントに伴う出水時には一時的に地表付近の流出が卓越するため、浅い地下水の寄与が重要となる。なお、対象地においては凍結融解課程は観察されなかったため、この影響評価はしていない。
 今後は、融雪出水と夏季降雨イベント出水が、それぞれ沿岸域生態系へ及ぼす影響を定量化していくことが課題である。
  
成果となる論文・学会発表等 Y. Tashiro, T. Onishi, R. Watanabe, T. Shiraiwa. Reducing soils serve as a legacy source of dissolved iron to northern Hokkaido rivers during the autumn low-water season, HYDROLOGICAL RESEARCH LETTERS 19(3),164-170, 2025
大西健夫,渡邊凜,田代悠人,白岩孝行,伊藤寛人,平松研.積雪地帯の湿地における溶存鉄動態〜北海道猿払川丸山湿地の事例〜,JpGU,2025年5月27日,千葉幕張