共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷圏アマモ群落における好冷性亜硝酸酸化菌の生態に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 日本大学
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 中川達功

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

土屋雄揮 日本大学 専任講師

2

福井学 北大低温研

研究目的 北海道厚岸湖の水温は半年が10℃以下であり、4℃前後の期間が3ヶ月間もある。その10℃以下の半年間は厚岸湖の海水中の硝酸イオン濃度が夏季に比べ高めに推移する事が知られている。さらに、自然環境中の硝酸イオンの発生源は亜硝酸酸化菌による硝酸の生産とされている。したがって、冬季における北海道厚岸湖のアマモ群落では好冷性の亜硝酸酸化菌が寒冷圏沿岸域の生物に対しての窒素供給を担っている事が考えられる。しかしながら、海洋環境における好冷性の亜硝酸酸化菌の研究は進んでいない。そこで本研究では北海道厚岸湖における好冷性亜硝酸酸化菌の生態学的研究を目的とした。
  
研究内容・成果 2025年11月6日に北海道厚岸湖の調査地点C地点(北緯43.04623˚東経144.88812˚)とD地点(北緯43.02532˚東経144.88205˚)の2地点おいて底泥、および海水を採取した。B地点の水温は9.2℃、およびpH 5.67、DO 4.49、水深 1.6 m、Ⅾ地点の水温は9.2℃、およびpH 6.06、DO 3.75、水深 1.4 mであった。素潜りでコアサンプラーを用いて底泥を採取した。実験所にて0 cm – 1 cm層、1 cm – 2 cm層、2 cm – 3 cm層、3 cm – 4 cm層、および4 cm – 5 cm層をそれぞれ滅菌済み試料袋に回収した。遺伝子解析用の泥に対して、15 mLチューブに各層の泥を5 mLの線まで加え、DNA/RNA shieldを5 mL加え、混合した。残りの泥は入れ海水と共に冷蔵して輸送した。これらの試料は11月8日に研究室に到着した。
研究室に試料が到着後、地点Cおよび地点Dの0–1 cm層の底泥と同地点のろ過滅菌済み海水を用いて培養実験を実施した。泥5 gおよび海水50 mLを、滅菌済み100 mL三角フラスコに加え、4℃、10℃、20℃、30℃の温度で暗所で静置培養した。培養後、亜硝酸イオン濃度の減少と硝酸イオンの増加が20℃の培養系で観察された。昨年度に採取した泥に対しても、亜硝酸酸化微生物用培地を用いて10℃、20℃で暗所で静置培養した。その結果、20℃の培養系で顕著な亜硝酸酸化が認められた。2024年度の培養系については、亜硝酸酸化バクテリアの亜硝酸酸化還元酵素サブユニットB (nxrB) 遺伝子を分子指標として使用したPCR実験を実施したところ、10℃より20℃培養系においてNitrotoga属が亜硝酸酸化していることが確認された。遺伝子解析用の泥試料を含むチューブを遠心分離機に供し、上清を捨て、泥試料を-80˚Cで冷凍保存した。各泥試料からDNAを抽出後、16S rRNA遺伝子アンプリコンメタゲノム解析を実施した。その結果、Nitrospira属は両地点の0–1 cm層で検出され、Nitrospina属はD地点の0–1 cm層で検出された。しかし、Nitrotoga属は両地点の全ての層で検出されなかった。以上の結果から、培養実験と環境遺伝子解析の結果に一致が認められなかった。好冷性亜硝酸酸化菌の生態学的研究には、試料採取の時期と低温環境における亜硝酸酸化菌の亜硝酸酸化活性の測定についての更なる検証が必要である。
  
成果となる論文・学会発表等