共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

星間塵表面上での化学進化に関する化学反応ダイナミクスの理論的研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 東京都立大学大学院都市環境科学研究科
研究代表者/職名 テニュアトラック助教
研究代表者/氏名 村上龍大

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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柘植雅士 北大低温研 助教

研究目的 星間塵表面を反応場とした星間分子の反応効率や生成比を支配する詳細な化学反応機構を理解することは,理論化学における重要なテーマである。星間塵表面分子との局所的相互作用によるエネルギー散逸過程が,その反応機構の決定に重要な役割を果たすと考えられる。しかしながら,凝縮相を対象としたポテンシャルエネルギーを量子化学計算で求めるには,高い計算コストが課題となる。そこで本研究では,情報科学に基づく機械学習アルゴリズムを応用することで,明示的な溶媒分子を含む機械学習ポテンシャル(MLIP)を開発し,凝縮系反応における溶媒和構造や表面構造と生成物選択性の関係を理論的に明らかにすることを目的とする。
  
研究内容・成果 本研究では,機械学習ポテンシャルとして Message-Passing Atomic Cluster Expansion(MACE)を採用した。MACE はグラフニューラルネットワークを用いて各原子の局所エネルギーを学習し,それらの総和として系全体のポテンシャルエネルギーを予測する手法である。近年,ωB97M-D3(BJ)/def2-TZVPPD レベルで計算された中性有機小分子のデータを学習した力場 MACE-OFF が開発されている。本研究では,この MACE-OFF の溶媒和構造への適用可能性を検証した。具体的には,中性分子 OCS および SO₂ の水和構造について,参照となる量子化学計算と MACE-OFF によって得られるポテンシャルエネルギーを比較した。その結果,MACE-OFF は非極性に近い OCS の水和構造については良好な再現性を示す一方で,極性の高い SO₂ の水和構造に対しては十分な精度が得られないことが明らかとなった。この結果は,極性分子を扱うためには,長距離静電相互作用をより精緻に取り扱うモデル化が重要であることを示唆している。今後は,高精度なポテンシャルエネルギー曲面を構築し,水和構造および氷表面上での吸着構造と生成物選択性との関係を理論的に解明することを目指す。
  
成果となる論文・学会発表等 【学会発表】
[1] T. Murakami, Molecular Dynamics Simulations of Interstellar Chemical Reactions, the Workshop on Interstellar Matter 2025, Nov. 12-14, 2025, Sapporo, Japan(招待講演)