共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

永久凍土融解に伴う北方林の温室効果ガス放出過程の野外観測とそのモデル化
新規・継続の別 継続(R03年度から)
研究代表者/所属 海洋研究開発機構
研究代表者/職名 グループリーダー代理
研究代表者/氏名 小林秀樹

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

甘田岳 森林総合研究所 学振特別研究員

2

伊川浩樹 農研機構 上級研究員

3

Go Iwahana アラスカ大学フェアバンクス校 准教授

4

渡辺力 北大低温研

5

森章一 北大低温研

6

藤田和之 北大低温研

7

斎藤史明 北大低温研

研究目的 2024年度に引き続き、自動開閉チャンバーで土壌CO2フラックス観測を雪解け前〜根雪(5月上旬〜9月末)まで継続し、活動層厚・植生・地温・土壌水分等の環境データも併せて取得する。システム不具合時は渡辺教授および技術部(森・藤田・斎藤各氏)から助言を得る。3年分のデータからフラックスは土壌温度に単純比例せず、土壌水分などによる抑制が示唆されるため、2025年度は地温の深度プロファイル変化に加え土壌水分の影響を詳しく解析する。欠測やガス流量変化等による品質低下に対応するQCQA手法を検討し、渦相関フラックスとの比較や、秋〜冬季の長期変動の考察も進め、成果をまとめる。
  
研究内容・成果 本研究の中核となる自動開閉チャンバーは2021年度に開発され、2022年度にアラスカ州の常緑針葉樹林サイトへ設置した。コントロール区および昇温区それぞれに、土壌呼吸測定用の暗チャンバー3基とアクリル樹脂製の明チャンバー1基を設置し、温暖化実験開始前の夏季におけるCO₂フラックスを連続測定してきた。しかし2024年度にクリアチャンバー内の植物(クロトウヒ幼木)が枯死したため、2025年度は暗チャンバー各3基によるガス交換量の観測を実施した。2025年度の土壌CO2フラックス観測は過去2年とほぼ同期間(5月中旬〜9月下旬)に行ったが、5月〜6月下旬にガスアナライザーからチューブが外れ、コントロール区ではデータを取得できなかった一方、昇温区では順調にデータを収集できた。8月下旬にはメタン計測が可能なガスアナライザーLI-7810を用い、次年度以降の長期観測に向けたメタンフラックス計測の試行を行った。その結果、昇温区ではメタンフラックスの継続的な放出が確認されたが、流量の異なるCO2ガスチューブラインを直列接続するとCO2濃度勾配が過小に出力される可能性が示され、ラインの並列化などの対策が必要であることが明らかとなった。
 さらに、観測データを用いて2023〜2025年に進行する土壌環境変化と土壌CO2放出の年変動を対応づけ、変動要因を解析した。昇温3年目の2025年には活動層厚が約180 cmとなり、対照区(約88 cm)の約2倍に達した。土壌CO2放出は2023年・2024年に顕著な増加がみられなかった一方、2025年には昇温区で対照区の約4.7倍のCO2放出が観測された。加えて、土壌CO2放出量と地温の温度依存関係を調べたところ、2023〜2024年は地温上昇に対応して放出量が増加したが、2025年には地温との相関がほとんど認められなくなった。これは永久凍土の急速な融解が発生した場合にみられる特徴的な挙動である可能性がある。
 土壌栄養では昇温によりアンモニウム態窒素の可給性が増加したが、増加分は速やかに植物に吸収・利用されている可能性が示唆された。葉スケールでは常緑性植物より落葉性植物の応答が早く、昇温下でより獲得的な葉形質へ順応していることが示唆された。以上より、活動層の急速な増大に伴う土壌環境(深部条件・栄養動態)と植生応答の変化が、2025年に顕在化した土壌CO2放出増大に関与している可能性が考えられた。今後、さらに詳細な解析を進める予定である。

  
成果となる論文・学会発表等 甘田岳(森林研究・整備機構), 伊川浩樹(北農研), 渡辺力(北海道大学), 森章一(北海道大学), 斎藤史明(北海道大学), 藤田和之(北海道大学), 小林秀樹(海洋研究開発機構)、アラスカ内陸部の永久凍土融解実験における土壌呼吸・土壌栄養・葉形質の応答、P-231, 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月15日、京都)

甘田 岳(森林総研)、伊川 浩樹(北農研)、渡辺 力、森 章一、斎藤 史明、藤田 和之(北大低温研)、小林 秀樹(JAMSTEC),永久凍土融解に対する土壌と植物の応答―アラスカ内陸部永久凍土林における土壌昇温実験, ISOPS -永久凍土・季節凍土に関する多分野研究集会, 2026年3月5日、広島県三次市