共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

海洋微生態系における炭素循環経路の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 埼玉大学大学院理工学研究科
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 神保晴彦

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

峯村友輝 埼玉大学大学院理工学研究科 修士1年

2

古島翼 埼玉大学大学院理工学研究科 博士1年

3

力石嘉人 北大低温研 教授

4

滝沢 侑子 北大低温研 准教授

研究目的 微細藻類による炭素固定(光合成)は、海洋生態系における炭素循環に大きな影響を与える。これまでに、生態系における炭素や窒素等の元素の物質循環については、動物の個体レベルで解析が進んでいるが、微細藻類から魚介類に至るまでの多価不飽和脂肪酸の伝搬(有機化合物分子レベル)については、環境サンプルから微生物を分離することが困難であるため、ほとんどわかっていない。本研究では、微細藻類から魚介類に至るまでの食物連鎖を介した多価不飽和脂肪酸の伝搬経路を明らかにすることを目的とした。
  
研究内容・成果 本研究では、食物連鎖における多価不飽和脂肪酸の動態を明らかにすることを目的とし、安定炭素同位体(13C)を指標にした解析を行った。申請者らは既に、広島県の牡蠣養殖場沖の海水濾過サンプルのGC-MSを用いた脂肪酸解析から、特定の環境において、微生物叢内に多価不飽和脂肪酸が滞留していることを明らかにしている。しかし、当該解析では、GC-MSで得られた分子ピークの面積比を期待値として、13Cが取り込まれる確率p(p値)を求めたに留まっており、得られた結果の信頼性を高めるためには、同位体解析で一般的に用いられているIRMSによる解析結果との整合性を確認する必要がある。
本共同研究においては、申請者がこれまでに解析したサンプルと同じサンプルを用いて、低温科学研究所の同位体物質循環分野が保有するGC-IRMSによって分析を行った。また、サンプルの再現性を確立するため、捕食性藻類であるPoterioochromonas malhamensis (P. malhamensis)と非捕食者であるシアノバクテリアを混合培養した、捕食-非捕食モデル系を構築した。これまでに、この捕食-非捕食モデル系を用いて、捕食後のP. malhamensisに含まれる脂肪酸のp値をGC-MSで計算したところ、18:0から18:2へと不飽和化が進むに従って、p値の上昇が観察された。独立栄養で培養したP. malhamensisの脂質サンプルとシアノバクテリア捕食後のP. malhamensisに含まれる脂質サンプルをそれぞれGC-IRMSで解析したところ、多価不飽和脂肪酸において、優位にδ13C量が増加していた。以上の結果から、GC-MSとGC-IRMSで観察された同位体比の増加の整合性が得られ、18:2までの不飽和化において、シアノバクテリアが合成した脂肪酸がP. malhamensisに取り込まれ、再利用されていることが明らかとなった。現在、本研究成果について論文投稿準備中である(Minemura et al. in preparation)。GC-MSでは、分子イオンの観察が難しい20:5や22:6などの多価不飽和脂肪酸のp値を求めることができない。したがって、今後はこうした多価不飽和脂肪酸の同位体分析においてGC-IRMSを活用していく予定である。
  
成果となる論文・学会発表等 峯村友輝、神保晴彦「海洋微生物叢におけるメタ脂質代謝経路の解明」第36回 植物脂質シンポジウム、ポスター発表

峯村友輝、湯浅 光貴、戸田成美、滝沢侑子、廣田隆一、力石嘉人、西山佳孝、
神保晴彦「海洋微生物叢におけるメタ脂質代謝動態の解明」第19回 日本ゲノム微生物学会年会、ポスター発表

峯村友輝、戸田成美、廣田隆一、西山佳孝、神保晴彦「捕食性藻類Poterioochromonas malhamensisの捕食を介した光合成の形質変化」第15回 日本光合成学会年会 ポスター発表、若手ポスター賞受賞

峯村友輝、戸田成美、廣田隆一、西山佳孝、神保晴彦「捕食性藻類Poterioochromonas malhamensisの捕食を介した光環境応答機構の解明」日本微生物生態学会第38回東京大会、ポスター発表

神保晴彦、峯村友輝、戸田成美、滝沢侑子、力石嘉人、廣田隆一、西山佳孝「捕食性藻類Poterioochromonas malhamensisにおける捕食を介した光合成活性制御機構の解明」第67回日本植物生理学会年会、口頭発表