共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

積雪中の水分移動に伴う微小粒子の移動に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 防災科学技術研究所雪氷防災研究センター
研究代表者/職名 上席研究員
研究代表者/氏名 平島寛行

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

河島克久 新潟大学 災害・復興科学研究所 教授

2

松元高峰 新潟大学 災害・復興科学研究所 特任准教授

3

的場澄人 北大低温研

研究目的 積雪中に含まれる化学物質は、雪面アルベドの低下や環境被害に大きな影響を及ぼす。これらの化学物質は主に積雪中の水の移動に伴って分散・移動するが、可溶性、不溶性、あるいは雪粒子への吸着特性などにより、その挙動は物質ごとに異なる。本研究では、研究代表者が開発した三次元水分移動モデルに組み込む化学物質移動モジュールを開発し、不純物の移動を計算する。同時に、研究分担者らがこれまでに収集した観測データを活用し、再現計算の検証を行う。その結果を踏まえてモデルの改良を進めるとともに、必要に応じて野外観測や実験計画を検討し、積雪中の化学物質移動を再現するモデルを開発することを目的とする。
  
研究内容・成果  本研究ではまず、研究代表者がこれまで構築してきた三次元水分移動モデルに、新規に開発した不純物移動計算モジュールを組み込み、仮想不純物の移動を計算可能とした。当該モジュールでは、雪粒子表面への吸着量と溶液中に溶存して移動する量の配分を分配係数で与える。テスト計算として、積雪表面に、特定の分配係数をもつ仮想不純物を一定濃度で与え、その後の水分移動に伴う不純物移動を計算した。その結果、分配係数の大小に応じて、(1)不純物の大半が表面に残留する、(2)拡散して広範囲に広がる、(3)大半が下方へ移動する、など、複数の移動パターンが再現された。
 11月に実施した研究打ち合わせには、メンバー全員に加えて5名の研究者が参加した。会合では、各研究者より、積雪中における不純物分布の観測結果が報告され、ブラックカーボン(以下、BC)や花粉、鉱物粒子、リターフォール等、移動特性の異なる不溶性粒子に関する観測結果が共有された。それを踏まえ、今後は不溶性粒子を中心に解析および再現計算を進める方針とした。あわせて、融雪量や大気からの降下沈着量など、水分移動に伴う不純物移動以外にもモデルに組み込むべきプロセスについて議論し、次年度以降の共同研究計画の策定を進めた。
 また、北海道の中札内において観測されたBC分布のデータが、現時点で再現計算に最も利用しやすい実測結果であったことから、当該データを用いてモデルの検証を進めることとした。中札内では日数をおいて2回の不純物分布観測が実施されている。そこで、観測結果に加え、積雪断面情報、1回目と2回目の観測間の融雪量及び降水量など、再現計算に必要なデータを整理した。整理したデータを用いて、水分移動に伴う粒子移動の再現計算を行った。その結果、分配係数の感度実験によりBC移動量を調整し、濃度ピークが現れる深さが観測と一致する分配係数を求めることで、本観測に対する適切な分配係数を得た。一方で、観測プロファイル全体を一致させることや、表面に残留するBCの量、濃度ピーク位置、積雪中に残留するBC量をすべて同時に再現できる分配係数は決定できなかった。このことから、表面沈着量や分配係数の不均一性を考慮した計算の必要性も示唆された。
 今回の実測と計算の比較は、BCに対して1パターンのみでの再現計算であった。このため、今回得られた分配係数は汎用的な値ではないが、ケーススタディとしての参考値を得た。また、本計算により、実測に基づく不溶性粒子の移動を再現する手法を構築した。これにより、今後は多数の観測結果を用いた再現計算や、他の不溶性粒子に対する計算を行い、不溶性粒子ごとの最適な分配係数を推定していくことが可能になった。次年度以降はこれらの解析を進め、積雪中の水分移動に伴う不溶性粒子の移動のモデル化を進める予定である。
  
成果となる論文・学会発表等