共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

海洋の統合的理解に向けた新時代の力学理論の構築
新規・継続の別 継続(R04年度から)
研究代表者/所属 九州大学 応用力学研究所
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 大貫陽平

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

木田新一郎 九州大学応用力学研究所 准教授

2

古恵亮 海洋研究開発機構アプリケーションラボ 主任研究員

3

浮田甚郎 東京大学大気海洋研究所 研究員

4

田口文明 富山大学学術研究部都市デザイン学系 教授

5

勝又勝郎 東京大学大学院理学系研究科 教授

6

相木秀則 名古屋大学宇宙地球環境研究所 教授

7

吉川裕 京都大学理学部 教授

8

長井健容 東京海洋大学学術研究院海洋環境学部門 准教授

9

松村義正 東京大学大気海洋研究所 助教

10

田中祐希 東京海洋大学学術研究院海洋環境学部門 准教授

11

増永英治 茨城大地球・地域環境共創機構 講師

12

神山翼 お茶の水女子大学基幹研究院 講師

13

藤原泰 神戸大学大学院海事科学研究科 助教

14

松田拓朗 北海道大学大学院地球環境科学研究院 助教

15

三寺史夫 北大低温研

16

中村知裕 北大低温研

研究集会開催期間 令和 6 年 10 月 8 日 〜 令和 6 年 10 月 9 日
研究目的 海洋の流体運動を記述する海洋力学では地球流体力学が中心的な役割を担っていたが,現在は大気・陸域・海底との物質・運動量・エネルギー交換,波動・渦・微細乱流によるエネルギー伝達および物質拡散と生態系の形成,といった従来の理論的枠組みでは扱うことの困難なプロセスが重要課題として位置付けられている.研究集会では,流体力学・物理学・統計学・計算科学など様々な分野で用いられている理論的枠組みや解析手法を紹介しあうことで,体系的な理解を進め“新時代”の海洋力学とも呼ぶべき学問領域を構築することを目指す. 特に各分野の共通課題である「スケール間相互作用・要素間相互作用」に焦点を当てる.
  
研究内容・成果 2024年10月に低温研大講堂にて研究集会を開催した.全体的に独自性の高い斬新な研究手法の紹介が多く, 研究集会の趣旨に合致して「海洋力学の新境地の開拓」が進んだ. 具体的な発表内容は以下の通りである.

田中祐希: 定常および時間変動する風応力強制/熱強制に対する沿岸海洋の応答
外力強制に対する沿岸海洋の応答について, 地形構造を考慮した新しいエネルギー解析式を用いながら数値的に調べた結果を紹介した. 岸に沿って生じる流れの構造が, 地形と成層で決まる固有モード波の伝搬で説明できる可能性が議論された.

木田新一郎: 粒子追跡モデルを用いた陸海一体化モデルの構築
最新の河川海洋一体の数値モデルにおいて, 雨水が河川へ流れ込む過程を粒子追跡で表現する方法について紹介した. 地下を経由する水のモデル化ついて, 圧力駆動による流れ, あるいは拡散運動とみなすことの是非について議論が展開した.

神山翼: 続・熱帯と中緯度の解の接続について
大気の運動は, 積雲対流で駆動される赤道域と, 地衡風に支配される中高緯度域で異なる性質をもつ. その境界が力学的にどうやって接続されるのかを線形モデルで考察した結果について議論がなされた.

磯田豊: 津軽海峡の浅海潮(倍潮と複合潮)
起潮力に連動して起こる海面変位や流速の周期変動(潮汐)は, 沿岸域での非線形干渉により新たな周波数変動を引き起こす. この「浅海潮」を, 津軽海峡に設置された潮位計の時系列データを周波数分解して確かめた結果について議論した

増永英治: 日本沿岸海域の内部潮汐のモデル再現と現場観測による検証
広域的な海洋モデルをダウンスケーリングして日本沿岸域の解像に特化させた数値シミュレーションの結果について, 観測データによる検証を交えながら, 特に内部潮汐とサブメソスケール現象の相互作用の観点で議論がなされた.

寺田雄亮: 赤道太平洋における中層海流の駆動メカニズム
赤道太平洋の上層で励起されたYanai波が下方伝搬して長周期の東西流をつくりだす機構について, 数値実験に基づく解釈が紹介された. その中で, 太平洋の東岸に達した波が反射して上向き群速度伝搬する東西流構造をつくる可能性が議論された.

藤原泰: 風波の発達と運動量フラックス
大気から海洋への運動量供給に関わる風波の励起過程を詳細に理解するべく, 大気境界層の数値実験の結果を紹介した. うねりの存在の有無によって, 運動量供給率の波数スペクトルの形状が変化するという興味深い結果の解釈について議論がなされた.

松田拓朗: 北太平洋移行領域東部への黒潮水貫入の十年規模変動
北西太平洋における亜熱帯と亜寒帯の境界域に, 黒潮に起源をもつ海水が到達する頻度とその機構について粒子逆追跡で調べた結果が紹介され, その大気変動との関係について気候力学の観点から議論がなされた.
  
研究集会参加人数 18 人