共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 ミリ波サブミリ波超広帯域分光撮像観測に基づく星間物質進化の研究
新規・継続の別 継続（H28年度から）
研究代表者／所属 北見工業大学
研究代表者／職名 助教
研究代表者／氏名 竹腰達哉

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 河野孝太郎 東京大学天文学教育研究センター 教授

2

 田村陽一 名古屋大学 教授

3

 酒井剛 電気通信大学 教授

4

 中坪俊一 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 主幹研究開発員

5

 木村勇気 北大低温研

6

 藤田和之 北大低温研

7

 森章一 北大低温研

研究目的 星や銀河の材料となる低温のガス・ダストの観測的研究は、銀河、星、惑星の形成過程を探るうえで重要である。本研究では、天体形成に直結する100K以下の低温の星間物質を効率よくトレースし、温度や質量といった物理量を推定するうえで最適な、ミリ波サブミリ波帯の超広帯域観測の実現を世界に先駆けて達成する。2024年度は、チリ共和国・アタカマ砂漠に設置されているASTE望遠鏡へ搭載されるオンチップ超伝導分光計DESHIMAの科学評価観測を実施し、運用を行う。また、FINER計画においては超広帯域・3ビームの光学系設計が2023年度までに完了しており、2024年度においては光学系およびその保持機構・駆動機構の製作を実施した。
設計が完了した光学系モジュールの全体像。　低温科学研究所で製作した楕円鏡（テストカット）。　
研究内容・成果 　DESHIMAの科学運用においては、2023年度までに、科学観測に必要な性能を持つ200-400GHz帯の検出器チップの作成が完了し、ASTE望遠鏡への搭載と試験観測を実施し、さらに近傍活動銀河NGC1068中心部のCO(J=2-1)， CO(J=3-2)の回転遷移放射輝線を同時に検出することに成功している。2024年度においては、8月から11月にかけて4か月間の科学評価観測を実施した。遠隔観測を主にチリ・日本・オランダから実施し、初期宇宙の星形成銀河、銀河団のスニヤエフ-ゼルドビッチ効果、晩期型星、近傍銀河、銀河系内や大小マゼラン雲の星形成領域など、多様なターゲットに対する観測を実施した。現在、取得したデータのキャリブレーションおよびデータ解析手法の開発を進めており、今後は科学的成果の創出が期待される。
　また、本研究課題で開発を進めているメキシコの50mミリ波望遠鏡LMT用の超広帯域受信機FINERについては、2023年度の完了した光学設計に基づき、初期運用時の光学系および保持機構の詳細設計を実施した。特に、保持機構や駆動系を含む光学系モジュール全体の設計が完了した（図1）。また、低温研技術部においては設計した楕円鏡の製作を行った（図2）。来年度においては光学系全体の製作と、受信機と合わせた評価試験を国内で実施するとともに、2026年初頭の望遠鏡への試験搭載の実施を計画している。
設計が完了した光学系モジュールの全体像。　低温科学研究所で製作した楕円鏡（テストカット）。　
成果となる論文・学会発表等 Yoichi Tamura， Takeshi Sakai， Ryohei Kawabe， Takafumi Kojima， Akio Taniguchi， Tatsuya Takekoshi， Haoran Kang， Wenlei Shan， Masato Hagimoto， Norika Okauchi， Airi Tetsuka， Akio K. Inoue， Kotaro Kohno， Kunihiko Tanaka， Tom J.L.C. Bakx， Yoshinobu Fudamoto， Kazuyuki Fujita， Yuichi Harikane， Takuya Hashimoto， Bunyo Hatsukade， David H. Hughes， Takahiro Iino， Yuki Kimura， Hiroyuki Maezawa， Yuichi Matsuda， Ken Mawatari， Taku Nakajima， Shunichi Nakatsubo， Tai Oshima， Hideo Sagawa， F. Peter Schloerb， Shigeru Takahashi， Kotomi Taniguchi， Akiyoshi Tsujita， Hideki Umehata， Teppei Yonetsu， Min S. Yun， "FINER: Far-Infrared Nebular Emission Receiver for the Large Millimeter Telescope "， Millimeter， Submillimeter， and Far-Infrared Detectors and Instrumentation for Astronomy XII， 131020J (2024) https://doi.org/10.1117/12.3017788