共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

大気中で適用し得る雪結晶の形と成長条件ダイアグラムの確立(鉛直過冷却雲風洞実験)
新規・継続の別 継続(R02年度から)
研究代表者/所属 北海道教育大学札幌校
研究代表者/職名 名誉教授
研究代表者/氏名 高橋庸哉

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

佐崎元 北大低温研

2

木村勇気 北大低温研

3

古川義純 北大低温研

研究目的  故中谷宇吉郎北大教授の先駆的な研究以来、多くの人工雪実験が行われてきた。これらは兎の毛やファイバー等の上に雪結晶を成長させたもので、大気中で落下しながら成長する天然雪結晶とは成長環境条件(温度場及び水蒸気場)を異にした。本申請で使用する鉛直過冷却雲風洞は雪結晶を一点に浮かせながら成長させ得る点が他に類を見ず、天然雲内での雪結晶の自由落下成長過程を再現できる。本研究では、広い温度範囲で且つ水飽和以下で氷に対する過飽和度を変えて実験をこの風洞を用いて行い、多様な形態を有する天然雪結晶の成長環境条件を明らかにする。これにより、大気中で適用し得る雪結晶形と成長環境条件を示すダイアグラムを完成させる。
  
研究内容・成果  今年度はデータの不足していた-2°C〜-4.5°C及び-20°C〜-25°Cを中心に実験を行った。実験条件は(1)気温…実験中等温、(2)過飽和度…氷飽和から水飽和まで、(3)成長時間…10分である。昨年度行われた冷凍機改修により-25°Cまでの実験が可能になったが、実験中の風洞内気温及び水蒸気量の時間変動がこれまでより大きかった。これに対処するため、風除けのためにビニールシートを吊り下げる等々の方策を検討した。その効果は十分とは言えないが、成長時間10分中の最大気温変化及び最大水蒸気量変化をこれまでの2倍程度に抑えることができた。 
 次の結果が得られた: (1)-2°C〜-4.5°Cでは、-2°Cに向かって、結晶形が針、束状鞘、骸晶角柱、骸晶角板、厚角板と変化した。-3°C付近で角柱から角板への晶癖変化が見られた。その温度は拡散型雲箱を用いたKobayashi (1961)より1°C高い; (2)-20°C〜-25°Cでは、骸晶角板、厚角板、骸晶角柱が成長した。-24°C付近で角板から角柱に晶癖が変わった。その温度はKobayashi (1961)より2°C程低い;(3)晶癖変化温度を中心に、軸比が1に近い等方的結晶が成長した。等方的結晶は小さく、光の反射が弱い。このため見失うことも多く、データ数を十分に得ることができていない(現在実験継続中)。
 ダイアグラムを描くためのデータが概ね揃ったので、25年度に論文にまとめ公表したい。
  
成果となる論文・学会発表等