共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

0 ℃近辺の凍土環境変動観測機器の開発と検証
新規・継続の別 継続(R05年度から)
研究代表者/所属 海洋研究開発機構
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 斉藤和之

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

曽根敏雄 NPO氷河・雪氷圏環境研究舎 該当なし

2

福井幸太郎 立山カルデラ砂防博物館 主任学芸員

3

森淳子 工学気象研究所(株) 副部長

4

松元高峰 新潟大学 特任准教授

5

的場澄人 北大低温研

6

森章一 北大低温研

研究目的 積雪や凍土は寒冷圏陸域表層を構成し、現地の自然(微気候や植生)や社会(社会基盤、水資源・防災)環境また地球規模気候変化の重要な要素である。本研究は、陸域表層環境の現在及び過去の状況の解析や再現を通して、広域気候変動との関連性・相互作用を理解・把握することを最終目的とするが,広域気候変動との関連やトレンド・長期傾向の推定・理解には基礎となる現地観測の継続と、その観測データの正確かつ適切な取得が重要であると考え,特にこれまでの評価が不十分であった0℃付近の凍結・融解に係る事象に着目してその物理環境特性に合った観測機器の開発・改良と動作確認及び検証を直接的目的とする。
図1. 実験風穴の模式図.レンガ9段の正面図(左)および側方図(中)ならびにレンガ11段の正面図(右) 図2. 温度センサーとレンガ配置の様子 図3. 冷気溜まり効果の観測結果
研究内容・成果 令和5-6年度(採択以降)の研究進捗状況は以下の通りである。0 ℃近辺での凍土環境変動観測のためのプラットフォームの整備と開発に主眼を置いて低温研共同研究を行った。物理的・熱的物性値の性質や評価方法が安定している-10 ℃以下の低温環境と比較して、0 ℃近辺の低温環境では過冷却水や不凍水の存在により物性値自体の評価方法が十分に定まってはおらず,そのために物性値の温度・水分依存性や安定性は十分に評価されているとはいえない。その0 ℃近辺の低温環境での物性値や掘削技術について理解を深め開発を進めることを目的とし以下の成果を上げた。
1. 0℃以下での温度-土質-土壌水分マトリックスに対する熱物性値・潜熱測定を低温室で行いLook-upテーブルを作成した(令和5年度)。また南極半島にて採取した試料を用いて低温室で熱物性値・潜熱測定を行い検証データを作成した(令和6年度)。
2. 斜面ソリフラクション動態の把握のために、GPSにより垂直・水平2方向の動きを解像する方法を開発した(令和5年度)。
3. 携帯性フィールド用凍土ボーリング装置の改良のために開発中のボーリングマシンを使い令和6年10月末に白山山頂付近の千蛇ヶ池雪渓(標高2570m)にて地下氷コア採取の試掘を行い、今後の課題点を収集・明確化した(令和6年度)。
4. 0 ℃を挟む季節変化と地形・地質との相乗作用で作られる風穴についてはその低温環境の維持・変動機構が十分に理解されていない。そのメカニズムを量的・動的に把握するために実験用風穴を作成し、低温室にて実験を開始した(令和6年度)。
図1. 実験風穴の模式図.レンガ9段の正面図(左)および側方図(中)ならびにレンガ11段の正面図(右) 図2. 温度センサーとレンガ配置の様子 図3. 冷気溜まり効果の観測結果
成果となる論文・学会発表等 J. Mori, K. Saito, et al. Bulletin of Glaciological Research. 42, 69-94. 2024.