共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

北極域研究船観測に向けての、物理と化学、現場と衛星との融合海洋・海氷研究
新規・継続の別 継続(R05年度から)
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 特任教授
研究代表者/氏名 大島慶一郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

渡邉英嗣 海洋研究開発機構 主任研究員

2

藤原周 海洋研究開発機構 研究員

3

田村岳史 国立極地研究所 准教授

4

伊藤優人 国立極地研究所 特任研究員

5

漢那直也 東京大学大気海洋研究所 助教

6

深町康 北大北極域研究センター 教授

7

野村大樹 北大北方生物圏フィールド科学センター 准教授

8

西岡純 北大低温研

9

MENSAH Vigan 北大低温研

10

小野数也 北大低温研

研究目的 最も温暖化の影響を受けている北極海での観測強化は国際的に急務であり、日本では北極域研究船(砕氷船)みらいIIの建造が進められ、2025年3月に進水式が行われ、2026年度に就航予定である。就航までの2年間は、この砕氷船を最大活用するための研究観測計画を練り上げていく期間に位置づけられる。本共同研究では、太平洋側北極海での海洋・海氷の物理・化学研究に焦点を絞って、情報交換を行いながら、過去に蓄積された全現場データを統合し、衛星データからの知見も合わせた融合研究を行う。そのうえで、北極域研究船によるベストな観測研究計画を立てるためのブレインストーミングを行う。
  
研究内容・成果 北極海の海氷が最も減少している海域である太平洋側北極海とベーリング海において、JAMSTEC、北大水産学部などで取得されたデータも含め、使用可能な全水温・塩分、酸素同位体データ(物理データと化学データの融合)から、これらの海域での海氷融解量の変動の解析を行った。ベーリング海では海氷融解量と衛星から見積もられた海氷生産量には明確に関係があること(現場と衛星データの融合)、太平洋側北極海では、多年氷の減少によるインパクトが明確に示された。ベーリング海の方の研究は、本共同研究のメンバー4人の共著論文として、Progress in Oceanographyに受理・掲載された。
本年度も、昨年度に引き続いて、2025年に3月17日に、北海道大学低温科学研究所講堂において研究集会「北極域研究船観測に向けての海洋・海氷研究(ハイブリッド)」を開催し、有効な情報交換と議論が行われた。本研究集会には、本共同研究メンバーを中心としながらも、対面から35名、オンラインから22名と予想を超える参加があった。プログラムは以下に示す通りである。
大島慶一郎(北大低温研):趣旨の説明
伊東素代(JAMSTEC):みらい2024航海観測
藤原周(JAMSTEC):みらい2025年航海概要とみらいII時代の新重点観測域設定に向けて
西野茂人(JAMSTEC):Synoptic Arctic Surveyと関連国際プロジェクト
赤根英介(JAMSTEC):「みらいⅡ」の建造と運用準備
田村岳史(極地研):研究船課題選定プロセス
和賀久朋(アラスカ大学・極地研):海外からみた、みらいIIへの期待 
猪上淳(極地研):海氷域での雲・大気観測(大気・海氷・海洋相互作用)
西岡純(北大低温研):低温研で取り組むオホーツク海氷域観測(2026年以降の構想)
上野洋路(北大水産):2026年おしょろ丸北極航海
渡邉英嗣(JAMSTEC):北極域研究強化プロジェクト ArCS III に向けて
大島慶一郎(北大低温研):科研費プロジェクト「気候変動を駆動する海氷:短期の北極」
早稲田卓爾(東大新領域):波浪海氷相互作用研究プロジェクト
豊田威信(北大低温研):みらいⅡの北極海海氷観測に向けて:そうや観測の体験をふまえて
二橋創平(苫小牧高専):機械学習による海氷目視観測
宇都正太郎(北大北極域研究センター): みらいIIでのLiDARによる海氷観測の可能性
松沢孝俊(海上技術安全研究所):船舶・海氷モニタリングとみらいIIの運航支援
Vigan Mensah (北大低温研):ベーリング海・ラブラドル海の塩分収支とその経年変動
Yen-Chen Chen(北大低温研):チュクチ海・ボーフォート海の塩分収支とその経年変動
阿部泰人(北大水産):ハイパースペクトル型マイクロ波放射計のアルゴリズム開発
  
成果となる論文・学会発表等 Mensah, V. Y-C. Chen, D. Nomura, H. Ueno, H. Chien, K. I. Ohshima: Multidecadal decline in sea ice meltwater volume and Pacific Winter Water salinity in the Bering Sea revealed by ocean observations. 230, 103377, Progress in Oceanography, 2025.