共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
札幌における積雪深の空間不均一性に関する観測的研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者/職名 | 主任研究官 |
研究代表者/氏名 | 庭野匡思 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
大河原望 | 気象庁気象研究所 | 室長 |
2 |
谷川朋範 | 気象庁気象研究所 | 主任研究官 |
3 |
青木輝夫 | 国立極地研究所 | 特任教授 |
4 |
的場澄人 | 北大低温研 |
研究目的 | 我々は、気象庁領域大気モデルLFMと積雪変質モデルSMAPの結合システムLFM-SMAPの開発を進めている。現在、LFM-SMAPが再現性を最も重視するモデル予測変数は積雪深である。従来、積雪深の観点でのモデル精度検証のために、超音波積雪深センサー等による1点の観測結果が利用されてきた。しかし、現実の積雪表面が完全一様になることは稀であるため、観測結果の不確定性は無視できない大きさを持つと考えられる。モデルの更なる高度化のためには、この不確定性を定量的に把握しておく必要がある。そこで、本共同研究ではマルチスキャン積雪深センサーを低温科学研究所露場の自動気象観測システムに導入して、札幌の積雪深の空間不均一性を観測する。 |
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研究内容・成果 | 当初計画通り、低温科学研究所露場の自動気象観測装置にマルチスキャン積雪深センサーを導入して、多点での積雪深観測データを取得することができた。このマルチスキャン積雪深センサーは、約1平米四方内における36点の積雪深を1分ごとに観測する。まず、取得した1分値を基に1時間値を作成した。前1時間に取得された60個の1分値の内の90%にあたる54個以上の観測値が正常な場合に限り1時間値を作成した。2023-2024冬期(センサーのテストのための予備的な観測期間;12月1日〜3月31日)と2024-2025冬期(本番観測期間;12月1日〜3月10日)に取得・作成した1時間値を解析したところ、36点の観測値の標準偏差が季節変化することはなく、標準偏差は概ね1 cm前後で季節内を通して推移することが分かった。この値は、公表されている一般的な超音波積雪深計やレーザー式積雪深計の測定精度と同等である。ただし、観測期間を通して標準偏差が突発的に1.5 cmを超えることが何回か散見された。そこで、積雪が草地とパッチ状に存在する可能性がある少雪時を解析から除いて、積雪が十分に存在する期間(36点の観測値の平均が10 cmを超えた期間)を対象として更なる解析を行った。その結果、前24時間の積雪深差が負の値を取る時(積雪深減少時)に標準偏差が大きくなる傾向が認められた。積雪深減少は、融解や昇華・蒸発による消耗のプロセスと圧密のプロセスのどちらか(あるいは両方)によって引き起こされる。今後は、マルチスキャン積雪深センサーによる測定データの蓄積を更に進めると同時に、積雪深の面的なばらつきが大きくなる条件をより詳細に解明する。そして、その知見をモデル精度検証に反映する。 |
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成果となる論文・学会発表等 |