共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
東南極における定着氷・棚氷の氷厚と氷河流動の関係 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 日大工学部 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 中村和樹 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
山之口勤 | RESTEC | 主幹研究員 |
2 |
佐竹祐里奈 | 日大大学院 | 博士後期1年 |
3 |
青木茂 | 北大低温研 | |
4 |
杉山慎 | 北大低温研 |
研究目的 | 白瀬氷河やトッテン氷河等の流動場および接地線を含む流動環境を、衛星観測されたデータを解析することにより導出する。とくに、Calving端の前後に注目して、主として合成開口レーダ(SAR)を用いることにより、氷河およびそれを取り囲む定着氷・棚氷の流動環境の時間的かつ空間的変動に関する考察を目指す。 |
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研究内容・成果 | 白瀬氷河の末端部はリュツォ・ホルム湾に流れ込み、湾に存在する定着氷によって直接的な流出が抑制されている。近年では、この定着氷の堰き止め効果により白瀬氷河の流動が抑制されていることが示唆されているが、両者の質量としての相互作用は定量的に明らかにされていない。このことから、本研究では白瀬氷河と定着氷の相互作用を理解するため、CryoSat-2搭載の高度計SIRALによるデータを用いて、リュツォ・ホルム湾における定着氷の氷厚を推定した。 CryoSat-2は、2010年に欧州宇宙機関(European Space Agency: ESA)が打ち上げた衛星であり、マイクロ波合成開口干渉レーダ高度計(Synthetic Aperture Interferometric Radar Altimeter: SIRAL)を搭載している。CryoSat-2/SIRALは観測地域によって観測モードが異なり、リュツォ・ホルム湾周辺は合成開口干渉(Synthetic Aperture Interferometric: SIN)モードにより観測されているため、本研究ではSINモードによる2011年から2022年のデータに静水圧平衡を仮定することにより、リュツォ・ホルム湾の定着氷の氷厚を推定した。本研究では9月から11月を春、12月から2月を夏、3月から5月を秋、6月から8月を冬と定義し、3ヶ月毎にCryoSat-2/SIRALデータをスタッキングして、2011年から2022年におけるリュツォ・ホルム湾の定着氷の氷厚を推定した。 2016年から2018年において、白瀬氷河末端部周辺の定着氷が崩壊と流出を繰り返していたことを、これまでのALOS-2/PALSAR-2データの流動速度推定結果から明らかにしてきた。このことから、白瀬氷河流線の延長線上かつ氷河末端から15 km下流の位置において定着氷の氷厚を抽出し、定着氷が安定して存在した2015年以前と定着氷が不安定であった2016年以降の平均氷厚をそれぞれ求めた。その結果、2015年以前における定着氷の平均氷厚は5.9 m、2016年以降では1.8 mであり、定着氷が安定であった氷厚は不安定であった時期と比較して3倍の厚さであった。これは、2015年以前の定着氷の氷種が多年氷であったが、定着氷の不安定な2016年から2018年では定着氷が崩壊と流出を繰り返したことにより氷種が一年氷となり、氷厚が薄くなったことに起因していると考えられた。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
佐竹祐里奈,中村和樹,山之口勤,青木茂: CryoSat-2/SIRAL データを用いたリュツォ・ホルム湾における定着氷の氷厚推定, 雪氷研究大会(2024・長岡), 2024. |