共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
ジエン型環状炭化水素および複素環化合物を含む星間氷への光照射実験 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 東京電機大学工学部 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 宮崎淳 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
柘植雅士 | 北大低温研 | 助教 |
研究目的 | 星間分子雲において観測される様々な分子種の生成には、氷星間塵内部または表面における化学・物理過程が重要な役割を果たしていると考えられている。シクロヘキサジエン (CHD, C6H8) は,二重結合が共役位置にある1,3-CHD と、六員環内で平行に存在する1,4-CHD の2つの異性体があり、異なる光化学反応の進行が知られているが,氷表面の反応に関する報告例はほとんどない。本研究では,1,3-CHDおよび1,4-CHDの低温アモルファス固体や含有アモルファス氷を作成し、紫外光照射で生成する化学種の同定や生成機構について検討を行なった。 |
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研究内容・成果 | 実験は全て,北海道大学低温科学研究所の宇宙物質化学グループの実験室にある真空装置で行なった。真空装置内に設置したAl 基板を極低温(〜10 K)に冷却し,ガスライン中で調整したCHD およびCHD/H2O 混合ガスを真空装置に導入し,冷却したAl 基板上に蒸着することで低温アモルファス固体試料および含有アモルファス氷試料を生成した。作製した試料に対して重水素ランプによる紫外光照射を行い,CHD の反応過程を赤外スペクトルの変化から検討した。また,比較のためベンゼン (C6H6) の低温アモルファス試料と含有アモルファス氷試料も用いた。1,3-CHD およびベンゼン の低温固体試料に重水素ランプの光を照射すると,反応物の吸収が時間に応じて減少した。このことは、紫外光照射によって光化学反応が進行したためと考えられる。固体パラ水素中に単離したベンゼンへの照射では,二環構造を有するDewar ベンゼンとベンズバレンが生成し,ベンズバレンからさらにフルベンを生成することが報告されている [Toh. et al., J. Phys. Chem. A 2015, 119, 11, 2683–2691]。しかし,本実験ではこれらの生成物は確認されなかった。また,観測された生成物のピーク位置は報告されているフルベンのものに近いものの完全な一致は見られなかったため,他の生成物も視野に検討を進めている。 1,3-CHD およびベンゼン含有アモルファス氷に対する重水素ランプの紫外光照射では,低温固体試料と比較して反応物の減少速度が増加した。その原因として、水分子との相互作用により六員環化合物の単分子的な光反応が促進される可能性に加え、紫外光照射により周囲の氷から発生するラジカル種(H,O,OHなど)が六員環化合物と反応したことが考えられる。反応生成物として二酸化炭素が見られたことは、後者の機構を支持する。今後は,密度汎関数法などの理論化学計算と合わせて実験結果について検討を行い,反応機構の解明を行う。 |
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成果となる論文・学会発表等 |