共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 雪崩災害予測のための降雪粒⼦⾃動観測および気象モデルとの⽐較
新規・継続の別 継続（R03年度から）
研究代表者／所属 （国研）森林研究・整備機構森林総合研究所
研究代表者／職名 研究員
研究代表者／氏名 勝山祐太

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 濱田篤 富山大学 准教授

2

 稲津將 北海道大学大学院理学研究院 教授

3

 白川龍生 北見工業大学 准教授

4

 佐藤陽祐 大阪大学 教授

5

 川島正行 北大低温研

研究目的 温帯低気圧に伴う雲粒の付着が少ない降雪により形成された低密度・低強度の積雪層（弱層）に起因する雪崩が度々発生し、スキー場や道路、登山者等に被害を与えている。しかし、このような弱層を考慮して雪崩災害を予測するためのには、気象モデルが降雪粒子の情報を正しく計算できることや降雪直後の新雪密度・強度を正確に把握する必要がある。本研究では、長期間の運用が可能な降雪粒子を自動観測する測器を制作し、北海道の日本海側、太平洋側、および内陸や本州日本海側の複数地点に設置することで、日本の各気候を網羅する広域・多地点観測を実施する。
　　
研究内容・成果 本研究では、平成30年度に貴所との共同研究(18G010)においてプロトタイプの開発を行った降雪粒子の自動観測装置を使用した。この観測装置は、安価かつ簡便な測定原理ながらも、市販のものと同等以上の精度で観測可能なため、広域展開に最適である。しかし、これまで使用してきた観測装置は、主に改良・工作の作業性を重視した設計になっており、長期的な観測に耐えうる耐久性を有していなかった。そこで、令和5年度共同研究（23G017）では、低温科学研究所技術部装置開発室の協力のもと長期的な観測に耐えうる耐候性を有する筐体の設計・試作を行った。本年度においても、低温科学研究所技術部装置開発室の協力のもと試作機の改良を行った。改良した観測装置は、北海道大学低温科学研究所（札幌市）に設置し、2024年12月から2025年3月に連続観測をおこなった。また、同じ期間に新潟県十日町市と岐阜県高山市にも従来使用していたプロトタイプ型の観測装置を設置し、合計3か所で連続観測を実施した。観測データを2025年3月末に回収する予定であり、日本の積雪地域の広い範囲における降雪粒子の空間数濃度と粒径・落下速度の頻度分布の1冬季間を通した連続的なデータ取得できる見込みである。札幌における観測では、改良した観測装置への着雪等による欠測は一切なく、1冬季と通して安定して観測することができた。
降雪粒子観測データは気象モデルの計算結果と比較するために利用し、札幌市におけるあられと雪片の比率をモデルがおおよそ再現できていることを確認し、その結果をJournal of Atmospheric and Oceanic Technology誌より発表した。また、同気象モデルを使い降雪粒子への雲粒付着量の多寡への温暖化影響を調べ、札幌に代表される北海道日本海側地域ではより高密度な降雪粒子となると予想された。この結果はJournal of Applied Meteorology and Climatology誌に掲載された。そのほか、日本海上における降水粒子の粒径分布の特徴に関する解析を行い、SOLA誌より発表するなどした。
　　
成果となる論文・学会発表等 Kondo， M. Y. Sato， Y. Katsuyama， and M. Inatsu， 2024: Development of an evaluation method for precipitation particle types by using disdrometer data. Journal of Atmosphere and Ocean Technology， 41， 1229–1246.
Sato， Y.， M. Kamada， M. Inatsu， and A. Hashimoto， 2024: Future change in the contribution of the riming and the depositional growth to the surface solid precipitation in Hokkaido， Japan. Journal of Applied Meteorology and Climatology， 63， 1097–1112.
Tsuji， T.， K. Yasunaga， and A. Hamada， 2024: Statistical characteristics of drop size distributions in the warm season over the Sea of Japan. SOLA， Vol. 20， pp. 255-263， doi:10.2151/sola.2024-034.
Tsuji， T.， A. Hamada， and K. Yasunaga， 2024: Three-dimensional identification of aggregated and rimed precipitation particles using GPM/DPR. American Geophysical Union Annual Meeting 2024 (AGU24)， Washington， D.C.， 9-13 December 2024.