共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

凍結耐性鱗翅目昆虫体液の氷結晶成長抑制に関するタンパク質の同定
新規・継続の別 継続(R05年度から)
研究代表者/所属 島根大学生物資源科学部
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 泉 洋平

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

落合正則 北大低温研

2

佐崎 元 北大低温研

研究目的 過去に実施した共同研究において、ニカメイガおよびアワノメイガの越冬幼虫の体液では氷結晶成長が抑制されていることを明らかにしている。また、この効果は体液を加熱することにより失われることから、不凍タンパク質等が関与していることが示唆されている。ニカメイガについてはすでにゲノム情報が公開されているが、その中に既知の不凍タンパク質と相同性の高い配列は見つけられなかった。そこで、本研究では両種越冬幼虫の体液中にあると考えられる、氷結晶成長抑制に関与するタンパク質の同定を目的とする。
  
研究内容・成果 凍結耐性を持つニカメイガおよびアワノメイガ越冬幼虫の体液からタンパク質を抽出し、ゲル濾過法により分離したところ、いくつかの画分で過冷却点の低下が観察された。その後、それらをさらに限外濾過フィルターを用いて分子量による細かな分離を行い、先の画分と同様に過冷却点の測定を行った。その結果、ニカメイガ、アワノメイガともに4つの画分において顕著な過冷却点の低下が認められた。本研究では、これらの画分の氷結晶成長速度の測定をおこない、最も強く抑制されている画分を明らかにし、氷結晶成長の抑制に関与しているタンパク質の単離を試みた。また、昨年の結果を踏まえて、それぞれの画分は透析などによりタンパク質濃度をあげたものを用いた。その結果、8つの画分ともに純水および緩衝液(リン酸緩衝液)よりも強い氷結晶成長の抑制が観察された。抑制効果が最も強かった画分はニカメイガ体液から得られたものであり、-3℃付近まで結晶成長が観察されず、-8℃付近まで結晶成長速度の測定が可能であった。これまで行った実験のなかで最も強い抑制効果が観察されたが、越冬幼虫の体液で見られたような極端な抑制(-15℃前後まで結晶成長が見られない)は観察されなかったため、タンパク質濃度をさらに2倍濃縮した後に同様の観察を行った。しかし、元の濃度の結果と有意な差は見られなかった。以上の結果から、ニカメイガ越冬幼虫の体液で見られる氷結晶成長の抑制は不凍タンパク質だけでは無く、糖や糖アルコールなど他の凍結保護物質との複合的な効果であるのでは無いかと考えられた。
  
成果となる論文・学会発表等