共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
北海道の山岳永久凍土監視体制の拡充 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北大・北極域研究センター |
研究代表者/職名 | 特任教授 |
研究代表者/氏名 | 岩花剛 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
曽根敏雄 | 低温研 | 研究者 |
2 |
原田鉱一郎 | 宮城大 | 准教授 |
3 |
横畠徳太 | 国立環境研 | 主任研究員 |
4 |
白岩孝行 | 北大低温研 | |
5 |
森章一 | 北大低温研 | |
6 |
藤田和之 | 北大低温研 |
研究目的 | 本研究の目的は,維持環境を急速に失いつつある北海道の山岳永久凍土の存在を確認し、今後の変化を監視するシステムを構築することである。高地における生態系および地形の変化を地上の情報だけではなく地中の凍結融解状態の変化と併せて考察できる山岳永久凍土監視システムを構築し,凍土分布と景観・生態系の変化予測に繋げる。 本研究期間には、長期・継続的モニタリングを念頭に、永久凍土の存在が予測されている羊蹄山および日高山脈における永久凍土調査を実施する。凍土掘削の後、測温孔を設置し、今後の変化を把握できる基礎的地温観測を開始する。さらに、採取した凍土試料を用いた物理化学分析から永久凍土状態の遍歴を探る。 |
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研究内容・成果 | 本研究期間には、日高山脈において永久凍土の存在を確認するため、最高峰幌尻岳山頂部において継続的に地中温度を測定するシステムを構築することができた。 関連省庁や自治体の許可を得た上で、2024年6〜7月にかけて幌尻岳山頂において軽量型掘削システムを用いて直径10 cm程度、深さ10 m程度の測温孔を掘削した。ケーシングの後、サーミスター地温センサーを設置し、地温測定を開始した。掘削時には地層コアの記述と写真記録を行い、後の物性分析のため持ち帰り保管している。同年9月下旬には2度目の調査を実施し、掘削孔に合った多深度測定用サーミスタケーブルを設置した。計測中の地温データは衛星通信により一日一回以上専用サーバーに送信されるシステムを設置することができた。太陽発電付きバッテリー電源が続く限り継続的に確認可能である。永久凍土は「2年以上0℃以下の温度である地中」と定義されており、その変化を捉えるためには数年間以上の観測が必要となる。 2024年7月の掘削時点から一週間程度5m深においてのみ0℃以下の温度帯を確認することができた。しかし、10m深までの温度プロファイルはその後徐々に昇温し、全体的に性の温度帯で推移した。この結果から考えると2024年時点で掘削地点において永久凍土の存在を確認することができなかった。掘削時に地中に熱を伝えてしまうことから、正確な地温測定の結果は来年度以降まで待つ必要がある。掘削による熱撹乱を考慮しても、同様の標高(約2000m)地点の大雪山系の永久凍土に比べると本掘削地点はかなり高い地温を持つことは確かである。 大雪山系や知床山脈の山体は、溶岩だけでなく火山灰が降り積もって出来上がっており、地中に水分を保持する空隙が存在している。こうした水分を含む地層が一旦凍結して永久凍土となると、氷の潜熱によって凍結状態を保持しやすい。一方、日高山脈は火山活動によるものではなく、造山運動によって形成された山地である。地殻プレート同士の衝突によってできた日高山脈の山頂部は、岩盤で構成されており、水や氷が存在できる空隙がほとんど存在しない。掘削時に確認したこの岩盤のほとんどは斑れい岩層であり、時折破砕層のクラックに空隙が存在しているのみであった。このような岩盤からなる日高山脈の地中は熱容量が小さく、気温の変化により敏感に反応すると考えられる。 近年数年間で年平均気温の異常な上昇を観測していることを考慮すると、それまで永久凍土が存在していたとしても、直近の期間に永久凍土から季節凍土に変化した可能性がある。 永久凍土の有無に関わらず、高山帯の地表層凍結動態をモニタリングすることは、現行の温暖化で地表面の生態系変化を理解するのに必要不可欠である。本研究は、これまでほとんど行われてこなかった日高山脈における地中環境の長期的なモニタリングの端緒となる。 |
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成果となる論文・学会発表等 | 現時点での実績はなし。 |