共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

超高解像度分析による鮮新世温暖期の植物プランクトン進化と環境変化の相互作用解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 産総研地質調査総合センター
研究代表者/職名 研究員
研究代表者/氏名 石野沙季

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

関宰 北大低温研

研究目的 南大洋では、珪藻の種分化や絶滅が氷期-間氷期変動スケールよりも大規模な気候変動に影響を受けてきたことが明らかになってきた。珪藻化石記録では、直近では約3Maの中期鮮新世温暖期に種分化・絶滅が数多く起こっている。しかし、従来の鮮新世温暖期における古環境記録の時間解像度は、環境要素の変化と珪藻の種分化・絶滅イベントの対応を精査するには不十分であり、それらの相互作用プロセスとタイムスケールは不明である。そこで本研究では、南大洋ロス海において、通常よりも1-2オーダーほど堆積速度の早い地点で得たコアを用いて、今までに無い解像度で鮮新世温暖期における海洋環境・生物進化過程の復元を行う。
  
研究内容・成果 MIS KM5の温暖期にあたる層準の下位には陸源性砕屑物の濃集層が観察されている。本研究では、その層準の上位から珪藻殻量が増加し、群集中の優先種の転換が認められた。さらに、バイオマーカーの分析から、TEX86Lで復元した表層水温の増加が、C18脂肪酸水素同位体比の減少が示された。これらの環境指標の変化は、海洋環境の温暖化及び氷床融解による淡水流入イベントを示唆している。さらに、各指標における大きな転換点との比較により、鮮新世に種分化した種が群集を優占する過程が復元された。この高解像度の分析結果から、一連の温暖化に伴う海洋環境の変化・氷床融解によってニッチの変化が起き、珪藻の種分化が起きていたことが示唆された。鮮新世温暖期の環境は近未来の温暖地球の類型とされており、これらの記録は今後の温暖化に伴う植物プランクトンの応答、さらには物質循環への影響の精査につながると期待できる。
  
成果となる論文・学会発表等