共同研究報告書提出

共同研究報告書

研究区分	一般研究
研究課題	中温メタン細菌及び中温水素生成細菌の低温適応可能性とその適応機構
新規・継続の別	継続（R04年度から）
研究代表者／所属	山口大学大学院創成科学研究科
研究代表者／職名	教授
研究代表者／氏名	今井剛

研究分担者／氏名／所属／職名
	氏　　名	所　　属	職　　名
1	福井学	北大低温研	教授

研究目的	通常のメタン発酵は35～37℃程度の中温発酵が主流であり、低温域でのメタン発酵はほとんど行われていない。その理由は明確で、低温域におけるメタン発酵に適応した細菌種が極端に少なく、中温域に適応した細菌群が多い。一方で、北海道に代表される低温地域で上記のようなメタン発酵を行うためには加温が必須である。そこで、本研究では低温域に適応したメタン発酵プロセス構築のために、最も菌叢の豊かな中温域の酸発酵細菌及びメタン発酵細菌をベースにそれらの低温適応化に取り組む。すなわち中温域の酸発酵細菌及びメタン発酵細菌の菌叢の豊かさを維持しながら低温域でも十分なパフォーマンスを発揮できるプロセスの開発を目的とする。
報告書用参考添付図面（その1）　報告書用参考添付図面（その2）
研究内容・成果	本研究では、低温域に適応したメタン発酵プロセス構築のために、最も菌叢の豊かな中温域の酸発酵細菌及びメタン発酵細菌をベースにそれらの低温適応化に取り組む。すなわち、どのような中温メタン細菌及び酸発酵細菌が低温適応可能であるか、それを解明し、その最適な低温適応化の手法を開発・確立することを最終目的とする。今年度の共同研究は以下のように進めた。ラボスケール実験の実施によりメタン生成細菌及び酸生成細菌（以下、中温細菌と称する）の培養温度を中温の35℃（3か月間保持）⇒30℃（3か月間保持）⇒25℃（5か月間保持）⇒20℃（5か月間保持）⇒15℃（5か月間保持）と段階的に低下させる。現在35℃（3か月間保持）⇒30℃（3か月間保持）まで終了し、現在25℃（5か月間保持）を実験中である。分析項目はメタンガス発生量、揮発性脂肪酸（VFA）の蓄積量、次世代シーケンサー（NGS）による菌叢解析である。なお、中温細菌（メタン生成細菌及び酸生成細菌）は、山口県宇部市の下水処理場の消化汚泥を採取して植種源とした。実験結果から、ガス発生量は35℃に比べて30度では低下したが、それほど大きな低下ではなかった。また、揮発性脂肪酸はどちらの温度でも酢酸の検出（500～600 mg/L）が主でプロピオン酸や酪酸の蓄積はほとんどなかった。アンモニアについては35℃で最大が953mg/L、30℃で最大が720mg/Lで、メタン細菌への阻害が起こる濃度域（1500～3000 mg/L）には達していなかった。次世代シーケンサー（NGS）による菌叢解析の結果、どちらの温度でもCoprothermobacter sp. やDefluviitoga sp.といった水素生産に関わる酸生成細菌、Acetomicrobium sp. やCandidatus Biprolaricaulis sp. といった酢酸生産に関わる酸生成細菌が優占種であった。また、どちらの温度でもMethanobacterium sp.といった水素資化性メタン生成細菌、Methanothrix sp.といった酢酸資化性メタン生成細菌が優占種であり、ほぼ菌叢に変化がなかった。これらの結果は35℃の酸生成細菌やメタン生成細菌が30℃に順調に適応できたことを示している。現在実験中の25℃の実験を進め、今後さらに温度を低下させ、研究を進める予定である。
報告書用参考添付図面（その1）　報告書用参考添付図面（その2）
成果となる論文・学会発表等	Shingo Nakamura， Tsuyoshi Imai， Exploring temperature dynamics: Implication for microbial communities and biogas production in low-temperature anaerobic digestion， International Symposium 2024， Between Yamaguchi University (YU)， Kasetsart University (KU) and Rajamangala University of Technology Thanyaburi (RMUTT)， Kasetsart University， Bangkok， Thailand， 9.17， 2024. 中村槙吾，椙山茄汰，髙橋律穂，今井剛，メタン生成菌の低温域での馴致とその適応性，環境技術学会年次大会，大阪公立大学杉本キャンパス， 9.25， 2024. 中村槙吾，今井剛，メタン生成菌の低温適応を目的とした微生物叢の挙動解明及び低温メタン発酵プロセスの高効率化，シーズ・ニーズ交流会2024，山口大学グリーン社会推進研究会，ホテルサンルート徳山， 11.13， 2024.