共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

環境代理指標を用いた過去の温暖期における南極氷床変動の復元
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 産業技術総合研究所
研究代表者/職名 研究員
研究代表者/氏名 飯塚睦

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

関宰 北大低温研

研究目的 産業革命前より~+2ºCの温暖な時代であったMIS 11cにおける南極氷床の融解史を100年間隔で復元し、「+2ºCまでの温暖化で南極氷床が急速な融解を引き起こす臨界点に達するか」を検証する。
  
研究内容・成果 地球の気候はこれまでに温暖な時代と寒冷な時代を繰り返しており、過去50万年間では産業革命前より全球平均気温が~+2ºC高い期間(Marine Isotope Stage (MIS) 5e, 11c)が存在していた。こうした過去の温暖期における南極氷床の応答の理解は、最大で+2ºCの温暖化が進行した場合の近未来の南極氷床の応答を制約するのに役立つ。申請者はこれまでの研究において、南極域の海底堆積物コア試料を用いて、~+1ºC温暖な時代 (MIS 5e:12-13万年前) に南極氷床の一部が大きく2回縮小し、海水準上昇に最大で0.8 m寄与していた可能性を示した (Iizuka et al., 2023)。この結果は、南極氷床が温暖化に敏感であることを新たに示したものの、+1ºCの温暖化では不可逆的かつ加速度的な氷床融解の臨界点には達しないことを示した。したがって、「果たして何ºCの温暖化で南極氷床は臨界点に達するか?」という核心的な問いが残されている。この問いに答えるには、MIS5eより温暖な時代(MIS11c:40-42万年前)における南極氷床の融解史を高時間解像度で調べる必要がある。しかし、MIS 11cにおける南極氷床の変動を復元できる試料と手法は限られており、この問いは未だ検証されていなかった。そこで、当初の計画通り、氷床融解水の環境代理指標となる植物プランクトン由来の脂肪酸の水素同位体比分析を南極海の堆積物コアU1536 に適用し、MIS11cの層準を10 cm間隔で分析(計100サンプル)した。その結果、気温と同調するような氷床融解のシグナルが捉えれた。この結果は、今後さらに他の古気候記録と比較しながら、解析していく予定であり、論文化を目指す。
  
成果となる論文・学会発表等 口頭発表
飯塚睦、関宰、最終間氷期における南極氷床変動、地球環境史学会、2024年11月、国立極地研究所(東京都立川市)