共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
深層学習を用いたナノスケール液中反応の観察手法の確立 |
新規・継続の別 | 継続(R05年度から) |
研究代表者/所属 | 金沢大学学術メディア創成センター |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 勝野弘康 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
木村勇気 | 北大低温研 | 教授 |
2 |
山崎智也 | 北大低温研 | 准教授 |
研究目的 | 本研究の目的は,溶液中のナノスケール現象水を明瞭に可視化することで,これまで想像でしかなかった液中での物質の物理化学的な挙動を確実に捉える手法を確立し,その振る舞いの定性的,定量的評価を行うことである. 透過電子顕微鏡はナノスケールの液中観察が可能ではあるものの,現段階ではバルクの中では不明瞭な像を取得できるのみである. 機械学習を用いることでこれまで難しかった不明瞭なその場観察TEM像のリアルタイムでの改善や物体検出によるレアイベントの確実な収集を目指す. |
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研究内容・成果 | 液中透過電子顕微鏡法(LC-TEM)では,水中のナノスケールの現象を可視化できるものの,水分子を直接可視化できるものではないため,水中に適当なプローブを作ってその挙動を可視化することで,水の揺動力の定量評価を行うことを考えた.そのプローブの候補として,観察中にまれに現れる気泡を検討した.気泡の発生は,観察につかう電子線による水分子の放射線分解に起因している.そのため添加物の影響もなくよいプローブになりえると考えた.しかし,物体検出を検証したところ,その検出がやや不安定であった.一般に,機械学習では膨大なデータが大前提であることに加えて,物体検出で行う教師あり学習では良質な教師データの作成が重要であると言われている.現状ではデータ数が少なく,LC-TEM像での良質・悪質な教師データが混在しており,この解決にはやや時間を要すると判断した. そこで,プローブとして微小な粒子を水中に加え,その挙動を解析することで揺動力の定量的評価を行うことを考えた.溶液セルとして独自に作成したグラフェンセルを用い,プローブ微小粒子としてフラーレン結晶を用いた.グラフェンセルは1[nm]以下程度の膜厚であり,フラーレン結晶は10[nm]以下の直径を持つ.この組み合わせで,多数のフラーレン結晶を観察することに成功している.ここで撮影された像を使って機械学習の教師データを作成し,フラーレン結晶を検出できるようにした.0.04[s]刻みで観察した像に物体検出を行い,フラーレン結晶の拡散係数を算出したところ,10^{2}[nm2/s] 程度であったことが分かった.先行研究では,窒化ケイ素膜セルを用いた水中の60[nm]金ロッドの拡散係数が10--10^{4} [nm2/s] であり,バルクの値である4x10^{6} [nm2/s] よりも数桁小さくなっていることから膜の影響を大きく受けていることが示唆されている.本研究でも膜の影響を無視できないものの,膜近傍の水の揺動力を反映したフラーレン結晶の拡散係数の算出に成功した. 本研究で解析の際に,挙動に指向性がみられた気泡周辺の粒子などを対象から外している.今後は気泡近傍などの粒子についても解析を進めたい. |
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成果となる論文・学会発表等 |
屋嶋悠河, 勝野弘康, 山崎智也, 木村勇気, グラフェン液体セル中に分散するフラーレン結晶の動的TEM観察, 第53回結晶成長国内会議(日本結晶成長学会), 工学院大(東京), 2024/11. |