共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
卓上型クライオ顕微鏡による雪・氷の観察手法に関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 株式会社ドキュメンタリーチャンネル |
研究代表者/職名 | 代表取締役 |
研究代表者/氏名 | 藤原英史 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
大野輝昭 | 株式会社テクネックス工房 | 代表取締役 |
2 |
木村勇気 | 北大低温研 | |
3 |
福井学 | 北大低温研 | |
4 |
山崎智也 | 北大低温研 |
研究目的 | 雪や氷の結晶を無蒸着のまま走査電子顕微鏡(SEM)で直接観察できる技術を開発することは、低温研の創設に関わった中谷宇吉郎先生によって進められた雪や氷の研究のさらなる発展につながる。研究代表者の藤原と、分担者の大野は、世界で初めてのコンセプトとなる卓上型クライオ光顕-低加速電圧SEMの開発を進めている。これまでの大型のクライオSEMとは異なり、小型で、持ち運びが可能なため、様々なフィールド、環境に持ち込んで、凍結試料を光および電子で観察することが可能である。研究開発機を用いて、低温研の専門家らと、雪・氷の結晶などの観察を実際に行い、観察手法や条件などを検討しながら、新規性の高いデータを取得する。 |
研究内容・成果 | 2024年12月に、低温室において、雪の結晶を光学顕微鏡&SEM観察するための条件検討を行った。試料となる数ミリ程度の大きさの人工雪の結晶は、低温室(-15℃前後)にて鉛直過冷却雲風洞で人工雪の実験を行っている高橋庸哉名誉教授(北海道教育大学)に作製をお願いした。 雪の結晶の多くは、薄く平らで、腕を六方向に伸ばした状態で広がっており、立方体や多面体に近い通常の氷よりも、体積当たりの表面積が大きい。そのため、高真空環境下にあるSEMの試料室内(10-3Pa程度)に導入すると、瞬く間に昇華して消えてしまう。また、SEMの観察中は、電子線を氷に照射することによって、熱が発生するため、さらに昇華が促進されることになる。雪の結晶をSEMで撮影するには、まず、昇華速度をできる限り遅らせるための環境条件を探る必要がある。 卓上型クライオ顕微鏡の準備として、試料室内にある試料ホルダーの温度を、あらかじめ-120℃以下に冷やしておいた。また、SEMで実際に氷を観察しながら、試料室に設置したニードルバルブをゆっくりと開き、どこまで真空度を下げて撮影ができるか、検証した。その結果、10-1Pa程度での撮影は可能で、また、かなりノイズの大きい画像になるが、1〜2Pa程度でも、観察可能であることなどを確認した。この条件は、試料の状態や温度によっても変わると考えられ、今後も、さらなる検証を続ける。 次に、光学顕微鏡で撮影を行う方法を検討した。開発中の卓上型クライオ光顕-低加速電圧SEMは、試料台の位置を動かさずに、光学レンズと電子レンズをシフトさせることで、容易に同軸で観察することができる仕組みを備えている。今回は、SEMで撮影をする前に、光学レンズで撮影を行うが、光で雪の結晶を撮影する数分間も、試料室が真空下にあるため、わずかではあるが、実際には、昇華が進んでしまう。そこで、光学レンズで撮影する数分間だけは、-120℃以下に冷やした試料ステージのある試料室の真空をやぶり、大気圧に戻すことを検討した。常温の部屋で大気圧に戻す場合、冷やした試料ステージに空気中の水分が触れ、霜がつき、装置に支障をもたらすことを防止するため、窒素や二酸化炭素を試料室内に導入する。今回、低温室の温度が低く、水蒸気量も少ないことから、低温室の大気をそのまま導入してみたところ、試料ステージ周りにわずかな霜が着く程度であることがわかった。この霜は、その後の真空引きによって、比較的短時間の間に、昇華して消える程度であることも確認できた。したがって、光学レンズでの撮影の間は、あえて、一度、大気圧に戻して行うことが、雪の結晶の形を保つ上で、有効であると判断した。 上記の条件検討の結果、人工雪の結晶を、アルミ試料台に張り付けたカーボンテープの上に静置して、試料室に導入し、光と電子線で同軸撮影することに成功した。今後、さらなる手法の改良を進めていく予定ある。 |
成果となる論文・学会発表等 |