共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

固有透過度と微細構造の測定による積雪の間隙特性に関する研究(2)
新規・継続の別 継続(R05年度から)
研究代表者/所属 防災科学技術研究所雪氷防災研究センター
研究代表者/職名 特別研究員
研究代表者/氏名 荒川逸人

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

保科紳一郎 鶴岡工業高等専門学校 准教授

2

的場澄⼈ 北大低温研

研究目的 本研究の目的は、積雪の通気度測定とX線CTによる微細構造の解析により、積雪の間隙特性を明らかにすることである。積雪の間隙特性のモデル化は、融雪水の浸透現象や底面流出量の予測をおこなうことで、全層雪崩発生メカニズムの解明につながるだけでなく、融雪水の流出量は融雪出水予測の高精度化に繋がる。また、積雪3次元構造の情報については現地でその情報を得られる手段がないことから、積雪の間隙特性情報と3次元情報を組み合わせることで、現地での積雪3次元構造の情報推定方法へ発展させることを試みる。
  
研究内容・成果 固有透過度は実験的に密度と平均粒径に関連づけられることが多く、これまでは主にしまり雪による関係式(Shimizu, 1970)が使われてきていたが、荒川他(2010)により雪質に依存しない関係式が求められた。Calonne et al.(2012)は3次元構造モデルの数値解析をおこない荒川他(2010)の観測を裏付ける結果を示した。しかし、積雪の迂回率や有効間隙率といった間隙特性については明らかにされていない。間隙特性の理解は雪の水分保持曲線(WRC)の決定に貢献するとともに、全層雪崩の発生機構についても理解が深まると考えられる。
様々な積雪の間隙特性関係を明らかにする一環として、本共同研究では、北海道道東地域で観測されるしもざらめ雪を研究対象とし、陸別町周辺において、現地積雪断面観測および雪試料採取をおこなった。観測項目は、通常の積雪断面観測に加え、通気度の計測をおこなった。通気度はダルシー則に従い積雪内を通過する流量とその差圧により求められ、過去に測定したしもざらめ雪と比較して問題のない値を得ることができた。通気度は流体の特性を排除し固有透過度へ変換される。予定していた改良型通気度計は開発が遅れたため、これまで使用してきた通気度計での測定となった。
採取した積雪試料は1Brドデカンで固定し防災科学技術研究所に持ち帰った。低温室X線CTにて3次元構造を解析した。1Brドデカンが液体から個体になる際に取り残された気泡や結晶粒界に隙間ができる問題があり、氷・空気・1Brドデカンを画像解析で分離することが難しくなる。そこで、1Brドデカンを一度液化させて気泡を取り除く手法を取り入れたものの、その際に粒子の結合が崩れてしまった。粒子形状そのものは測定できるものの、間隙構造が破壊されてしまった。現在はこの対策について検討をおこなっているところである。
今後、これまで観測した様々な雪質とX線CTから求めた微細構造のデータを解析することで、これまであまり進んでいなかった積雪の間隙特性について整理し、更には不飽和流の研究を発展させるとともに、将来的には雪質の定量化=積雪の数値的分類に繋げる予定である。
  
成果となる論文・学会発表等