共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

地球観測データのクラウド処理がもたらす雪氷学・氷河学の深化と可能性
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 立正大学地球環境学部地理学科
研究代表者/職名 特任准教授
研究代表者/氏名 永井裕人

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

佐藤洋太 海洋研究開発機構 PD研究員

2

大沼友貴彦 宇宙航空研究開発機構 プロジェクト研究員

3

阿部隆博 三重大学大学院生物資源学研究科 研究員

4

縫村崇行 東京電機大学 准教授

5

大川翔太郎 総合研究大学院大学 複合科学研究科 博士2年

6

市井和仁 千葉大学CEReS 教授

7

脇田菜月 東京工業大学 修士課程1年

8

田口飛鳥 早稲田大学大学院創造理工学研究科 修士課程2年

9

髙橋宥登 早稲田大学大学院創造理工学研究科 修士課程2年

10

砂子宗次朗 防災科学技術研究所雪氷防災研究センター 特別研究員

11

藤田耕史 名古屋大学大学院環境学研究科 教授

12

山本雄平 千葉大学CEReS 特任助教

13

末吉哲雄 海洋研究開発機構 特任主任研究員

14

道下 亮 RESTEC 課長代理

15

佐藤 現 早稲田大学大学院創造理工学研究科 修士課程2年

16

伊藤知明 東京大学工学系研究科社会基盤学専攻 修士課程2年

17

面来 貴志 早稲田大学大学院創造理工学研究科 修士課程2年

18

近藤達哉 東京大学大学院 修士課程1年

19

杉山慎 北大低温研

20

箕輪昌紘 北大低温研

21

近藤研 北大低温研

22

Wang Yefan 北大低温研

研究集会開催期間 令和 5 年 9 月 28 日 ~ 令和 5 年 9 月 29 日
研究目的 近年、基本的な衛星リモートセンシング解析の多くは、クラウド処理を利用することで、誰でも無償で簡単に実施することができるようになった。クラウド処理ではデータをダウンロードする必要がないことから、膨大なシーン数を処理でき、空間方向・時間方向へ自在に拡張させることができる。しかし日本の雪氷学コミュニティにおいてまだまだ一般的ではなく、一部の研究者の利用に限られている傾向がある。本研究集会では、雪氷学・氷河学および地球観測データに興味関心の強い研究者を中心に、議論・技術交流の場を設ける。互いが得意とする手法を紹介し、課題となっている部分への解決にも時間をあて、活気ある専門コミュニティの形成を図る。
  
研究内容・成果  本研究集会は、2023年9月28日と29日、北海道大学 低温科学研究所 講堂において実施された。参加者は、研究所内外合わせて30名程度であった。以下がプログラムの概略である。
(1日目)
・衛星データクラウド処理に関する基調講演
・事例紹介「GEEを使った様々な地球科学研究」
・ワークショップ「GEEを使いこなすための技術共有」
・総合議論・質疑応答
(2日目)
・グループワーク「雪氷リモソン」
・成果発表・議論
 本研究集会の特色として、当日結成された4-5人のグループでの短期間の共同解析を実施した。「雪氷分野」の「リモートセンシング」の「ハッカソン」であることから、略して「雪氷リモソン」と称した。各グループにおいて以下から課題を選び、GEEを利用した研究の具体的提案と試作アルゴリズムをまとめ、最終日に成果発表した。
研究テーマの選択肢;
1. グリーンランド氷床の変動に関する解析
2. グリーンランド沿岸地形に関する解析
3. 南極大陸・海洋に関する解析
4. 西南極の氷床・氷河・棚氷変動に関する解析
5. 山岳氷河変動に関する解析
6. その他の雪氷変動
 一例として、あるグループでは、過去約20年間の温暖化がグリーンランド北東部の雪氷面にどのような変化をもたらしたかを調査した。MODISやLandsatのTrue color画像では、グリーンランド北東部は2000年から2022年でほとんど変化がないように見えるが、地表面温度データでは明らかな温暖化傾向が確認できた。NDSIとNDWIの変化が特に大きかったエリアに焦点を当て、Sentinel-1の後方散乱係数の振幅情報を用いて2020年から2022年の時系列分析をしたところ、各年夏季に雪氷面の融解や降雨を示唆する急激な振幅の変動が確認された。今回の解析を通して、光学センサの地表面温度や分光指標を併用することにより、目視では捉えにくい極域の雪氷面の変動を高空間分解能で検出できることが明らかになった。
 この研究集会では敢えて一般的な大学院教育や大型研究事業とは異なる短期集中型の活動スタイルを採用した。そのため大雑把なアイデアや試みでも構わないという柔軟性が求めらた。新たな発想やアプローチを生むためは、遠慮せずに多少の間違いがあっても構わないとの姿勢が強調される。そして異なるバックグラウンドを持つメンバーで知識と経験を共有することが欠かせない。特に各グループが作成したコードを積極的に共有することは、解析方法の幅を広げ、将来の研究力向上にも寄与すると予想された。
 地球科学データのクラウド処理については、日本語の書籍が極めて少ないのが現状である。基本的なコンピュータ言語は大学生向けの教科書で習得可能であるが、そこから先の応用的内容は、本研究集会のような会合に出席する方が効率的かもしれない。
  
研究集会参加人数 30 人