共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

海洋の統合的理解に向けた新時代の力学理論の構築
新規・継続の別 継続(R04年度から)
研究代表者/所属 九大応力研
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 木田新一郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

古恵亮 海洋研究開発機構 主任研究員

2

浮田甚郎 東京大学大気海洋研究所 特任研究員

3

田口文明 富山大学学術研究部都市デザイン学系 教授

4

勝又勝郎 東京大学理学系研究科 教授

5

相木秀則 名古屋大学宇宙地球環境研究所 准教授

6

吉川裕 京都大学理学部 教授

7

長井健容 東京海洋大学学術研究院海洋環境学部門 准教授

8

田中祐希 福井県立大学海洋生物資源学部 准教授

9

増永英治 茨城大地球・地域環境共創機構 助教

10

神山翼 お茶の水女子大学基幹研究院 助教

11

藤原泰 神戸大学 大学院海事科学研究科 助教

12

大貫陽平 九州大学応用力学研究所 助教

13

三寺史夫 北大低温研

14

中村知裕 北大低温研

研究集会開催期間 令和 5 年 11 月 21 日 〜 令和 5 年 11 月 22 日
研究目的 海洋の流体運動を記述する海洋力学では地球流体力学が中心的な役割を担っていたが,現在は大気・陸域・海底との物質・運動量・エネルギー交換,波動・渦・微細乱流によるエネルギー伝達および物質拡散と生態系の形成,といった従来の理論的枠組みでは扱うことの困難なプロセスが重要課題として位置付けられている.研究集会では,流体力学・物理学・統計学・計算科学など様々な分野で用いられている理論的枠組みや解析手法を紹介しあうことで,体系的な理解を進め“新時代” の海洋力学とも呼ぶべき学問領域を構築することを目指す. 特に各分野の共通課題である「スケール間相互作用・要素間相互作用」に焦点を当てる.
  
研究内容・成果 2023年11月に低温研大講堂にてブレーンストーミング形式の研究集会を開催した.参加者が現在取り組んでいる研究テーマを紹介し,互いの疑問点を解決しながら理解を進めることで可能な限り多くのアイディアを提示しあい,当該分野に関する最新の知見を全員で共有した.本年度は,博士課程の学生による発表があり,研究テーマのレビューを丁寧に行いながら議論が進められた.海面・海氷から深海,そして沿岸から外洋域と幅広い海域を対象とした発表があり,当研究集会の開催目的で掲げた海洋力学の「体系的な理解」に繋がった有意義な研究集会となった.研究集会のプログラムは以下の通りである.

大貫陽平: 回転成層流体のトポロジカル指数とバルク-エッジ対応
寺田雄亮: 赤道太平洋における中層海流の駆動メカニズム
浮田甚郎: 応力の非対称成分に関して
松田 拓朗: 平均場の慣性効果:偏西風に対する南極周極流の流量応答を決める新たなメカニズムの提案は?
藤原泰: 波浪による岸向き海水輸送:沿岸海洋動態への影響
神山翼: 熱帯と中緯度の解の接続について
勝又勝郎: 海洋の乱流が対数正規分布する件について
古恵亮: 台風に対する深海の応答
田中祐希: 地形に沿って伝播するsuperinertialな内部潮汐波
木田新一郎: 沿岸ボックスモデル

特に活発な議論が行われたのは,寺田による「赤道太平洋における中層海流の駆動メカニズム」,浮田による「応力の非対称成分に関して」,藤原泰「波浪による岸向き海水輸送:沿岸海洋動態への影響」である.赤道太平洋は波動伝搬が力学的に重要なウェイトを占めている海域となっており,寺田の発表では,その中でも中層において駆動されるEquatorial Deep Jetsのメカニズムについて紹介があった.Ascani et al. (2010) をはじめ、これまでの研究のレビューをしながらYanaiWaveが果たす役割について議論が行われた.浮田の発表では,海洋モデルとあわせて開発が進んできた海氷モデルが、その開発の過程で抱えることとなった力学的な問題点についての紹介があった.現行の海氷モデルが構築された歴史的な経緯について学ぶとともに,海氷に加わる応力の整合的な取り扱い方とその中で現れる特異点の問題と解決方法についいて,応用数学的な側面から意見がなされた.藤原の発表では,ストークスドリフトに伴う質量輸送についての紹介があった.特に最新の海洋モデルを用いた数値実験の研究成果について考察が行われ,取り扱うべき海域や条件についての意見がなされた.
  
研究集会参加人数 16 人