共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
原子間力顕微鏡による低温光化学反応の模擬試料の観察 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 東大新領域 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 杉本宜昭 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
岩田孝太 | 東大新領域 | 特任研究員 |
2 |
大場 康弘 | 北大低温研 | |
3 |
日高 宏 | 北大低温研 |
研究目的 | 星が誕生する前の段階である星間分子雲において、原子から分子、さらにより複雑な有機分子が形成されていく過程を分子進化という。望遠鏡を用いた星間分子雲のこれまでの観測で、様々な有機分子の存在が確認されている。生命の材料となりうるような有機分子までもが観測されており、複雑な有機分子がどのようなメカニズムで形成されるのかを明らかにすることが重要である。そこで、本研究では低温光化学反応で得られた有機分子を原子間力顕微鏡(AFM)によって分析する。これまで反応生成物の分析のために行われてきた、種々の分光計測法とは異なったアプローチにより、相補的な情報を得ることを目的としている。 |
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研究内容・成果 | AFMは鋭い探針を試料表面に近づけ、探針先端の1つの原子と表面の個々の原子との間に働く力を検出して、表面の原子像や有機分子の形状像をとる。特に、探針先端にCO分子などを付着させて、斥力を用いたイメージングを行うことによって、個々の有機分子の骨格を明瞭に可視化することができ、有機分子の構造について直接的な情報を得ることができるため、分光学的なスペクトル形状からは同定が困難な複雑有機分子の同定が可能になる。低温研において、模擬試料である有機分子を作製し、それを東大の柏キャンパスに設置されている代表者の研究室に運び、AFM装置に導入した。超高真空環境において、金属基板に模擬試料を蒸着して、有機分子の観察を行った。 模擬試料が付着したシリコン基板をAFMの超高真空装置に導入した。まず、超高真空装置でCuやAuの金属基板の清浄表面をアルゴンイオンスパッタと500度程度の加熱のサイクルを何回か繰り返して作製した。準備した原子レベルで清浄な金属基板をAFMの顕微鏡ユニットにセットして、基板表面と探針が正常であることを確かめた。この際、表面に不純物が吸着していると分析に影響を与えるので、注意深くコントロール実験を行った。その後、超高真空中でシリコン基板に電流を瞬間的に流して、シリコン基板を昇温し、有機分子を昇華させて金属基板に模擬試料の有機分子を蒸着し、金属基板をAFMの顕微鏡ユニットに再びセットして、5 Kの低温で観察を行った。表面上で孤立して吸着した単一の有機分子を見つけたら、AFMの高分解能観察を行った。そのために、探針先端にCO分子を付着させ、高さ一定モードで探針を分子上でスキャンさせ、探針にかかる力をマッピングして、分子構造を同定した。模擬試料を蒸着器から昇華させる際に、昇温する温度によって分子の吸着量や昇華する分子の種類が変わると考えられるので、低い温度から徐々に温度を上げながら分子蒸着した試料を準備して、評価を行った。 これまでの分光学的な手法などによって、模擬試料に含まれる有機分子の統計的な情報が得られてきたが、今回、具体的な有機分子の形状に関する情報を得た。本手法によって分子進化のモデル構築のための有力なデータが得られることがわかった。 |
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成果となる論文・学会発表等 |