共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
星間塵吸着分子のカイラリティ検出法の開発 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 新潟大学理学部 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 副島浩一 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
下西 隆 | 新潟大学理学部 | 准教授 |
2 |
渡部直樹 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 地上における⽣体分⼦ホモキラリィティーの起源の有⼒な説として,氷星間塵上での化学物理過程が挙げられる。本研究計画の最終的な⽬標は、実験装置内に作製した擬似氷星間塵表⾯に吸着した光学活性分⼦の光学異性体⽐を⾼感度でその場観測する⼿法を開発し,氷表⾯で起こりうる微⼩な光学異性体過剰の発現を⾼時間分解で追跡観測し、ホモキラリティーの発現へ繋がる最初期の極低温分⼦反応に迫ることである。本課題では,その前段階として、円偏光を使った共鳴多光⼦イオン化法(REMPI)が氷表⾯の光学異性体分別検出に有効かどうかを検証する。 |
研究内容・成果 | 円偏光REMPI法による光学異性体分子のカイラリティ決定の成否を確認することが当面の目標であるが、今年度は直線偏光から円偏光に変換する1/4波長板の準備が間に合わなかった。そのため、まずは直線偏光で気相状態の光学異性体分子に対するREMPI実験を進めることにした。光学異性体分子の試料として、10Pa程度の蒸気圧があるため、広く気相実験で用いられているカンファーのD体を選択した。宇宙物質科学・渡部グループの現有装置環境で、カンファーに対するREMPIが可能か否かの確認をおこない、次年度の円偏光REMPI実験につなげることを目的とした。先行研究によってカンファーは408.8nmのレーザー光で(2+1)REMPIが可能であることが報告されているので、その波長領域を中心に、光パラメトリック発振器を使ってレーザーの波長を405〜411nmで掃引して光イオンのTOFスペクトルの測定をおこなった。カンファー(C10H16O)は多光子イオン化の際に解離を伴い、必ずしも親イオン(C10H16O)+が観測されるとは限らないことが予想された。実際に、154auの質量を持つイオンが検出できるような設定で実験をおこなったが、親イオンらしき信号は検出できなかった。一方、解離イオンと思われるO+、C+の信号が検出された。そこで、O+の信号強度のレーザー波長依存を測定し、先行研究で報告されているカンファーに対するREMPIで得られる全イオン収量の波長依存スペクトルと比較することにした。添付した図が測定した波長依存スペクトルである。先行研究のスペクトルはシャープなピークで構成されているのに対して、今回測定したO+信号強度の波長依存がバンドピーク的な構造となっていることが分かる。その理由は今のところ不明であるが、ピーク幅の違いを別にすれば、先行研究のピーク構造に類似した結果が得られたことから、カンファーに対してREMPI実験が可能であることは確認できた。 |
成果となる論文・学会発表等 |