共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
グリーンランドにおける海洋生態系と氷河変動の相互関係 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北大水産科学研究院 |
研究代表者/職名 | 博士研究員 |
研究代表者/氏名 | 大槻真友子 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
Evgeniy Podolskiy | 北大北極域研究センター | 准教授 |
2 |
長谷川浩平 | 北大水産科学研究院 | 助教 |
3 |
富安信 | 北大水産科学研究院 | 助教 |
4 |
Jean-Baptiste Thiebot | 北大水産科学研究院 | 助教 |
5 |
櫻木雄太 | 北大環境科学院(指導委託:京大野生研) | 博士課程4年 |
6 |
小川萌日香 | 北大環境科学院(指導委託:京大野生研) | 博士課程3年 |
7 |
杉山慎 | 北大低温研 |
研究目的 | 北極域沿岸の先住民族は,海棲哺乳類,海鳥,魚類を古来から狩猟対象としており,彼らの重要な資源である.グリーンランドには多くのカービング氷河があり,その周辺海域は,氷河の融解によってプルームが発生し生物生産が高い.しかし急速な温暖化に伴い氷床や氷河の融解が進んでおり,海洋に流出する融解水の増加による海洋生物への影響が懸念されている.そのため,グリーンランド周辺海域に生息する海洋生物の生態や生物間相互作用を長期的に把握することが重要である.そこで本研究の目的は,複数の手法を用いて,グリーンランド北西部のInglefield Bredning周辺海域における海洋生物の生物間相互作用と氷河変動との関係性を明らかにする. |
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研究内容・成果 | 低温研において2023年4月14日と2024年3月14日,15日に会合を行った.参加人数は4月が15名(現地11名,オンライン4名),3月14日は24名(現地15名,オンライン9名),15日は27名(現地18名,オンライン9名)であった.4月の会合では,これまでの調査結果と2023年度のフィールド調査に向けて調査内容を話し合った.3月の会合では,以下の調査結果を共有し議論した. 2022年に係留した設置型魚群探知機1台および高周波水中録音装置2台を回収した.設置型魚群探知機から得られた生物量(魚類や動物プランクトン)は,夏季に増加し冬季に減少した.また,秋季には生物の日周鉛直移動が観察され,日照時間と関係が示唆された.録音装置から得られたデータも同様に,音声解析ソフトウエアを使い海棲哺乳類の音声の季節変動を調べた.イッカクの音声は海氷が後退した時期にのみ録音があり,海氷と密接した関係があることが示唆された. 海棲哺乳類および海鳥の目視調査や海洋観測の結果から,アザラシは氷河末端を好む種と沖合を好む種がいることが明らかとなった.これは,餌生物の違いやまた,海鳥はフィヨルドによって分布する種が異なり,氷河からの融解水を含む,フィヨルド内の海洋環境が影響していることが考えられた. イッカク,アザラシ,ヒメウミスズメなどの胃内容物の分類を行った.また,生物検体(筋肉・ヒゲ・羽)を安定同位体比分析にかけ食性を把握し,食物網を解析した.2022–2023年に採取したヒメウミスズメの水銀濃度の測定も行った.ヒメウミスズメのヒナの餌生物はカイアシ類が半分以上を占めていたが,2022年は端脚類の割合がと高い傾向にあった. |
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成果となる論文・学会発表等 |
Otsuki M, Ogawa M, Watanuki Y, Mitani Y, Ishizuka M, Ikenaka Y, Thiebot JB (2024) Brood patch size as a field indicator for feather mercury concentration, but not plastic ingestion, in a harvested seabird of the high Arctic: The little auk Alle alle. Polar Sci. 101053. Podolskiy E, Ogawa M, Thiebot JB, et al. (in press) Acoustic monitoring reveals a diel rhythm of an arctic seabird colony (little auk, Alle alle), Commun. Biol. Sakuragi Y, Ogawa M, Otsuki M, Thiebot JB, Wang Y, Sugiyama S, Mitani Y. Spatial distribution of seals during summer in Inglefield Bredning, northwestern Greenland. The 38th Intl Symp on the Okhotsk Sea & Polar Oceans, 紋別, 2024/2/20 (青田賞受賞) Thiebot JB, Otsuki M, Yushima A, Ogawa M, Sakuragi Y, Tajima H, Tomiyasu M, Podolskiy E, Hasegawa K,… and Sugiyama S. Multi-component approach to marine food webs in Inglefield Bredning coastal ecosystems, northwestern Greenland. The Symp on Polar Sci. 立川, 2023/11/16 |