共同研究報告書提出

共同研究報告書

研究区分	一般研究
研究課題	凍結・融解作用が湿原土壌水からの鉄溶出過程に与える影響の解明
新規・継続の別	新規
研究代表者／所属	岐阜大学応用生物科学部
研究代表者／職名	教授
研究代表者／氏名	大西健夫

研究分担者／氏名／所属／職名
	氏　　名	所　　属	職　　名
1	白岩孝行	北大低温研

研究目的	一般に、湿原内における土壌水の溶存鉄濃度は高い傾向にあり、申請者らの研究によると、湿原土壌の凍結・融解条件が深く関わっていることがわかっている。しかし、土壌の凍結・融解がどのように土壌水・河川水の溶存鉄濃度に影響を及ぼすかは未解明である。温暖化の進行により、永久凍土・季節凍土を有する寒冷圏の河川水中に含まれる溶存鉄が大きく変化する可能性があり、沿岸や外洋の生物生産にも直接・間接的に影響を与えるものと思われる。そこで、湿原の土壌水に含まれる溶存鉄濃度が季節凍土の発達と融解により、どのように変化するかを北海道北部の猿払川にある丸山湿原において通年観測することによって明らかにすることを目的とする。

研究内容・成果	本年度は、観測体制の整備ならびに、秋季から冬季にかけて計3回（9月23日、11月4日、3月5日）の定期観測を実施した。観測体制の整備として、猿払川流域上流丸山湿原内にて、猿払川へ隣接した地点を選定し、当該地点にて深度10mまでの泥炭コアをピートサンプラーにより採取した。同時に、先端部にケーシングを施した塩ビ管の地下水観測井を、深度1， 2， 4， 5.77mの4深度に埋設するとともに、別途深度6mまで掘削した単孔に深度別に地温計を設置し、0， 1， 2， 3， 4， 5， 6， 6.91mの各深度において地温を計測した。さらに、土壌水採水用のテンションライシメータを深度10， 20， 30， 50，120， 140cmに埋設した。得られた結果は次の通りである。泥炭コア採取時の観察と土性分析により、深度7m程度までは有機質の泥炭土壌が続き、それ以深において粘土質が若干増加する傾向にあることがわかった。次に、地温プロファイルより、当該地点においては、11月初旬～12月中旬に表層付近が凍結し季節凍土が形成された後、積雪の影響もあり概して地表面下であっても融点付近に保たれ、深度6m付近では8～9℃程度の地温が保たれることがわかった。また、地下水位は9月、11月の観測時には、地表面下1m程度に位置したが、積雪下の3月5日にはほぼ地表面付近にまで達していた。さらに、水質については、溶存全鉄濃度、ならびにDOC濃度を計測した結果、溶存全鉄濃度は地表面付近において10㎎/L以上と高い値をとり、1m程度の深度までは若干の減少傾向を持つもののさらに深度が深くなると濃度が再度上昇していく傾向を示し、最深部では最大で38㎎/Lの値を示した。また、秋季、冬季との間での明瞭な相違はみられないものと思われるが、より多くのデータ蓄積が求められる。いくつかの例外はあるもののDOC濃度と溶存全鉄濃度との間には概して良い相関がみられ、腐植様物質と鉄との間に共役的な挙動があることも示唆された。今後は、観測を継続しデータを蓄積するとともに、鉄のソースと流出メカニズムを解明していく必要がある。

成果となる論文・学会発表等