共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 オホーツク海における高解像度海氷・海洋低次生態系モデル開発研究
新規・継続の別 継続（R03年度から）
研究代表者／所属 水産研究・教育機構
研究代表者／職名 主任研究員
研究代表者／氏名 中野渡拓也

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 黒田寛 水産研究・教育機構 グループ長

2

 三寺史夫 北大低温研 教授

3

 中村知裕 北大低温研 講師

4

 西岡純 北大低温研 教授

5

 佐伯立 北大低温研 博士研究員

研究目的 我が国に隣接する季節海氷域オホーツク海では、冬季の海氷減少をはじめとした海洋環境の変化が極めて著しく、その海洋生態系や水産資源への影響評価が急務となっている。特に、2000年代半ば以降、日本周辺海域におけるサケの回帰率やサンマの漁獲量が低下しており、長期的な気候変動に伴う海洋環境の変化が冷水性水産資源に影響を及ぼしていることが懸念される。本研究課題では、オホーツク海に特有の物理・化学・生物過程を考慮した低次生態系モデルの研究開発を行うと共に、オホーツク海の海洋環境の変動が海洋生態系に及ぼす影響評価やその将来予測に向けた発展的な議論を深めること目的とする。
　　
研究内容・成果 1．北太平洋の高解像度海氷・海洋結合物質循環モデルを用いた過去37年間の数値シミュレーション、及び各気象外力を個別に変化させた感度実験データの解析結果をさらに推進し、学術論文として取り纏め作業を開始した。特に、北太平洋の亜熱帯循環の北上に伴う貧栄養水塊の供給と塩分輸送に伴う混合層深度の増加プロセスの解析と議論を深めた。また、北太平洋亜寒帯域における基礎生産量の長期変化に関する観測的な知見について、硝酸塩濃度の消費量やCO2分圧から推定される正味の基礎生産量データの活用の検討を行った。上記の研究成果の一部は、PICESの年次総会にて発表した。
2. 昨年度整備した中規模渦解像（1/10°）の海氷・海洋結合低次生態系モデル（iROMS-NPZD-Feモデル）を用いて1981-2021年までの経年変動実験を実施し、人工衛星によるクロロフィルデータとの比較を行った。さらに、低次生態系モデルのパラメーターのチューニングを推進するために、北海道大学低温科学研究所の西岡教授を中心にオホーツク海や北太平洋で取得された溶存鉄濃度のデータや水産研究教育機構のA-line観測で取得された生物・化学分析試料の整備を行った。
3．海氷中に含まれる溶存鉄の海洋への供給プロセスとそのパラメタリゼーションを目的として、昨年度実施した海氷の生成・融解に伴う鉄フラックスを考慮した低次生態系モデルの出力結果の解析を推進した。その結果、海氷融解に伴う溶存鉄の供給量は、海氷融解量と海氷中の溶存鉄濃度の大きさに比例することが分かった。特に、海氷中の溶存鉄濃度は海氷の厚さと有意な相関関係があることから、海氷融解量と海氷厚に基づいて、海氷鉄の海洋への供給量を求めることが可能になる。これらの研究結果の一部は、紋別国際シンポジウムにて発表した。
4．これまで北海道大学低温科学研究所の環オホーツク観測研究センターとの共同研究として進めてきたオホーツク海や北太平洋亜寒帯西部における海氷海洋結合生物地球化学モデル研究の成果を取り纏め、「低温科学」に投稿した。
5． 2024年3月8日に、北海道大学低温科学研究所において、研究分担者と対面での研究打ち合わせを開催し、今年度の研究成果の報告、及び次年度以降の研究内容、及び方向性についての意見交換を行った。また、2024年3月11日に研究代表者とオンラインミーティングを実施し、研究の進捗状況についての情報共有、及び物理・低次生態系モデルの研究・開発に関わる議論を行った。
　　
成果となる論文・学会発表等 中野渡拓也，中村知裕，三寺史夫，オホーツク海の海氷と潮汐を介した物質輸送モデリング研究，低温科学，投稿中．
Nakanowatari， T.， T. Nakamura， H. Mitsudear， J. Nishioka， H. Nishikawa， H. Kuroda， and K. Uchimoto， Numerical study on decadal-scale change in primary production in the subarctic North Pacific and the Sea of Okhotsk， PICES Annual meeting 2023， 2023年，10月．
Nakanowatari， T.， E. Watanabe， T. Nakamura， J. Nishioka， and H. Mitsudera， Numerical modeling study on sea ice iron transport and its impact on the primary production in the Sea of Okhotsk， 紋別国際シンポジウム，2024年2月．
佐伯立，三寺史夫，中野渡拓也，黒田寛，井上知栄，植田宏昭，岩本勉之，温暖化実験により予測される道東沿岸域の海氷分布の変化，日本海洋学会2023年度秋季大会，2023年，10月．