共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
寒冷圏アマモ群落における好冷性硝化微生物の低温環境適応に関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 日本大学 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 中川達功 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
高橋令二 | 日本大学 | 教授 |
2 |
土屋雄揮 | 日本大学 | 専任講師 |
3 |
福井学 | 北大低温研 |
研究目的 | 寒冷圏に位置する北海道厚岸湖の水温は1年の内半年が10℃以下である。その10℃以下の半年間は海水中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオン濃度が夏季に比べ高めに推移する事が知られている。冬季におけるアマモ群落では夏季のアマモ群落とは異なる低温環境に適応した好冷性硝化微生物が寒冷圏沿岸域の適切な濃度の窒素供給を担っている事が考えられる。しかしながら、アマモ群落における低温環境下における好冷性硝化微生物(好冷性アンモニア酸化菌および好冷性亜硝酸酸化菌)の役割については未解明である。そこで本研究では北海道厚岸湖における好冷性アンモニア酸化菌および好冷性亜硝酸酸化菌の分布解析を目的とする。 |
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研究内容・成果 | 2023年10月26日に北海道の厚岸湖のアマモ群落において底泥および海水を採取した。水温は12.2℃であった。2022年9月13日に同じ場所で試料採取した際の水温は21.0℃であったことから、今年は低温環境から試料採取に成功した。さらに、アマモ群落内のアマモ密度は夏季に比べ低温期では低下していた。試料採取後2時間以内に底泥の柱状試料に対して表層から0-1 cm層、1-2 cm層、2-3 cm層、3-4 cm層、4-5 cm層をそれぞれ回収し、50 mLチューブに15 mLの線まで加え、DNA/RNA shieldを15 mL加え、混ぜた。試料が研究室に到着した後、底泥試料を含むチューブを遠心分離機に供し、上清を捨て、泥試料を-80˚Cで冷凍保存した。各試料からDNAを抽出後、底泥におけるアンモニア酸化アーキア(AOA)およびアンモニア酸化バクテリア(AOB)の垂直分布を調べるためリアルタイムPCR解析を実施した。リアルタイムPCR ではPCRプライマーはAOA、およびbeta-proteoabacteria AOBのアンモニアモノオキシゲナーゼアルファサブユニット(amoA)遺伝子を標的とした。検量線用標準DNAとしてNitrosopumilus zosterae NM25、およびNitrosomonas stercoris KYUHI-SのゲノムDNAを用いた。その結果、表層から0-1 cm層、1-2 cm層においてAOAおよびAOBのamoA遺伝子量は10^7 copies/gおよび10^4 copies/gであった。2022年の表層から0-1 cm層、1-2 cm層においてAOAおよびAOBのamoA遺伝子量は共に10^5 copies/gであった。この結果より、厚岸湖のアマモ群落内の底泥においても他の先行研究と同様に冬季においてはAOAの密度が上昇していることが推定された。次世代シークエンサーを用いた群集構造解析については、現在解析中である。表層から0-1 cm層の底泥を接種源として完全合成無機培地を用いて培養実験を実施した結果、4˚C、10˚C、および20˚Cともに亜硝酸濃度の増加が認められた。4˚Cおよび10˚C培養系からDNA抽出し、AOAおよびAOBのamoA遺伝子を標的としてPCR解析を実施した結果、AOA amoA遺伝子が検出された。以上の結果から、厚岸湖のアマモ群落底泥において低温環境下でのAOAによる 硝化が期待される。 |
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成果となる論文・学会発表等 |